素晴らしい一夜でした2016/06/03

昨夜から今朝にかけて、完璧に晴れました。やや冷え込んだのか明け方はこの時期として寒かったですが、夜半にははくちょう座からいて座にかけての天の川を久しぶりに見ました。当地は光害地のため、ぼんやりとでも夏の天の川が見えるのは年間に10回あるかないかの貴重な機会です。

  • 20160602火星
  • 20160602土星

2日22時少し前、まず地球接近を過ぎた火星を観察(上左画像)。星空は見た目にきれいなものの、惑星拡大には全く不向きでした。まさに関東の冬空。この後撮影した土星(上右画像)と共に、全体が変形するほどのすさまじい気流です。少しでも気流が収まる瞬間を狙って撮影を試みましたが、上のようにぼんやりしてしまいました。火星は大シルチスなどがよく分かりますが、18時間ほど後に衝を迎える土星も、もともと表面が暗い惑星なので露出が長くなります。気流の大きな揺らぎは大きなダメージですね。本体の模様や環の構造などサッパリ分かりませんでした。(※2016年の土星の衝については→こちらの記事をどうぞ。)

20160603パンスターズ彗星(C/2013X1)
時間は少し飛んで3日明け方前。昨日の撮影では雲に阻まれうまく撮れなかったパンスターズ彗星(C/2013X1)を狙いました(右画像)。雲や霞がなかったためまだ高度16°ほどなのにとても明るく、しっかりした像を結んでくれました。天文薄明が始まる前にこの彗星を撮影できたのは初めてです。

ただ、低空過ぎて近所の街灯がどうしても避けられません。画像が不自然にかぶってしまうのを押さえるのに強めのフラット処理が必要で、このため淡い尾は見えなくなりました。中心部はとても明るく、久しぶりの彗星らしい彗星ですね。上が天の北方向、画角はおよそ2.3°×1.5°、彗星の26分間の動きに合わせて合成しています。

20160603_32719月
機材の片付けをしていると、明るくなった東の空に月が昇ってきたので撮影しました。左画像撮影時の太陽黄経差は327.19°、高度9°弱、月齢は26.97です。この位相はアーカイブ:月の形(画像集)でまだ撮影できていないものなので、とても幸運でした。

20160603月
さすがに10°以下では気流も推して知るべしですが、とにかく晴れないことには始まりません。ましてこの時期低空までこんなに透き通ってくれることは珍しいですからね。本当に素晴らしい一夜を堪能できました。

参考:
2016年火星の地球接近・アンタレス接近に関する記事(ブログ内)
アーカイブ:月の形(黄経差324度以上、360度未満)

今日の太陽2016/06/03

20160603太陽
朝から良く晴れていますが、時折雲が湧きます。また3m/sから5m/s前後の風が吹いています。

20160603太陽リム
左は13:30頃の太陽。陽炎のようにユラユラしていました。目立つ領域はなく静穏です。右リムギリギリに12550と12551がまだ見えています。プロミネンスも目立ちませんでした。

土星が衝を迎え、地球に接近中2016/06/03


20160529土星と火星
気象庁によると本州太平洋側では来週中頃までに、北陸や東北も6月中旬までに梅雨入りとの予報です。その直前にあたる本日2016年6月3日、土星が衝を迎えました。前回は1年と少し前の2015年5月23日でした。年1回という訳でなく、地球から遠い外惑星ほど衝から衝(合から合)の間隔が地球の公転周期(=1年)に近いのです。次回は2017年6月15日だから梅雨の最中。土星の衝が梅雨期間になってしまうのは関東基準(平年値7月21日ごろ梅雨明け)だと2020年まで続きます。

衝とは、地球軌道面に添って考えたとき太陽と惑星が正反対になる状態です。(上下方向は少しずれています。)何か特別なことが起きるわけではありませんが、その惑星が一晩中見えるので観察の好機と言われます。また衝の時期近くに地球接近(最接近とか最近とも言います)を迎えますから、その惑星が大きく明るく見える期間とも重なります。(右は5月28日撮影の土星と火星。記事はこちら。)

