気圧が高い冬の高気圧 ― 2016/11/28
私の住む関東は冬になると強い北西の風が吹きます。風というのは水と同じで「高い所から低い所」に向かうもの。ただしここでの高低は「標高」ではなく「気圧」です。一般に地面や海面が暖められると上空の気圧は周囲より低くなり、逆に冷えた地面や海面の上空は気圧が高くなります。実際は上下方向にも差が生まれるため簡単な話では済まないのですが、大雑把にはこんな理解ですね。
地上を包む大気の温度や圧力は目に見えないため、人間の目だけで気温や気圧を知ることができません。だから様々なセンサーを作り出し、世界中で気象観測をするわけです。(大気は国境を問わずつながっていますから、ひとつの国だけで測っていても無意味ですね。)その結果を一般市民の私たちは「天気図」を通して知ることができます。「大気の地図」とでも言うべき天気図は、国境を意識しないで見ることができる数少ない地図ではないでしょうか。でも気象関連者や、登山・釣り・ダイビングなど趣味で必要な方以外、じっくり天気図を見ることはなさそうです。大気の情報がたくさん詰まっていて、知れば知るほど実に面白いですよ。左下は気象庁による今日9:00JST(=0:00UTC)の地上天気図。(見やすくするため着色しました。)
一般に測定値というのは0が原点ですが、生活圏で0気圧(真空)はありえません。だから気象分野では海抜0mでの大気圧=1気圧=1013.25hPa(ヘクトパスカル)が基準です。左図、日本の東に描かれている少し大きな字の990や1026などは、高気圧(Hマーク)や低気圧(Lマーク)の中心気圧のこと。地図の等高線のように描かれる曲線は同じ気圧の場所を結んだ「等圧線」。ただしこの値は海面高度に補正してあるので、山岳地などで測定すると天気図の値より小さいでしょう。標高が高いというだけで“低気圧状態”なのです。(気象庁が公開しているアメダスデータで、長野県や山梨県など標高が高い所の「現地気圧」と「海面(補正)気圧」を比べると違いが分かります。)
日本付近を通過する高気圧や低気圧は年間を通して、だいたい980hPaから1020hPaくらいに収まっています。台風が接近すると中心付近の風速が話題になりますが、これは極端に低い気圧がもたらす結果。今年今日までの台風でいちばん気圧が低くなったのは14号で、9月13日21時から半日以上も890hPaを維持しました。ところが「とても低い低気圧」はなにかと話題になるのに、「とても高い高気圧」がニュースになったケースを私は知りません。高気圧が「高過ぎて」何らかの災害をもたらすことはないのでしょうか。
先日24日に関東平野で降雪がありましたが、このときの寒波について、21日に気象予報士の森さやかさんの関連記事を拝読しました。冬季のシベリアやカナダなど地表が十分に冷える環境では大気も周囲より冷たくなるため、結果的に気圧が高くなりがちです。冬はオホーツク海やベーリング海付近に強い低気圧もできるので、日本付近(特に北海道以北)をはさんで「気圧がとても高い高気圧」と「気圧がとても低い低気圧」が並ぶのです。それぞれの距離は離れていますが、たまに他の気圧配置とも絡みながら双方の影響が高まると「冷たくて風の強い気候」を日本にもたらします。いわゆる「西高東低」の典型ですね。時期によって東西の気圧差は100hPaに達します。右下図は気象庁サイトから、2014年クリスマスイブの地上天気図。このときは右上の低気圧が日本から離れたため、北海道の暴風は前日よりおさまりました。
過去にどれくらい高い高気圧/低い低気圧があったのでしょうか?気になりましたので、気象庁から公開されている日々の天気図をしらみつぶしに調べてみました。2002年から2016年まで、11月から4月までの6ヶ月、全ての天気図をチェック、1060hPa以上の高気圧と960hPa以下の低気圧(概ね北緯40°以上のみ)をピックアップしました。下に表形式で掲載します。
表で突出しているのは、今年1月から2月にかけて度々出現したスーパーシベリア高気圧の存在。気圧が一番高かったのは1月23日から24日辺りですが、このとき何が起こったかみなさん覚えていますか?そう、沖縄で雪が舞った日です(→参考1・参考2)。今回関東に雪が降る前、20日から23日にかけてもシベリアの高気圧がずっと1060hPa越えをキープしてました。しばらくは気圧の低さだけでなく高さのほうも気にかけてみましょう。
参考:
最強レベルのシベリア高気圧が出現中(2018/12/27)……上記表の続きがあります
地上を包む大気の温度や圧力は目に見えないため、人間の目だけで気温や気圧を知ることができません。だから様々なセンサーを作り出し、世界中で気象観測をするわけです。(大気は国境を問わずつながっていますから、ひとつの国だけで測っていても無意味ですね。)その結果を一般市民の私たちは「天気図」を通して知ることができます。「大気の地図」とでも言うべき天気図は、国境を意識しないで見ることができる数少ない地図ではないでしょうか。でも気象関連者や、登山・釣り・ダイビングなど趣味で必要な方以外、じっくり天気図を見ることはなさそうです。大気の情報がたくさん詰まっていて、知れば知るほど実に面白いですよ。左下は気象庁による今日9:00JST(=0:00UTC)の地上天気図。(見やすくするため着色しました。)
