2019年の始まりを飾る星々2019/01/01

2019年元旦の夜明け・月と惑星たち
2019年が始まりました。夜明け前までに後述の二彗星を観察した後、登ってきた月と惑星たちを見に近くの見晴らしよい場所へ歩いて行きました。多くの方は初日の出を有り難がってお出かけするようですが、その少し前に輝く天体集合のほうがよほど珍しくて美しいだろうに…注目されないのはどうしてなのでしょう?太陽系の(太陽以外の)明るい星々が元日の空を飾るなんて滅多にありませんよ…。

明け方には淡い雲が西から押し寄せてきましたが、東の空を楽しむ余裕は十分ありました。もっと低空に水星もいるはずですが、日の出近くにならないと登ってこなくなったため、ここには写っていません。それにしても、ため息が出るほど美しい…。低空のせいか、アンタレスが一段と赤く感じました。どこに何が写っているかは右下マーカー付き画像をどうぞ。

2019年元旦の夜明け・月と惑星たち
なお、昨日の記事で観察した静岡の西村栄男さんが発見した新天体「TCP J15472959-0532144」は、この画像内、左側やや上に位置します(暗すぎて見えません)。また先月に発見された岩本彗星も月の右下付近(画像範囲外)にあります。最近毎日のようにこのエリアを見ているような…。

もし晴れたら明日1月2日明け方にもこの空を眺めてください。なんと、月と金星とが大接近していますよ。双眼鏡や望遠鏡を使える方はぜひ拡大してみてみましょう。金星も半分ほど欠けていますから、面白いシンクロニシティを楽しめると思います。北へ行くほど両天体の離角は小さくなりますが、地球上で金星掩蔽になる場所はありません。

時間は戻って……大晦日が終わり、2019年1月1日が始まった頃は快晴でした。ただ(毎年のことですが)、この夜ばかりは夜半過ぎまで光害が続きます。サーチライトが夜空を照らし、街の喧騒もずっと聞こえ、車の往来も激しい。何もなければ本腰入れて観測したいところですが、彗星を二つ軽く撮影するに留めました。

撮り初めはいつものウィルタネン彗星(46P)。南中過ぎてましたが、まだ天頂近くです。近くのステファン・オテルマ彗星(38P)も同じ機材で撮影しました。下の二画像で大きさの比較ができると思います。流れ星が幾つか見えましたが、今年のしぶんぎ群は新月近くで条件最良ですね。また一年、良い空に恵まれますように。

  • 20190101ウィルタネン周期彗星(46P)

    A.ウィルタネン彗星(46P)
  • 20190101ステファン・オテルマ彗星(38P)

    B.ステファン・オテルマ彗星(38P)


参考:
ウィルタネン周期彗星(46P)に関係する記事(ブログ内)

今日の太陽2019/01/01

20190101太陽
今年最初の太陽です。朝からよく晴れて気持ちよく観察できました。

20190101太陽リム
左は11:20少し前の撮影。活動領域はありませんが、中央右側にやや乱れが見えます。SOHOの他波長を見ると少し明るいですね。冬空の揺らぎが大きいため目立つプロミネンスは良く見えませんでしたが、右下リムのものがやや大きいようでした。

地球は明後日3日に近日点を迎え、「太陽がいちばん大きく見える日」となります。

参考:
アーカイブ:地球の近日点通過日と遠日点通過日

2019年元日に台風1号発生2019/01/01


20190101-1500台風1号
元日から台風が発生しました。気象庁によると本日15:00に南シナ海で台風1号「パブーク/PABUK」が発生したとのことです。直前の台風29号(2018年)発生から39日と18時間後、直前の台風28号(2018年)消滅からは35日と18時間後になります。(※消滅は28号より29号のほうが先でした。)

左は発生時の気象衛星ひまわり画像(画像元:RAMMB/画像処理・地図等は筆者)。赤点円は台風中心の直径1000km円を表しています。画像右上に九州から沖縄付近が見えています。台風は西進していますので日本に来ることはないでしょうが、お近くの方々、十分にご注意ください。

遡ると、この台風は昨日の時点で「台風になるかも知れない熱帯低気圧」として発表されていました。更に遡ると、この熱帯低気圧は昨年12月25日に「台風になるかも知れない熱帯低気圧」として発表されたものが、結局台風にならずにいったん低気圧化したものでした。つまり、昨日の時点で「復活した台風の卵」だったのです。熱帯低気圧とは言え、風が台風基準に満たないと言うだけの話。12月29日ごろフィリピンを通過した際は豪雨をもたらし、土砂崩れでたくさんの方が亡くなっています。現地では「台風警報が出なかったため油断していた」との指摘がありました。お正月から悲しいニュースですが、「他所の国のこと」と他人事で片付けるのは良くありません。「油断して深手を負う」本質は、誰かのせいではないと思います。

