台風一過の月夜に輝くミラ2019/10/13


20191013明け方の星空
台風19号に翻弄された12日でした。台風の中心は当地・茨城県南部を22時頃通過した模様ですが、実際に風雨が強かったのは15時頃から21時頃まで。その後は断片的に強風が吹くものの、雨はほとんど止んで、日付が変わり2時間も経つと快星夜になりました。

風がなければ望遠鏡を出したいところでしたが、立ってるのもやばいほどの風が時々吹きます。仕方ないから、カメラと三脚のみで昇っていたオリオンなどを記念撮影しました(左画像)。右辺が明るいのは満月直前の月が写野外にあるからです。

20191013明け方の星空
この画像に最近注目している星が写っています。それはくじら座オミクロン星(οCet)、通称「ミラ」。そう、有名な脈動変光星/長周期変光星です。通常ミラは肉眼で見えないほど暗いですが、現在は満月夜でもすぐ分かるくらい明るくなっています。しかも近年では一番明るい光度。このため、星が見える晩はまずミラを目で探す癖が付いていました。

左下画像は10日の晴れ間に撮影しておいたミラの強拡大。約2.5等のくじら座α星にも引けを取らない明るさでした。(※ただしαCetも若干変光する星です。)念のためアメリカ変光星観測者協会(AAVSO)の観測グラフを確認してみました(右下画像)。今朝を終点に過去700日ぶんの記録です。うむ、間違いなく約2.5等に達してますね。「ミラが2等星になるかどうか」は極大期のたび話題に上ります。近年確実に2.0等に達した記録は2010-2011年頃のみで、多くの極大はいずれも3等前後止まり。そろそろピーク(※天文年鑑では11月19日・日本変光星研究会では11月7日)を迎えますので、ぜひみなさんの目で歴史的瞬間を目撃してください。(→関連記事

  • 20191010ミラ(οCet)

    ミラ(2019年10月10日撮影)
  • 20191013ミラの変光

    ミラの変光(AAVSO)


時間は遡りますが、台風のことを少しメモしておきます。データを蓄積していた10月8日記事も参考にしてください。台風19号は日本接近の数日前からほぼ予想コース通りに進行し、18時頃に伊豆半島へ上陸、13日1時頃に福島県沖の海上へ抜けました。本州への被害は既に12日朝から始まっており、早い段階で停電、交通機関運転停止、通行止めが発生。昼には各地で避難勧告も始まりました。当地・茨城で三連休に予定されていた「いきいき茨城ゆめ大会・第19回全国障害者スポーツ大会」も全日程中止となってしまいました。

前夜から雨が続いた三重県では午後に警戒レベル4に達したのを皮切りに、深夜にかけて13都県に大雨特別警報が発令されました。これは過去最多です。神奈川県の箱根町で降り始めからの雨量が1000ミリを越えたほか、前代未聞の雨量記録が広範囲で記録されました。河川氾濫も立て続けに発生、ダムの緊急放出も重なりました。また東京湾周辺では40m/sを越える強風が多数記録されました。

言うまでもありませんが、直径1000kmにも及ぶ巨大構造体「台風」の影響は、接近前から去った後まで長時間蓄積します。今日からも数日間は危機的状況が継続すると考えられますので、晴れているからと安心せず、十分注意してください。下に幾つか関連画像を掲載しておきます。(衛星画像元:RAMMB/画像処理・地図等は筆者/警報&レーダー画像元:気象庁)15号を含め、まとめきれないほど被害情報が氾濫していますが、直接苦しみを感じなかった多くの人はすぐ忘れます。防災意識は普段から「癖」にしておきましょう。

  • 20191012-1500台風19号

    A.15:00の衛星画像(RAMMB)
  • 20191012-2300気象警報・注意報

    B.23:00の気象警報・注意報


  • 20191012-0600降雨レーダー

    C.降雨レーダー(6:00)
  • 20191012-1200降雨レーダー

    D.降雨レーダー(12:00)
  • 20191012-1800降雨レーダー

    E.降雨レーダー(18:00)
  • 20191012-2200降雨レーダー

    F.降雨レーダー(22:00)


今日の太陽2019/10/13

20191013太陽
朝からよく晴れています。明け方までときおり強まっていた台風後の風も、午前中には完全に止み、異様なほど静かな昼下がりとなりました。

20191013太陽リム
左は9:15前の太陽。活動領域12749は右リムにかなり近くなりました。プロミネンスは活発さを取り戻し、特に左上と右上のものが大きいですね。左やや下に飛び出ているところも侮れません。右上はダークフィラメントもあるので、数日間は続きそうです。

午後は気温が上がり、蒸し暑くなっています。昨日台風が上陸して大雨が降った伊豆半島付近を中心に真夏日となっており、13時時点の真夏日地点数は全国に15もあります。10月半ばに熱中症なんて笑えません。

台風被害を宇宙から比較2019/10/13

  • 20191009Aqua

    2019年10月9日(台風19号通過前)
  • 20191013Aqua

    2019年10月13日(台風19号通過直後)


台風19号が通過する前と後を比較してみましょう。米国の地球観測衛星Aquaの画像です(NASA-WorldViewから引用)。河川の混濁、川幅の増加や氾濫、土砂災害箇所と地形特徴との関連、海への泥土流出、その行き先などなど…。地図帳片手に、近所の様子、学校で覚えた大きな川などを上流から海までたどってみてください。(※2000ピクセル四方・約1MBの大きな画像なのでご注意。)


等高線地図(中部・関東・東北)
【参考】
2018年9月19日記事でハリケーンFLORENCEの洪水被害と等高線について書きました。このとき作った日本中央部の等高線地図が今回のエリアに近かったので、少し拡張して右に掲載しました。標高1000m以下の地域について、青線50m、赤線500m間隔の等高線を描いたものです。標高1000m以上は空白です。標高データから作図したものです。GPS測量などの精度はありません。全体傾向を把握するのにお使いください。

等高線が密集するところは土砂崩れや鉄砲水、河川の急増水などが発生しやすく、等高線が疎のところは水が集まって捌けにくい…と言う具合に結びつけられます。それぞれの理由によって、居住地の排水が追いつかない内水氾濫や、河川の洪水・堤防決壊・越水による外水氾濫(河川氾濫)が発生します。また高低差や河川規模・降水量などによって、氾濫までの時間差や復旧(水が引く)に要する時間差も生じます。衛星画像と合わせて深く考えてみましょう。

参考:
2019年・台風関連の記事(ブログ内)
アーカイブ:気象衛星が観た火災や火山(ブログ内)
令和元年(2019年)台風19号に関する情報(国土地理院)…空中写真、浸水推定地域地図、標高段彩図などが載っています