最近承認された「海の中の宇宙」 ― 2019/06/09
2019年1月5日の記事で取り上げた通り、海底地形に天文に関する名称がたくさん付きました。地図を描きたいとずっと思っていましたが、しばらくは座標値などが分からなかったため描けませんでした。数日前に再度調べたところ春頃に一部を除き発表されていたようなので、2017年7月17日からの一連記事「海の中の宇宙」に倣って、描いてみました。
左A図は今回対象となったエリアを把握する全体地図。地図内にふたつの白い矩形が描いてありますね。北側の拡大が下B図、南側がC図に対応します。フィリピン海プレートの中央付近を南北に走る「九州−パラオ海嶺」にそって、これまでに付けられていた太陽系関連の名前を持つ地形が並びます(海の中の宇宙[1]参照)。またその南側には星や星座の和名なども並びます(海の中の宇宙[4]参照)。今回の命名はこれらの隙間を埋めるように付けられたようです。
星座の名前がダイレクトに付いたのは、確か今回が初めてだと記憶しています。これまでは恒星や星座、星の配列の「和名」が中心でした。日本が付ける名前なので、これからもオリオンとかアンドロメダと言った日本語以外の星座名は付けられないとは思いますが、諸外国からみるとどんな風に感じるのでしょうね?「発音しづらい」とか「それ、我が国では放送禁止用語だよ」みたいなことはあるんでしょうか。まぁとにかく、海の底にまた興味深い“宇宙”が広がりました。今後も機会があれば地図を拡充してご紹介したいと思います。なお、今回人名が付けられたもののなかに天文学者の故・鈴木敬信先生がおりました(Keishin Seamount)。天文は海洋に関係ないように思えますが、そんなことはありません。航海するのに天測は欠かせないのです。鈴木先生は航海暦(天体位置表)を編纂・創刊した位置天文学のプロで、アマチュア向けの普及本も多数著しています。
左A図は今回対象となったエリアを把握する全体地図。地図内にふたつの白い矩形が描いてありますね。北側の拡大が下B図、南側がC図に対応します。フィリピン海プレートの中央付近を南北に走る「九州−パラオ海嶺」にそって、これまでに付けられていた太陽系関連の名前を持つ地形が並びます(海の中の宇宙[1]参照)。またその南側には星や星座の和名なども並びます(海の中の宇宙[4]参照)。今回の命名はこれらの隙間を埋めるように付けられたようです。
星座の名前がダイレクトに付いたのは、確か今回が初めてだと記憶しています。これまでは恒星や星座、星の配列の「和名」が中心でした。日本が付ける名前なので、これからもオリオンとかアンドロメダと言った日本語以外の星座名は付けられないとは思いますが、諸外国からみるとどんな風に感じるのでしょうね?「発音しづらい」とか「それ、我が国では放送禁止用語だよ」みたいなことはあるんでしょうか。まぁとにかく、海の底にまた興味深い“宇宙”が広がりました。今後も機会があれば地図を拡充してご紹介したいと思います。なお、今回人名が付けられたもののなかに天文学者の故・鈴木敬信先生がおりました(Keishin Seamount)。天文は海洋に関係ないように思えますが、そんなことはありません。航海するのに天測は欠かせないのです。鈴木先生は航海暦(天体位置表)を編纂・創刊した位置天文学のプロで、アマチュア向けの普及本も多数著しています。
【2018年の承認で天文に関する名前が付いた海底地形リスト ※一部欠損】
海底地形名(読み) | 英語表記 | 水深 | 備考 |
---|---|---|---|
赤星海脚 (あかぼしかいきゃく) | Akaboshi Spur | 3489m | さそり座アンタレスの和名 |
ふたご座海山群 (ふたござかいざんぐん) | Futagoza Seamounts | 4535m | 星座に由来する名称 |
波浮星海山 (はぶのほしかいざん) | Habunohoshi Seamount | 3019m | 波浮星平坦面付近に位置(波浮星は南十字星のこと) |
波浮星海嶺 (はぶのほしかいれい) | Habunohoshi Ridge | 3019m | 波浮星平坦面付近に位置 |
東木星海山 (ひがしもくせいかいざん) | Higashi-Mokusei Seamount | 1837m | 木星海山の東に位置 |
北辰海盆 (ほくしんかいぼん) | Hokushin Basin | 4820m | 北辰海山付近に位置(北辰は天の北極または北極星のこと) |
いて座海山 (いてざかいざん) | Iteza Seamount | 4690m | 星座に由来する名称 |
海冥海底崖 (かいめいかいていがい) | Kaimei Escarpment | 2795m | 海王星海山と冥王星海山の間に位置 |
からす座海陵 (からすざかいりょう) | Karasuza Hill | 3598m | 星座に由来する名称 |
けんさき星海底崖 (けんさきぼしかいていがい) | Kensakiboshi Escarpment | 4110m | けんさき星海山付近に位置(けんさき星はおおぐま座のη星のこと) |
北風早星海山 (きたかざはやほしかいざん) | Kita-Kazahayahoshi Seamount | 2189m | 風早星海山の北に位置(風早星は南十字星のこと) |