20160604さそり座の惑星
火星は5月31日に地球に最接近しましたが、その10日ほど前の22日に衝を迎えています。今回の土星は本日3日16時頃に衝になったあと、およそ3時間後に地球に最接近という慌ただしいスケジュール。

左図はステラナビゲーターで6月4日0時のさそり座周辺を描いたもの。火星と土星はこんなところにいました。これは真夜中に南の空を見たのとほぼ同じ向きなので、探してみたい方は参考にしてください。さそり座のアンタレスが見つけられる方なら全く問題ありません。

なかなか見つからないという方、お住まいにも寄りますが結構低いので見晴らしに注意しましょう。星は見えてるのに見つからないという方の多くは「星座の大きさ把握や方向感覚の経験値が足りない」と思われます。

20160604土星と火星の動き
さそり座がパッと探せない方はWebの星図をいくら見ても身につきません。お近くのプラネタリウムや天体観察会に通い、詳しい方の指導を実地で経験しましょうね。

右図は同じくステラナビゲーターで、左上図の惑星とアンタレス付近を拡大したもの。今夜6月4日0時を基準に前後40日間の惑星位置を描いてあります。火星と土星は移動のペースが全く違いますね。(※3日0時よりも4日0時のほうが土星の衝に近いので4日の位置に衝と書いてあります。正確には3日夕方なのでお間違えなく。)

2016地球接近時の惑星見かけ比較
衝の話から脱線しますが、今回の地球接近に伴う土星本体の視直径は約18.4"です。地球に接近した火星が18.6"ですから土星が若干小さいですが、もちろん環を入れたら42.9"(横幅)と断然大きいです。それでも3月に地球接近した木星の見かけ44.4"には敵いません。この三天体は良きライバルですね。左はStellariumにより2016年の接近で比較した場合の図です。各惑星は同じ縮尺にしてあります。角度の秒「"」については記事末尾の解説をどうぞ。

今回の衝では環がいつもより明るくなる「衝効果」が見えるでしょうか?(→衝効果については昨年の関連記事をどうぞ。)

2016年土星・衝効果位相グラフ
以前の記事にも書きましたが、太陽−土星−地球のなす角が1°を下回る期間が衝効果の現れやすい時期と思われるので、今年のグラフも作ってみました(右)。5月25日頃から6月13日頃は1°以内…つまり土星から見ると地球が太陽から1°以内の離角になるようです。

ぜひ梅雨入り前に土星&火星、ついでに木星もたっぷり楽しんでくださいね。

補記:
天体の見かけの幅や2天体間の見かけの距離は定規が使えませんから、「角度」を使って天球上の幅や距離を表現します。例えば、真東の水平にある天体と真南の水平にある天体の見かけの距離は「離角90度」です。同様に「水平と天頂は離角90度」ですね。月など大きさがある天体の両端の幅も角度を測れますから「視直径○○度」などと表せます。二重星の隙間、彗星の尾の長さ、小惑星の見かけの移動距離、虹や暈の直径など、空の観察では様々な場面で使われています。

ご存じのようにぐるっと一周360度です。一周の360分の1が1度(1°)ですが、1度はだいたい満月2つ分くらい。惑星の見かけは更に小さく、1度を60分割した1分(1')や、1分を60分割した1秒(1")という単位を使います。

直感的に分かりづらいですが、簡単に例えると平均的な人の髪の毛(0.08mm)を約16.5m離れて見た幅が1秒、約55cmまで近づいた場合は30秒になります。1秒のオーダーは肉眼で分解できません。また0.5mmのシャープペンシルの芯を約1.7m離れて見た幅が1分です。これは目のいい人なら見えるでしょう。実際に1分くらいの大きさがある黒点は、望遠鏡がなくても太陽観察フィルターだけで「肉眼黒点」として見えますね。時間の単位と間違えないよう敢えて「度角、分角、秒角」と言ったり、「12°34'56"」というように記号を使うことが多いです。

参考:
アーカイブ:惑星カレンダー