7月28日にポリマの掩蔽&グレージングがあります2017/07/03

20170728おとめ座と木星
宵空に輝く木星は明日4日に「東矩」という状態を迎えます。長方形のことを「矩形」とも表現するように、「矩」というのは直角という意味。つまり、地球から見て木星が太陽の東側90°のところに来たよ、ということです。大雑把に考えると太陽が西に沈む時に木星は真南にくる訳ですから、日がとっぷり暮れた頃の木星は低くなり始めてると言えるでしょう。

木星は現在おとめ座のα星「スピカ」に再接近しつつありますが、反対におとめ座γ星「ポリマ」から遠ざかりつつあります(左のステラナビゲーター星図参照)。7月1日に月と木星がとても接近していましたが、同様にスピカもポリマも「月に隠される可能性がある明るい星」として知られます。実際に約2ヶ月前の5月7日にポリマが月に隠される掩蔽現象がありました。そして同様の現象が来る7月28日にも起こります。プレミアムフライデーなので(笑)、観察可能なみなさんは是非ご覧ください。記事下に予報マップを掲載しましたが、今回は静岡県南西から鳥取県西を結ぶラインが南限となるグレージング(接食掩蔽)になります。つまりポリマが月の南側をかすめる訳ですね。(※前回は東北地方が北限のグレージングでした。)お近くのみなさん、出番ですよ。なお残念ながら予報ラインより南西の地方では現象が起こりません。(月の南側をポリマが通過してゆきます。)

前出の5月の記事に書きましたが、ポリマは明るい二重星。正確に書くと3.48等の主星Aと3.53等の伴星Bが互いに回り合う実視連星です。右下図は現在分かっている軌道要素をもとに描いたポリマの軌道図(軌道要素はSixth Catalog of Orbits of Visual Binary Starsを使用、計算と描画は自作プログラム)。十数年前の離角は現在の14%程度。そのころ小型望遠鏡で全く分離できなかったポリマA&Bも今年2017年7月は2.646″まで離れ、分離できるようになりました。

ポリマ軌道図(共通重心原点)
重星によるグレージングや掩蔽は「星が段階を追って消える/出現する」ように見え、とても貴重です。今回の月は高度が低いのではっきり見えるかどうかは分かりませんが、観察にトライしなければ何も見えません。まずは望遠鏡を向けてみましょう。3日前の7月25日に水星の掩蔽があり、こちらも低高度なので予行演習になりますね。

下の予報マップの見方を説明しましょう。星月マーカーをクリックすると各県庁所在地などで計算した掩蔽データが表示されます。潜入は恒星が月に隠されること、出現は月から恒星が現れることです。マーカーから離れた地方のみなさんは、自分の居場所を囲む最短三ヶ所のデータから推測しましょう。5月8日の記事に前回の観察記録があるので、観察の参考にしてください。

グレージング予報ラインは赤丸アイコンが並ぶ赤い線が「ゼロライン」。観察天体中心・月の縁(月面地形を考えない計算上の理想曲線)・観察者の三体が一直線になるところです。それに対して緑線は2kmおきの「マイナスライン」、青線は「プラスライン」。ゼロラインに対してマイナス側に離れるほど恒星が月縁の内側を通り、接食ではなく掩蔽になります。反対にプラス側に離れるほど恒星は月縁から離れ、現象は起きなくなります。線をクリックすると何キロ離れたラインか表示できます。赤丸アイコンをクリックするとその地点でのグレージング予想時刻、月高度、方位、カスプ角が表示されます。実際の月面は凸凹しているので、ゼロラインにこだわらず色々なラインに布陣した多人数で観察すると、天体の明滅から地形が浮かび上がる、というとても面白い現象なのです。

通常のグレージングではプラスマイナスの補助線を50mとか100m程度の間隔で描きます。今回とても広く描いてあるのは、対象が重星であるからです。地図下の月縁図を見ると分かりますが、ここで言うゼロラインは「ポリマAとBの共通重心位置」に対する計算。月縁図の0km線上に恒星本体はありません。オレンジ線両端の黄色点が実際の恒星位置(上がポリマB、下がA)なのです。このことを勘違いしないようにしましょう。ゼロライン上で観察するとポリマAは隠されませんから、この図通りに現象が起きたら「ときどきポリマB光度ぶんの減光がある」ように見えるでしょう。両星とも完全に消えるようにするには、少なくとも2km以上マイナス側で観察する必要があります。ポリマAとポリマBそれぞれの「ゼロライン」は地上で13.6kmほど離れているのです。初めて観察する方にはややこしすぎてハードル高いかも知れませんが、何事も経験。三次元的に想像しながら挑んでくださいね。


【2017/07/28・γVir(ポリマ)のグレージングおよび掩蔽・予報データ】
※下に地図が表示されないときは、記事タイトルをクリックしてこの記事単独表示させてみましょう。それでも表示されないときはデータ用サーバーが止まっているか、データメンテナンス中の可能性が高いです。
         

20170728月縁図

月縁図(東経136.5°計算)
  • グレージングの予報ラインは南限です。恒星は月の南側の縁に接します。恒星は重星ですので観察場所の選定に気を付けてください。

  • 予報ラインはゼロライン(赤線)を基準にして2kmおきに描いています。ラインをクリックするとライン名称が表示されます。表示される距離は右の月縁図縦軸に対応します。

  • 赤丸アイコンのデータは標高が一律30mで計算しています。標高が異なる所では現象内容や時刻が若干ずれます。

  • 望遠鏡アイコンをドラッグすると、三脚下×印の緯度・経度・標高を測定して地図下(欄外)に表示できます。必要に応じてお使いください。なおGoogleMapの標高は実際よりずれていますので、あくまで目安に。

  • 予報データはOccult(v.4)による計算です。予報値は概算ですので精密観測には向きません。観察時間は余裕を持って取り組んでください。


参考:
アーカイブ:1.5等星以上の掩蔽

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