一般に測定値というのは0が原点ですが、生活圏で0気圧(真空)はありえません。だから気象分野では海抜0mでの大気圧=1気圧=1013.25hPa(ヘクトパスカル)が基準です。左図、日本の東に描かれている少し大きな字の990や1026などは、高気圧(Hマーク)や低気圧(Lマーク)の中心気圧のこと。地図の等高線のように描かれる曲線は同じ気圧の場所を結んだ「等圧線」。ただしこの値は海面高度に補正してあるので、山岳地などで測定すると天気図の値より小さいでしょう。標高が高いというだけで“低気圧状態”なのです。(気象庁が公開しているアメダスデータで、長野県や山梨県など標高が高い所の「現地気圧」と「海面(補正)気圧」を比べると違いが分かります。)
日本付近を通過する高気圧や低気圧は年間を通して、だいたい980hPaから1020hPaくらいに収まっています。台風が接近すると中心付近の風速が話題になりますが、これは極端に低い気圧がもたらす結果。今年今日までの台風でいちばん気圧が低くなったのは14号で、9月13日21時から半日以上も890hPaを維持しました。ところが「とても低い低気圧」はなにかと話題になるのに、「とても高い高気圧」がニュースになったケースを私は知りません。高気圧が「高過ぎて」何らかの災害をもたらすことはないのでしょうか。
先日24日に関東平野で降雪がありましたが、このときの寒波について、21日に気象予報士の森さやかさんの関連記事を拝読しました。冬季のシベリアやカナダなど地表が十分に冷える環境では大気も周囲より冷たくなるため、結果的に気圧が高くなりがちです。冬はオホーツク海やベーリング海付近に強い低気圧もできるので、日本付近(特に北海道以北)をはさんで「気圧がとても高い高気圧」と「気圧がとても低い低気圧」が並ぶのです。それぞれの距離は離れていますが、たまに他の気圧配置とも絡みながら双方の影響が高まると「冷たくて風の強い気候」を日本にもたらします。いわゆる「西高東低」の典型ですね。時期によって東西の気圧差は100hPaに達します。右下図は気象庁サイトから、2014年クリスマスイブの地上天気図。このときは右上の低気圧が日本から離れたため、北海道の暴風は前日よりおさまりました。
過去にどれくらい高い高気圧/低い低気圧があったのでしょうか?気になりましたので、気象庁から公開されている日々の天気図をしらみつぶしに調べてみました。2002年から2016年まで、11月から4月までの6ヶ月、全ての天気図をチェック、1060hPa以上の高気圧と960hPa以下の低気圧(概ね北緯40°以上のみ)をピックアップしました。下に表形式で掲載します。
表で突出しているのは、今年1月から2月にかけて度々出現したスーパーシベリア高気圧の存在。気圧が一番高かったのは1月23日から24日辺りですが、このとき何が起こったかみなさん覚えていますか?そう、沖縄で雪が舞った日です(→参考1・参考2)。今回関東に雪が降る前、20日から23日にかけてもシベリアの高気圧がずっと1060hPa越えをキープしてました。しばらくは気圧の低さだけでなく高さのほうも気にかけてみましょう。
【日本付近の高気圧と低気圧の中心気圧極値・2002年-2016年の各冬期調べ】※括弧内は気圧(hPa)です
時期 | 気圧形態 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2002年 | 2003年 | 高気圧 | − | − | − | − | − | − |
低気圧 | 11月10日(954) | 12月27日(952) 12月28日(944) 12月31日(956) | − | − | − | − | |
2003年 | 2004年 | 高気圧 | − | − | − | − | − | − |
低気圧 | − | 12月5日(960) 12月8日(960) 12月18日(944) | − | 2月24日(952) 2月25日(958) 2月28日(956) | − | 4月9日(960) 4月10日(958) | |
2004年 | 2005年 | 高気圧 | 11月24日(1060) | 12月29日(1060) | − | − | − | − |
低気圧 | 11月28日(954) | − | 1月2日(952) | 2月3日(956) 2月12日(958) | 3月13日(952) | − | |
2005年 | 2006年 | 高気圧 | − | 12月5日(1060) 12月10日(1064) 12月11日(1064) 12月13日(1064) 12月14日(1060) 12月20日(1064) | 1月4日(1068) | 2月2日(1064) 2月3日(1060) | 3月11日(1064) 3月12日(1064) | − |
低気圧 | 11月13日(960) | 12月23日(952) | 1月4日(956) 1月23日(960) 1月24日(960) | − | 3月21日(960) | − | |
2006年 | 2007年 | 高気圧 | − | − | 1月5日(1060) | − | 3月4日(1060) | − |
低気圧 | − | − | 1月8日(952) 1月9日(956) | − | − | − | |
2007年 | 2008年 | 高気圧 | − | − | 1月12日(1064) 1月13日(1062) 1月24日(1060) 1月25日(1060) 1月26日(1060) | 2月11日(1060) | − | − |
