リュンカー山が円環状に見えるのはいつ?2023/09/05

20230403リュンカー山
月面北西部に位置するリュンカー山は背の低い地形で、全体はいわゆる盾状火山のような様相です。細かく見ると20個ほどのドーム状地形が折り重なってできているようです。高さが無いため影ができにくく、明暗境界近くにならないと地球から良く見えません。以前に2019年6月28日記事で「一般的な地形なら概ね月面太陽高度20°以下、高度差の少ないリッジや低い山なら10°以下が凹凸陰影がはっきりして見やすい」と結論しました。実際に撮影された多くのリュンカー山画像を調べると5°から10°付近に集中しているようです。

左は2023年4月3日撮影の画像から切り出したもので、リュンカー山における太陽高度は約3.19°。やや影が多いものの、凸凹がよく見えていますね。ところが同年8月28日に撮影した画像では山と言うよりクレーターのように写っていて、同じ地形とはにわかに信じ難い見え方でした(右下画像)。このときの太陽高度は約0.77°。明暗境界ギリギリと言ったところです。では、リュンカー山がこのような円環状に見える太陽高度条件はどのあたりなのでしょうか?

20230828リュンカー山
これを確かめるため、自作プログラムによる陰影シミュレートを行ってみました。太陽高度0.0°、0.5°、1.0°、1.5°、および3.0°のCG画像を下A..E図として掲載します。これを見ると太陽が水平方向から当たっている状態でも円環状に光っていますね。(※ただしとても暗いでしょう。シミュレート図は輝度をかなり上げています。)1.0°あたりではもう円環内に光が入ってきています。実際、右の8月28日画像でも良く見れば円環内がうっすら光っていて、ちょうどRay現象のようになっています。これは山地の稜線が閉じておらず、円環ではなく「C字型」のように東側が空いている(低い)からです。個人的には「潰れたクロワッサン」と思ってます。

リュンカー山周囲には複雑なリンクルリッジや谷もあるので、それらを観察する際もこの太陽高度の目安が役に立つでしょう。今後2024年末までに起こる太陽高度0°の日時は2023年10月26日23:56、2024年1月23日21:06、3月22日23:01、5月20日20:47、9月15日18:54、11月13日23:34(日本経緯度原点で月高度20°以上のケースのみ)。この日時から約2.5時間は太陽高度1°未満です。縁に近い地形ですからなるべく秤動の良い機会を狙うことも大切でしょう。

なお下弦側でリュンカー山が欠け際に近くなるのは夜明けに登る細い月なので、見える機会そのものが少なく、もし上記条件に合致しても月高度がとても低いでしょう。それでもよければ2023年10月12日、2023年12月10日、2024年12月28日などに観察してみてください。下弦側でも円環になるのか興味津々…。

  • リュンカー山・太陽高度0.0度

    A.太陽高度0.0度
  • リュンカー山・太陽高度0.5度

    B.太陽高度0.5度
  • リュンカー山・太陽高度1.0度

    C.太陽高度1.0度


  • リュンカー山・太陽高度1.5度

    D.太陽高度1.5度
  • リュンカー山・太陽高度3.0度

    E.太陽高度3.0度


明け方の雲間に月ひかる2023/09/05

20230905_24420月
昨日は日中まとまった雨が降り、同じ県内に記録的短時間大雨情報が発令されたほどでした。午後はゆっくり回復に向かったものの、夜になっても雲が多く残り、夜半ごろ登ってきた月も朧でした。日付が変わり明け方が近づくと雲が薄くなり、月と木星がきれいに並んで見えました。月の回りには光環が三重にかかり、例えようも無い美しさ。

東の空が若干白んできたころ雲間が来そうだったので、急きょ望遠鏡を用意。左は5日04:10頃の撮影で、太陽黄経差は約244.20°、撮影高度は約70.63°、月齢は19.40。極薄い雲が残りシーイングが悪かったものの観察には問題なし。アルタイ断崖がとてもダイナミックですねぇ。あまりお目にかかれない下弦側のラモントも良く見えています。ピッコロミニが真っ暗ですが、その南で縁だけ光るスティボリウスの回りが、なんだか大きなクレーターのように見えました。

南部を見ているとあっという間に時間が経ってしまいます。いつの間にか空が明るくなり、次の雲がやって来て月を覆ってしまいました。

今日の太陽2023/09/05

20230905太陽
朝のうち雲が多かったですが、徐々に晴れ間が多くなりました。そして今日も暑い…。気象庁アメダス速報値の本日0時から15時までの集計による夏日地点数は839、真夏日地点数は567、猛暑日地点数は36。

20230905太陽リム
左は10:10過ぎの太陽。左端やや上に小黒点群が現れ、活動領域13423と採番されました(プラージュのあるところ)。中央上が13421、そのすぐ左が13422です。小さいものばかりですねぇ。南極域の襟巻きダークフィラメントは健在。また、左下にも立派なフィラメントが見えています。

2023年の台風13号が発生2023/09/05


20230905-2100JST台風13号
気象庁によると、4日午前から発生していた「台風になるかも知れない熱帯低気圧」が、5日21時に台風13号「インニョン/YUN-YEUNG」になりました。直前の台風12号発生から6日後、12号消滅から2日と6時間後の発生、また直近で最後まで残っていた11号消滅から12間後の発生となりました。

左は13号発生時である5日21:00の気象衛星ひまわり画像(画像元:RAMMB/画像処理・地図等は筆者)。赤点線が台風中心の直径1000km円。夜間なので赤外線の白黒画像です。もうかなり近いところにいて驚かされます。なお13号と本州・四国との間には台風12号から変わった熱帯低気圧も活動中。これも侮れません。

13号は北東に進む予報で、予報通りだと8日ごろ伊豆諸島、9日までには関東や東北に最接近する見込みです。予報円の西寄りに進めば上陸の可能性もありますね。水不足が若干解消されるかも知れませんが…くれぐれも土砂災害には十分お気を付けください。