完成した「みつご座」の足元で金星とM35が接近2023/05/10

20230509金星とM35の接近
昨夕まで薄雲が滞留していたものの、日が沈むと共にどこかへ消えてしまいました。2023年5月7日記事に書いた通り、昨日は火星が15年ぶりにふたご座のポルックスに5.0°まで接近、ポルックス・カストル離角(4.51°)にとても近くなって「みつご座」のように勢揃いしました。同時に8日からふたご座領域に入った金星が、散開星団M35に約1.8°まで接近するイベントが同時に起こりました。

左画像は9日20時ごろの金星とM35の様子。眩し過ぎる金星はそのまま写すと巨大な光芒にしかなりませんので、自作のスパイダーマスクを取り付けて緩和してあります。3月31に火星とM35が接近した際も撮影しましたが(→2023年5月7日記事参照)、その時より少し遠いですね。

最接近は本日10日2時ごろ(日本からは見えません)、次回の接近は2025年8月2日16:20ごろ(※太陽からある程度離れているケース)で、その日の明け方に近づいた様子が見えるでしょう。

20230509みつご座と金星
「みつご座」の様子も広角で撮影しておきました(右画像)。まだ薄明が少し残っていましたが、背景を暗く落として微光星を炙り出しています。地球に接近してない火星は本当に目立たないため、すっかり星座に溶け込んでいますね。金星もどんどん三つ子に近づいているため、画角に収まり良くなりました。※この画像は右方向が天の北方向です。

5月18日にはカストル・ポルックス・火星が一直線に並び、別の視点での「みつご座」が楽しめます。晴れたらぜひご覧になってください。

なお金星はふたご座の中で火星に追いつけず、隣のかに座に移ってもまだダメで、6月最後にしし座に入ったところでやっと最接近を迎えます。(でもその後すぐ逃げられる…笑)この追いかけっこの途中で、火星も金星もM44(プレセペ星団)に接近します。宵空でとても低い位置になってしまうけれど、双眼鏡で探してみましょう。

宵空を飾る期間限定の「みつご座」2023/05/07

20230504みつご座と金星
夕空の金星が高度を増しています。その行き先にはふたご座のカストルとポルックス。良く見ると、元々そこにいたかのように火星も並んでいます。ポルックスが1.2等、カストルが1.9等、火星は1.4等。同じような明るさの星が仲良く集う様子は、まるで「みつご座」みたい。あるいは紅一点と考えれば、あだち充さんの漫画「タッチ」に登場する三人の主人公たちを彷彿とさせます。

左画像は5月4日の宵に撮影したもの。まだ背景は薄暮が残っていた時間ですが、光害も酷かったため均一に均した上でできるだけ微光星を取り出してみました。どこになにが写っているかは右下画像をご覧ください。薄く星座線と星座絵を重ねてあります(ステラナビゲーター使用)。

「このまま火星が移動して、ポルックス・カストル間とポルックス・火星間との離角が一致したら、みつご座らしいかも!」と考えて計算してみたら面白いことが分かりました。1900年から2100年まで計算したうち離角差1°以内に限定すると、火星以外の惑星では全く起こらないのです。また火星でもこの201年間で19回(地心計算)しか起こりません(記事末表参照)。

20230504みつご座と金星
今年は5月9日10時ごろにポルックス・火星間が5.00°、ポルックス・カストル間が4.51°となって、2008年以来ひさしぶりに二等辺三角形っぽくなるでしょう。これを期間限定の三つ子の星座として愛でるのも一興ではないでしょうか。

もうひとつ、横並びに直線状となったときをみつご座と見なす方法も考えられますね。これは2年弱の周期で頻発しますが、ポルックス・火星間が8°近くになってしまうこともあるので、離角7.0°以下に限定して下表に掲載しました。今年は5月18日2時ごろピッタリ一直線になります。2時では沈んでいますから、前後の日の宵に確認しましょう。

