口永良部島の噴火 ― 2015/05/29
本日9:59頃、屋久島の西にある口永良部島の新岳(標高626m)で大きな噴火がありました。左下は気象庁が公開している監視カメラの10:00前後の映像です。(元々の静止画キャプチャをGIF動画に加工しています。)関東の私には被災された方々の無事を祈ることしかできませんが、少しでも現地の方の気持ちを理解するべく、当ブログの「空」や「光」というテーマの範囲で、一般ニュースで余り触れないことを解説しようと思います。
今日正午時点で、噴煙は火口から9000m(9km)以上上がったと発表がありました。この高さは大気の中で地表から続く「対流圏」と、その上の「成層圏」というふたつの層の境界(対流圏界面)に迫る高さです。はっきりした壁がある訳ではありませんが、日本など中緯度では高度11kmあたりが対流圏界面で、大規模な噴火ではたいていこの辺りまで到達します。(※圏界面は常に変動しています。)
記憶に新しい2014年9月27日の御嶽山の噴火も火口から7km上空まで噴煙が上がったと推定され、御嶽山の標高3067mと合わせると10kmに到達しました。また今年2015年4月22日の南米チリ・カルブコ山の噴火では標高2000m余りの火口から15kmもの噴煙が上がったとされています。この規模だと間違いなく成層圏まで到達していますね。
噴煙が何千メートルと数字で言われても「へー、すごいね…」と思うだけでピンとこないですから、今回の口永良部島の噴煙がどれほどか、想像しやすい図を示しましょう。右下図を見ながらあらためて思い描いてみてください。口永良部島はいちばん長い直線距離を測っても十数kmの小さな島。島のほとんどの場所から火口まで5km圏内です。5kmって、標高差考えなければママチャリでも20分あれば行けちゃいますね。皆さんのご自宅から直線5kmのところにある最寄り駅やコンビニはどこでしょう?そこから9000mの高さのエリンギみたいなキノコ雲が出てるって状況です。
右図では、火口直下から5km地点がA、さらに5km離れてB、さらに5kmのCです。それぞれで噴煙がどれほどの仰角なのか角度目盛りを示しました。噴煙の形も本日の様子から模写してあります。
島の端っこ(A)でも、ほぼ真上を見ないと噴煙のてっぺんが見えませんね。そのキノコ雲がみるみる変形し、大量の火山灰やら噴石やらが降ってくるのを想像してください。島の方々の恐怖が少しでも深く理解できるでしょう。ちなみに隣の屋久島まで12kmということですから、屋久島からでもBとCの中間くらいの位置で見えたことになります。だいたい斜め45度としても、45度方向の遙か彼方の雲じゃなくて、わずか十数キロ先…ってすごくないですか?
今回は噴煙が成層圏までは届いていないようですが、いったん雲のない(=上下の対流がほとんどない)成層圏まで吹き上げられた極小の火山灰は重力の影響もほとんどなく、風雨に混じって降下することもありません。よって長期に渡って成層圏を漂いながら世界の空を覆うことになります。これが生命環境に悪影響を及ぼすわけです。これを反映した現象として夕焼けの色がかなり変色したり、気候の変化あるいはオゾン層の破壊などが確認されています。
前述のチリの噴火でも「夕焼けの色がおかしい」といった南米やアフリカからの報告がありましたが、日本でも1991年のフィリピン・ピナツボ山の大噴火の時に夕焼けの変色や冷夏による被害がありましたね。私自身も当時何回も「見たことない濃い赤紫色の妙な夕焼け・朝焼け」に遭遇しました。1993年6月の皆既月食中にほとんど月が見えなくなったことも有名な話です。昨年の御嶽山のとき、ちょうど関東の西だったのでしばらくの間夕焼けを注視していましたが、変化は見られませんでした。今回はどうでしょうか。ぜひ空の変化に注目してみてください。
今日正午時点で、噴煙は火口から9000m(9km)以上上がったと発表がありました。この高さは大気の中で地表から続く「対流圏」と、その上の「成層圏」というふたつの層の境界(対流圏界面)に迫る高さです。はっきりした壁がある訳ではありませんが、日本など中緯度では高度11kmあたりが対流圏界面で、大規模な噴火ではたいていこの辺りまで到達します。(※圏界面は常に変動しています。)
記憶に新しい2014年9月27日の御嶽山の噴火も火口から7km上空まで噴煙が上がったと推定され、御嶽山の標高3067mと合わせると10kmに到達しました。また今年2015年4月22日の南米チリ・カルブコ山の噴火では標高2000m余りの火口から15kmもの噴煙が上がったとされています。この規模だと間違いなく成層圏まで到達していますね。
噴煙が何千メートルと数字で言われても「へー、すごいね…」と思うだけでピンとこないですから、今回の口永良部島の噴煙がどれほどか、想像しやすい図を示しましょう。右下図を見ながらあらためて思い描いてみてください。口永良部島はいちばん長い直線距離を測っても十数kmの小さな島。島のほとんどの場所から火口まで5km圏内です。5kmって、標高差考えなければママチャリでも20分あれば行けちゃいますね。皆さんのご自宅から直線5kmのところにある最寄り駅やコンビニはどこでしょう?そこから9000mの高さのエリンギみたいなキノコ雲が出てるって状況です。
右図では、火口直下から5km地点がA、さらに5km離れてB、さらに5kmのCです。それぞれで噴煙がどれほどの仰角なのか角度目盛りを示しました。噴煙の形も本日の様子から模写してあります。
島の端っこ(A)でも、ほぼ真上を見ないと噴煙のてっぺんが見えませんね。そのキノコ雲がみるみる変形し、大量の火山灰やら噴石やらが降ってくるのを想像してください。島の方々の恐怖が少しでも深く理解できるでしょう。ちなみに隣の屋久島まで12kmということですから、屋久島からでもBとCの中間くらいの位置で見えたことになります。だいたい斜め45度としても、45度方向の遙か彼方の雲じゃなくて、わずか十数キロ先…ってすごくないですか?
今回は噴煙が成層圏までは届いていないようですが、いったん雲のない(=上下の対流がほとんどない)成層圏まで吹き上げられた極小の火山灰は重力の影響もほとんどなく、風雨に混じって降下することもありません。よって長期に渡って成層圏を漂いながら世界の空を覆うことになります。これが生命環境に悪影響を及ぼすわけです。これを反映した現象として夕焼けの色がかなり変色したり、気候の変化あるいはオゾン層の破壊などが確認されています。
前述のチリの噴火でも「夕焼けの色がおかしい」といった南米やアフリカからの報告がありましたが、日本でも1991年のフィリピン・ピナツボ山の大噴火の時に夕焼けの変色や冷夏による被害がありましたね。私自身も当時何回も「見たことない濃い赤紫色の妙な夕焼け・朝焼け」に遭遇しました。1993年6月の皆既月食中にほとんど月が見えなくなったことも有名な話です。昨年の御嶽山のとき、ちょうど関東の西だったのでしばらくの間夕焼けを注視していましたが、変化は見られませんでした。今回はどうでしょうか。ぜひ空の変化に注目してみてください。