北天王星海山 (きたてんのうせいかいざん) | Kita-Tennosei Seamount | 2560m | 天王星海山の北に位置 |
北十市星海山群 (きたとちのほしかいざんぐん) | Kita-Tochinohoshi Seamounts | 2396m | 十市星海山群の北に位置(十市星は南十字星のこと) |
こいぬ座海山 (こいぬざかいざん) | Koinuza Seamount | 3638m | 星座に由来する名称 |
くじら座海山 (くじらざかいざん) | Kujiraza Seamount | 4248m | 星座に由来する名称 |
冥王星海膨 (めいおうせいかいぼう) | Meiosei Rise | 2053m | 冥王星海山付近に位置 |
南木星海山 (みなみもくせいかいざん) | Minami-Mokusei Seamount | 2528m | 木星海山の南に位置 |
みずがめ座海陵 (みずがめざかいりょう) | Mizugameza Hill | 5215m | 星座に由来する名称 |
南西けんさき星海山 (なんせいけんさきぼしかいざん) | Nansei-Kensakiboshi Seamount | 3745m | けんさき星海山の南西に位置(けんさき星はおおぐま座のη星のこと) |
西天王星海山 (にしてんのうせいかいざん) | Nishi-Tennosei Seamount | 1981m | 西天王星海山の位置を変更 |
西八幡星海山 (にしやんばるほしかいざん) | Nishi-Yanbaruhoshi Seamount | 3997m | 八幡星海山の西に位置(八幡星は南十字星のこと) |
おひつじ座海山 (おひつじざかいざん) | Ohitsujiza Seamount | 5225m | 星座に由来する名称 |
おおいぬ座海山 (おおいぬざかいざん) | Oinuza Seamount | 4014m | 星座に由来する名称 |
おとめ座海山 (おとめざかいざん) | Otomeza Seamount | 4683m | 星座に由来する名称 |
おうし座海山 (おうしざかいざん) | Oushiza Seamount | 4760m | 星座に由来する名称 |
らしんばん座海嶺 (らしんばんざかいれい) | Rashinbanza Ridge | 4151m | 星座に由来する名称 |
石炭袋海山 (せきたんぶくろかいざん) | Sekitanbukuro Seamount | 4540m | みなみじゅうじ座付近にある暗黒星雲を指した名称 |
しし座海山 (ししざかいざん) | Shishiza Seamount | 5064m | 星座に由来する名称 |
四三の星海盆 (しそうのほしかいぼん) | Shisonohoshi Basin | 5195m | 四三の星海山付近に位置(四三の星は北斗七星のこと) |
そえ星海底崖 (そえぼしかいていがい) | Soeboshi Escarpment | 3795m | そえ星海山付近に位置(そえ星はおおぐま座のアルコルのこと) |
てんびん座海山 (てんびんざかいざん) | Tenbinza Seamount | 4758m | 星座に由来する名称 |
天海海底崖 (てんかいかいていがい) | Tenkai Escarpment | 3872m | 天王星海山付近に位置 |
天海海盆 (てんかいかいぼん) | Tenkai Basin | 3872m | 天王星海山付近に位置 |
とも座海山 (ともざかいざん) | Tomoza Seamount | 3718m | 星座に由来する名称 |
うさぎ座海嶺 (うさぎざかいれい) | Usagiza Ridge | 3977m | 星座に由来する名称 |
やぎ座海山 (やぎざかいざん) | Yagiza Seamount | 5024m | 星座に由来する名称 |
- 上記の海底地形地図とリストの元データはIHO-IOC GEBCO(Gazetteer of Undersea Feature Names)、および海上保安庁海洋情報部が公開しているデータを元に筆者が統合・描画したものです。
- データの整合性が取れずに表記できないものが結構ありました。(例:「いっかくじゅう座海山」は海上保安庁データで承認済みとなっていながら、IHO-IOCデータには反映されていない、等。)ですから、今回承認された70件以上の地名全部は網羅していません。データ更新が間に合わないなど理由があるのかも知れませんが不明。(※後日改善されても当記事は現時点の記録と言うことで更新しません。)
- 備考欄は元ファイルの表記に一部筆者のコメントを加えてあります。
- 地図左上の段彩凡例は水深/標高です。標高0m以上の陸域は段彩パレットで白色系にしていますが、精度が高くないため海岸線や湖面などの水際でやや不明瞭になります。(意図的に海岸線や等高線は描いていません。)
- 描画はGMT(ver.5.4.4/Mac版)を使用しました。簡単のため地理的図法ではなく直交座標にしました。詳しく見ていただくため大きな画像にしてます。小さな画面で見ている方、ごめんなさい。