気象庁ベストトラックに記録が残っている1951年以降の台風で元日に発生したものは無いようですが、越年台風(12月末に発生し、1月頭まで残っていた台風/年区切りはJST換算で判断)は1952年27号、1959年23号、1977年21号、1986年29号、2000年23号がありました。2018年11月1日の記事に台風存在時期の統計グラフを示しましたが、大切なのは発生日時ではなく、台風が存在した期間。それに、そもそも元日は存在極小期ですらありません。台風が最も存在しなくなる区切り、いわば「台風の元日」は2月中旬です。今年も様々な自然災害があるでしょうが、油断禁物。しっかり情報を仕入れて行動しましょう。

明け方に金星と月の接近、新天体も!2019/01/02

20190102金星と月
昨夜から今朝にかけて、一時的に雲があったものの概ね晴れました。幾つか観察や機器調整など行ったのですが、メインターゲットは明け方の新天体確認、および、金星と月との大接近です。

6時頃起きて東の空をご覧になった方はどなたも気がついたことでしょう。晴れていれば月と金星とが寄り添うように、神々しいほどの光を放っていましたね。ここ最近のなかではかなり近い接近で、しかも太陽に続く明るい天体としては2位の月と3位の金星ですから目立つのも当然。見えた方は今年一年幸運に恵まれそうな、そんな光景でした(左画像)。

望遠鏡で拡大したのが下A画像。月1個分ほど間をおいて真下に「半月状の」金星が並んでいます(※この画像は上方向が天の北方向)。周囲の星まで分かるように多段階露出によるコンポジットをしています。実は直前2時間ほど雲が空全体を覆っており、一時は諦めようかと思ったほどでした。その後驚異の天気回復を見せ、観察できた次第。

雲に覆われていた頃、低空の雲間にチラホラ金星と月が見えていたため、せめてもの記念にと撮影したのが下B画像。ここでも奇跡的な現象が見えました。なんと、月と金星の上下に「光柱」が現れたのです。周囲の雲が氷粒に満たされていたのでしょう。寒い夜は稀に見えるのですが、金星と月とが揃った状態で見たのは初めてかも知れません。

なお今年2019年から来年までに起こる金星と月の接近は記事末の表やアーカイブ「天体の接近現象一覧」を参考にしてください。また両天体が接近している日は、「月を使って昼間の金星を見つけるチャンス」になる場合もあります。アーカイブ「昼間に月と金星が近い日」もご覧ください。

  • 20190102金星と月

  • 20190102金星と月と光柱



20190102_TCP J15360165-1642561
さて、もうひとつの目的であった新天体の観察は、星仲間の(の)さんによる情報がきっかけでした。2018年12年31日の記事で静岡の西村栄男さんが新天体発見と書きましたが、その西村さんが元日の明け方にまたしても新天体「TCP J15360165-1642561」を発見したとのこと。

この情報を頂いてさっそく位置を調べると、なんと接近している金星&月のすぐ側じゃないですか。これは観察しないと!しかし慌ただしいスケジュールになりそう…機材はどうしよう?…などと悩みつつの観察でした。

当初は望遠鏡二台体制を予定してましたが、直前の曇り空で設置できず、急遽予定変更。新天体も金星&月も、同じ望遠鏡でまとめて撮影となりました。右は西村さん発見の新天体画像ですが、画像右上すぐのところ(画像外)に金星と月が並んでおり、元画像は激しくかぶっています。年末年始に立て続けの発見、本当に驚くばかりですね。幸運さにあやかりたい…。

【参考:月と金星の会合(離角3°以内)・2019-2020年調べ】
日付時刻天体1天体2最接近時の離角
2019年1月2日(水)06:49金星 0°39′
2019年2月1日(金)01:00(×)金星 0°13′
2019年3月3日(日)04:53金星 1°54′
2019年4月2日(火)17:05(×)金星 2°46′
2019年7月2日(火)06:28金星 2°09′
2019年8月1日(木)04:13(×)金星 0°04′
2019年8月31日(土)01:36(×)金星 2°13′
2019年11月29日(金)03:24(×)金星 1°39′
2019年12月29日(日)09:09(×)金星 1°42′
2020年6月19日(金)18:54(×)金星 0°13′
2020年7月17日(金)17:13(×)金星 2°33′
2020年11月13日(金)09:04金星 2°18′
2020年12月13日(日)04:31(×)金星 0°26′
日付時刻天体1天体2離角

  • 最接近時の離角に応じて色分けし、0度台1度台2度台となっています。
  • 離角は茨城県つくば市設定での計算であり、観察場所により多少変わります。
  • 最接近時に必ずしも条件良く見えるとは限りません。みなさんの観察地での天体高度や太陽出没時刻を考慮してください。(時刻の後ろに×印があるものは最接近時に天体が空に昇っていません。)
  • 計算はアストロアーツ・ステラナビゲーター(ver.8・会合検索ツール)を利用しました。