今週から来週にかけては宵空を見上げ、三つ子ちゃんの様子を気にしてあげてください。金星もどんどん近づいてきますよ。

【三天体が二等辺三角形に近い】
日時(JST)離角差(°)
1913年11月12日 11:070.62
1914年4月14日 18:11-0.06
1929年4月28日 15:290.29
1944年5月9日 12:360.51
1946年4月3日 13:31-0.40
1961年4月21日 11:030.13
1976年5月3日 17:210.40
1992年11月4日 8:380.83
1993年4月12日 16:15-0.11
2008年4月27日 6:210.27
2023年5月9日 9:590.50
2025年3月31日 6:54-0.50
2039年11月30日 16:490.32
2040年4月19日 18:540.09
2055年5月3日 11:220.38
2070年5月13日 20:100.58
2071年10月31日 21:450.94
2072年4月10日 11:37-0.17
2087年4月26日 19:490.24
【三天体が一直線に近い】
日時(JST)離角(°)
1914年4月24日 17:016.34
1929年5月7日 15:526.74
1944年5月18日 3:547.00
1946年4月15日 1:125.97
1961年4月30日 21:016.55
1976年5月12日 12:506.87
1978年3月31日 1:405.30
1992年11月23日 3:316.18
1993年4月22日 21:016.28
2008年5月6日 8:346.71
2023年5月18日 2:066.98
2025年4月12日 12:335.87
2040年4月29日 8:196.51
2055年5月12日 8:096.85
2057年3月25日 1:585.01
2071年11月15日 13:496.67
2072年4月20日 23:316.22
2087年5月6日 0:126.68

  • 「二等辺三角形に近い」ほうではポルックス・カストル間離角とポルックス・火星間離角との差が1°内で最小になる日時を計算しました。ポルックス・火星間が長い場合を正の数値とします。
  • 「一直線に近い」ほうではカストル→ポルックスの方向角とカストル→火星の方向角が一致する日時を計算しました。離角欄はポルックス・火星間の離角で、7°以内の場合のみセレクトしてあります。
  • いずれも地心計算で、期間は1900年始めから2100年末まで。火星・太陽間離角が60°未満は空が明るくてふたご座全体が見えないため除いています。
  • 自作プログラムによる計算です。


20230505スターリンクトレイン
【余談】
上画像を撮影した翌日も金星とみつご座を見ていました。少し雲があり、風もあったため撮影はしませんでしたが、たまたま線状の飛行物体を見つけました。すぐに「スターリンク・トレイン」だと直感、北空を通って東の建物に消えるまで長時間の観察ができました。全体がまとまっており、最長時の全長は15°ほど、うち先頭の3°ほどは最大時に0等から1等級で煌めいていました。

このトレインは5月4日7:31UTに打ち上げられたStarlink G5-6の衛星群で、打ち上げから27時間後に見たことになります。こんなにも明るく見えたのは初めてです。左上図はStellariumで当日の軌道要素による表示。後ろの衛星群が暗かったのは謎ですが、正にこんな雰囲気。更に6日宵の周回時にも雲越しで観察しましたが、もう見えない光度になったためか発見できませんでした。


宵を飾る金星と三日月2023/04/24

20230423金星と月の接近
昨夕は暗くなる前から三日月と金星が寄り添って輝いているのが見えました。(※昼間に月と金星が近い日でもあり、月を使って日中の金星を見つけるチャンスでした。)夕空で宵の明星が別天体と並ぶ怒濤の接近イベントも残り数件。天気に恵まれ、無事観察することができました。

左画像撮影時の両天体離角は約2.2°。写真にしてしまうと美しさや感動が1/10にも減ってしまいます。やはりリアタイで生の光景に勝るものはありません。見ているそばから消えてしまう光が刹那であり、儚い事象であるが故に愛おしさが濃縮されるのでしょう。

宵空での金星と月の接近は5月23日と6月22日、金星と火星の接近が7月1日ごろ見ることができます。M44(プレセペ星団)との接近もありますね。梅雨の時期も迫りつつありますが、可能な範囲で楽しみましょう。

20230423_03977月
昨夕も前夜に続き、月だけ拡大撮影してみました。右画像は23日19時前頃の撮影で、太陽黄経差は約39.77°、撮影高度は約29.43°、月齢は3.24。前夜より高度が高くなり、シーイングが改善されました。似たような月相を2023年2月23日にも撮影していますので比べてみてください。秤動が少し変わっただけでも、リム近辺の見え方ががらりと変わることが分かるでしょう。今回はフンボルト海側があまり見えなくなりましたね。

危難の海が朝を迎え、リッジが良く見えています。その北側、クレオメデスやゲミノス、エンディミオンなどはクレーター内がまだ真っ暗。南半球もペタヴィウス南西のスネリウスや南極域のブサンゴあたりも真っ暗。縁だけ光るクレーターになぜか魅力を感じます。