低気圧 | 11月24日(956) | 12月5日(952) | 1月14日(956) | 2月28日(952) | − | 4月1日(952) | |
2008年 | 2009年 | 高気圧 | − | 12月4日(1060) 12月20日(1062) 12月21日(1060) | 1月22日(1064) 1月23日(1064) | − | − | − |
低気圧 | − | 12月27日(960) | − | 2月2日(956) 2月3日(952) 2月18日(960) | 3月11日(956) | − | |
2009年 | 2010年 | 高気圧 | − | 12月17日(1060) | 1月20日(1074) 1月21日(1068) 1月22日(1060) | − | 3月7日(1060) | 3月8日(1064) |
低気圧 | 11月19日(960) 11月20日(956) | − | 1月14日(950) | 2月18日(960) | − | − | |
時期 | 気圧形態 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 |
2010年 | 2011年 | 高気圧 | − | 12月14日(1064) 12月15日(1060) | 1月5日(1062) 1月6日(1064) 1月26日(1060) 1月27日(1064) | − | − | − |
低気圧 | − | − | 1月17日(936) | − | 3月17日(948) 3月18日(944) | − | |
2011年 | 2012年 | 高気圧 | − | − | 1月20日(1064) 1月21日(1064) | 2月1日(1060) 2月8日(1060) 2月17日(1060) | − | − |
低気圧 | − | − | 1月13日(948) | 2月10日(960) | − | 4月4日(952) | |
2012年 | 2013年 | 高気圧 | − | 12月17日(1060) 12月22日(1068) | 1月2日(1064) 1月3日(1060) | − | − | − |
低気圧 | − | − | 1月1日(960) 1月15日(944) 1月17日(956) | − | 3月22日(960) | − | |
2013年 | 2014年 | 高気圧 | − | 12月26日(1060) | 1月7日(1060) | − | − | − |
低気圧 | 11月6日(954) | 12月22日(960) 12月23日(960) 12月28日(952) 12月29日(954) | 1月28日(960) | 2月1日(960) 2月6日(960) | − | − | |
2014年 | 2015年 | 高気圧 | − | 12月16日(1060) 12月19日(1060) 12月24日(1060) 12月30日(1060) | 1月26日(1060) 1月29日(1060) | 2月3日(1064) 2月4日(1060) | − | − |
低気圧 | 11月4日(958) 11月8日(924) 11月9日(940) | 12月6日(958) 12月17日(948) 12月24日(960) 12月27日(960) 12月31日(952) | 1月4日(956) | − | − | − | |
2015年 | 2016年 | 高気圧 | 11月24日(1060) | − | 1月3日(1060) 1月4日(1060) 1月6日(1064) 1月7日(1060) 1月10日(1060) 1月11日(1060) 1月13日(1064) 1月18日(1060) 1月21日(1068) 1月22日(1076) 1月23日(1078) 1月24日(1078) 1月25日(1068) 1月26日(1068) 1月27日(1060) 1月29日(1072) 1月30日(1076) 1月31日(1076) | 2月1日(1060) 2月2日(1064) 2月3日(1064) 2月4日(1068) 2月5日(1064) 2月6日(1060) 2月12日(1064) 2月13日(1064) 2月14日(1070) 2月15日(1068) 2月16日(1060) 2月18日(1060) 2月19日(1064) 2月22日(1060) 2月23日(1064) 2月24日(1060) 2月25日(1060) | 3月8日(1060) 3月9日(1068) | − |
低気圧 | − | 12月3日(960) 12月18日(960) | 1月21日(960) | − | 3月16日(948) | − | |
時期 | 気圧形態 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 |
- 気象庁「日々の天気図」を元に目視で統計を取りました。11月初日から4月末日が対象です。見落としがあったらすみません。
- 高気圧は1060hPa以上、低気圧は960hPa以下(台風は除く)を探しました。複数ある場合は極値のほうを選択しました。
- 停滞しているか移動性かは区別していません。また天気図内に気圧表記がない場合は対象外とします。
- これらが存在したからと言って必ずしも日本が大寒波になるとは限りません。表中の値よりも若干平均寄りの高気圧・低気圧はほぼ毎日のように存在しています。
参考:
最強レベルのシベリア高気圧が出現中(2018/12/27)……上記表の続きがあります