スリムな月が水平になってきました2023/09/11

20230911_31385月
昨夜から今朝は雲の多い空。星月はほとんど見えませんでした。今日の日の出30分前ごろ、わずかな雲間から月が顔をのぞかせてくれました。13日・14日の水平月・逆転月に向かってかなり横に寝た「受け月」に近づいています。肉眼ではもう水平月といって良いほどでした。

左画像は11日5時頃の撮影で、太陽黄経差は約313.85°、撮影高度は約41.38°、月齢は25.43。撮影時の弦傾斜は-8.94°でした。朝焼けを浴びた明るい雲が多かったため全球をまとめてセンサーに入れたかったけれど機材の都合で三枚下ろしにせざるを得ず、グリマルディの南・クリューガーの北辺りに画質の異なる境界線が発生してしまいました。ここより南の撮影は雲がかなり多かったのです。また夜明けは1分違っても背景が一気に明るくなるので、月のコントラストもどんどん変わってしまいました。どうにか見える程度に誤魔化しています。

昨日の掲載に間に合いませんでしたが、ちょうど一日前の5時ごろ撮影した月面モザイクと、木星単体の撮影画像も下A・B画像として掲載しておきます。木星は衛星が三角を作る少し前に撮影しました。

マリウス丘やアリスタルコス台地、シャープから虹の入り江にいたる付近を囲むジュラ山脈などの凹凸が際立ちます。昨日は何となく見える…程度だったマリウス谷が今朝は黒い糸のように見えました。シラー・ズッキウスベイスンも10日より11日のほうが彫りが深いですね。バイイの「台地状に見える錯覚」がそろそろ見えるかと思ったのですが、まだでした。「月世界への招待」でお馴染みの東田守生さんが観察日記で紹介されていた「ビルギウスのX」が、この全球画像でもはっきり確認できます。一日経つと暗さが増しましたね。10日画像では虹の入り江のXはもう影の中でした。また「ビルギウスのX」の近くにあるデ・ガスパリス・クレーター内にも細い谷がX字状に交差する地形があり、これくらいの月相で見やすくなります。このXは片方の線が途中で曲がっていて、見方によってはピースマークにも見えるでしょう。これらの「小さなX」などはいずれまとめて記事にしようと思います。

20230911ルトロンヌの三つ星
そのほか面白かったのは、クレーターとしてほとんど原形を留めてないルトロンヌの中央に三つの点が光っていたこと(右画像/左上画像から切り出し)。数学記号の「ゆえに(∴)」または「なぜならば(∵)」のような見え方です。(※記号がブラウザ表示できない方はUnicode表でU+2234やU+2235を調べてください。)既にどなたか気付いて名前があるかも知れませんが、ここでは「ルトロンヌの三つ星」と言っておきます。ここは光さえ当たっていれば三つの山が確認できるけれど、山頂だけ光る場面に出くわすことは滅多にありません。一日前の下A画像でも三つ星は確認できるけれど周囲も明るいため「星」らしくないですね。

この画像だけでは最良の見え方(暗闇に三つ星だけ光る状態)があるのかどうか、その条件など確定できません。今朝の状態からもう1時間くらい経てばベストになりそうな気がします。今朝の見え方を基準に向こう1年ほど計算すると、下弦側では2023年11月9日朝、2024年2月6日月出直後、4月5日明け方、6月3日明け方、8月1日未明。また見えるかどうか未検証ですが、上弦側では2023年10月25日宵、12月23日夜、2024年1月22日夕、2月21未明、3月21日宵、5月19日宵、7月17日宵など。この付近で確認できそうなので、これから経験値を増やしていこうと思います。なお、同クレーター南部にある四つの光点や△、○にも注目!数学的クレーターなんですかね?

まだまだ魅力を伝え切れない月面です。少しずつ記録して行こうと思います。天気に恵まれたら水平月、逆転月もご覧ください。

  • 20230910_30286月

    A.10日明け方の月
  • 20230910木星

    B.10日未明の木星


【良像選択】
突然ですが、最近スタック作業を通して思っていることを書き留めておきます。

月惑星や小さな惑星状星雲などを中心に使われるラッキーイメージングでは、良像を選んでスタックする、という工程が必ずあります。このとき「良像選択のアルゴリズム」は対象画像が大量であることからソフト任せになることが多いでしょう。安定した撮影ならノイズや模様の変形量、ズレやブレで見分ければ良いのだけれど、そのアラインメント計算の前に「ヒストグラムの篩にかける」という段階があると思われます。どういうことかというと「良像はピントが正しく合っているから、ボケやブレのある悪像よりヒストグラム最大値が高い」という知見があるからです。夜間の雲通過で暗くなった像もオミットできるでしょう。

ところがこの工程が原因で悪像ばかり拾ってしまうケースが少なからず存在します。光害や昼間・薄明薄暮中の撮影で、ベースの空より雲が明るい場合です。今日の月面もそうでしたし、昼間の金星撮影でも薄雲通過の劣悪画像を良像として選択・スタックされてしまったことを何度も体験しました。「そんな天気のときに撮影するほうが悪い」と言われそうですが、大事な現象が夜間快晴であるとは限りません。雲だらけでも撮影したいシーンは確かにあるのです。

本来なら基準になる良像ヒストグラムを覚えさせ、一定範囲から外れたら明るくても暗くても悪像と判断するような「メジアン的」ふるい分けが理想のはず。でも私が知る範囲でこれを実装しているスタックソフトは見当たりません。実装ソフト、あるいは回避法を何かご存知の方はぜひ教えていただきたいものです。


今日の太陽とハロ現象2023/09/11

20230911太陽
朝から雲が多く、なかなか日差しが出てくれません。やっと太陽観察できたのは17時前でした。気象庁アメダス速報値の本日0時から16時までの集計による夏日地点数は842、真夏日地点数は429、猛暑日地点数は13、酷暑日地点数は0、熱帯夜地点数は65、超熱帯夜地点数は0。

20230911太陽リム
左は17時前の太陽。無理して撮ることも無かったけれど、今日はMクラスに届く規模のフレアが複数起きたため観ておきたかったのです。各活動領域のプラージュが明るいですね。左寄り、縦に並ぶふたつは、北が13429、南が13431。もう30番台になってしまいました。ダークフィラメントが目立ちますが、プロミネンスは少なかったです。

西空に小さな幻日を発見(下A・B画像)。今日は太陽右側のみでした。

  • 20230911夕空

    A.
  • 20230911幻日

    B.