ラングレヌスやペタヴィウス周囲にはコペルニクスに見られるような皺が、意外なほど多く広がってますね。欠け際に来ないと認識できませんから貴重なタイミングです。これから月は28日の上弦に向かってゆっくり太ってゆきます。

夕空で月とすばるが接近2023/04/23

20230422月とすばるの接近
昨夕は日暮れと共に極細月が輝き始めました。すぐそばにはプレアデス星団も煌めいています。暗くなるのを待っていては沈んでしまいますから、所々に湧いている雲を避けつつ薄暮の中で記念撮影(左画像)。

撮影時の月とすばるとの離角は約2.4°。つい先日に金星と並んでいたばかりなのに、月日が経つのは早いもの。そう言えば二日前にこの月が日食を起こしてたんですね。今夕(23日)はこの月と金星が並びます。宵空で次々に繰り広げられる天体ショーにただただ感動するばかり。

シーイングはかなり悪かったけれど、月だけ単独で撮ってみました(下A画像)。22日18:40頃の撮影で、太陽黄経差は約27.71°、撮影高度は約20.96°、月齢は2.23。画像上下方向と月の自転軸方向を揃えてあります。下画像をクリックせずサムネイルを見たとき、「あれ?右下から照らされているように見えるかも…」とお気付きの方、観察眼がすばらしい。

太陽からある程度離れた月は上弦や下弦に代表されるように、満ち欠けとしてはっきり東西の違いが現れます。新月期と満月期はこれに加えて「太陽に対して南北に離れている」ことが目立つのです。下B図は2023年の各新月期に、太陽に対して月がどこを通るか、黄道座標系(太陽を原点とした黄経・黄緯の差)で表したもの。黄経差=0°上の大きな青丸点が新月瞬時、小さな青点は新月瞬時を基点にした1時間ごとの月位置(マイナス6時間からプラス6時間まで)。

二日前に日食を起こした際の月はちょうど右下から左上に向かって黄緯差0°(=ほぼ地球軌道面)を横切ろうとしていますね。(※軌道面を南から北へ通過するポイントは、難しい言葉で「昇交点」と言います。通過は4月20日20:30:33JSTでした。)昨夕の月は二日経って太陽からずいぶん北へ離れたと推測できます。これが「右下から照らされているように見える」一因です。

20230422金星
同じくらいの月齢を撮った2月22日の画像を見ると、右上から照らされているように見えませんか?こちらはまだ昇交点に到達していません(昇交点通過は2023年2月25日03:57:09JST)ので、月に対して太陽は右上にいるのです。もうひとつ、下B図の青線の傾きは新月の度に変化していますね。これは黄道面(黄緯0°の面)に対して新月期における白道面の傾きの変化を示しています。プラスマイナス5°あまりの範囲に過ぎないけれど、1朔望月で南北一回ぶん繰り返しつつ、新月期だけ見ても1年でこんなにずれるのです。これを感じ取れる数少ないチャンスが、新月前後の「月の輝面方向の偏り」なのでした。※念のため書いておくと、白道に対して月の自転軸が垂直ではないため、必ずしも月と太陽の南北関係だけで輝面方向の偏りが決まる訳ではありません。(おまけ:右はピント合わせに使った金星。もうこんなに欠けてます。内合時の1/3.5ほどの視直径ですね。)

  • 20230422_02771月

    A.22日の月面(拡大)
  • 太陽に対する新月付近の位置(2023年)

    B.太陽に対する新月の位置


20230423_PNV J17224490-4137160
夜半をすぎても時おり雲が空を覆っていたけれど、オーストラリアのAndrew Pearceさんがさそり座に8等の明るい新星を見つけたそうなので、晴れ間があったら見てみたいと思っていました。2:30時点でさそり座頭部が完全に見えませんでしたが、晴れると予想して見晴らしよい場所に徒歩移動。

赤緯が-41°より低いため、南中時に見ても私の街からは高度12°程度。現地に着いたときは曇っていましたが、20分ほど待つと晴れ渡り、何とかカメラに収めることができました(右画像)。推定7等中盤でしょうか。更に20分経つとまた雲に覆われました。現地到着すぐにこと座流星群と思われるマイナス等級の流星が見えたのが印象に残りました。

分光によれば古典新星とのこと。一時は7等まで明るくなったそうです。一桁台に到達する新星は少ないので貴重なチャンス。さそり座のしっぽ辺りが見える方は観察してみてください。