小惑星2013TX68はあまり接近しないかも2016/02/29

小惑星2013TX68の距離
地球にかなり接近するといわれていた「小惑星2013TX68」の続報です。

2月19日のブログ記事で取り上げた後いくつかの観測データを元に軌道計算が改訂され、2月25日にNASAから発表になりました。軌道を表す数値の少数以下11桁目…というような小さな変更でしたが、それでも曖昧だった計算誤差は減って、地球までの距離がかなり確定的になったようです。

今日現在の最新データを使って、当ブログ基点(茨城県つくば市)までの距離を3月1日9:00JST(世界時0:00)から10日9:00JSTまで計算しました(左図)。距離の単位はLD(地球から月までの距離)に換算してあります。最接近時(8日11時)の距離は12.9957LDという値になりました。この計算が正しければ、ぶつかることはなさそうですね。「2013TX68」よりももっと近い小惑星、例えば2016DE1(2月25日・2.5LD)、2016DB1(2月26日・5.8LD)、2016DL1(3月1日・4.7LD)、2011EH17(3月1日・11.1LD)、2016DM1(3月3日・5.9LD)など、他にも心配になるくらい地球のそばを通っているのです。

ただ、これで安心ということではなく、今回の騒動(?)は大切な示唆がある気がしました。地球に脅威をもたらす小惑星探しにも「苦手な方向、苦手なケースがある」ことです。私たちの「目」が地球を離れられない以上、太陽が眩しくて見えなかったり、大気汚染や光害が邪魔で暗い天体が捕らえられないことはよくあります。将来は宇宙規模での立体監視が必要なのでしょうが、お金も時間もかかります。構築する前に小惑星が落ちて大災害が出る確率の方が高いかも知れません。取りあえずできること…空を汚さない、無駄な光を出さない様にしましょう。

蛇足ながら本日(2016/2/29)時点の情報をまとめておきますと…

  • 小惑星2013TX68の軌道を標準的に見積もると、地球最接近は3月8日11時JSTごろで、地球中心からおよそ13LD(約500万km)のところを通過。この距離はニュースバリューが高い超接近の可能性がとても低いです。昨年の1月末や10月末に接近した小惑星の方がはるかに近かったです。

  • 計算には見積もりの幅があり、最小見積もりで考えても30000kmより近くにはならないでしょう。もちろんあくまで予想で、この最も近い軌道を推移する確率は極めて少なくなりました。

  • 13LD程度のところを通るとすれば、肉眼やアマチュアの望遠鏡程度では絶対見えません(20等星以下)。また最接近時に日本は昼間で、小惑星はやっと東空に昇ったばかりです。


参考:
次々にやってきてる小惑星(2016/03/06)

閏日とダイヤモンド富士2016/02/29

2009年1月のダイヤ富士比較
今日は閏日です。地球が太陽を4周するとスタートラインより約1日(23時間15分ほど)手前になってしまうので、思い切って1日(24時間)足してつじつまを合わせる決め事ですね。昨年は閏秒が挿入されましたが、これも同じこと。現在行われている時間調整量の一番大きいものが4年に一度の24時間挿入なのです。

「時間(日付)が変わるだけだよね」と思われがちなのですが、それに伴って見え方が変わってしまう事があります。そのひとつがダイヤモンド富士。まず左画像をご覧ください。2009年1月の二日間にわたって茨城県内の同じ位置から撮影したダイヤ富士です。(→当日記事はこちらこちら。)雲で見辛いですが、太陽は赤矢印方向に移動しながら、赤矢印先端付近が最後に富士山へ隠れます。たった1日ですが、茨城ではこれくらい差が出ました。冬至後なので右へずれたようになってますが、実際は太陽位置が黄道に沿って左上(天の北東側)に約一日ずれた結果です。

これを踏まえて、下の作図を見てください。これは定評のある3D地形ソフト「カシミール」を使って、「毎年同じ場所・同じ時刻でダイヤ富士を見たらどうなる?」というシミュレーションです。場所は東京スカイツリー近くの架空の場所、日時は2月4日17:00固定です。2013年から2017年まで5枚の画像を下部ボタンで切り替えられます。日時も場所も同じなのに日没位置が少しずつずれることが分かりますか?そして2017年になると、急に2013年とほぼ同じ位置に戻っていますね(※ピッタリではありません)。2016年撮影のあとに閏日が挿入されましたから、実質的には2017年は指定日の翌日に見たのと同じ事になったわけです。

撮影地が山の近くだったりロケーションを頻繁に変えてしまう方は気にならないかも知れませんが、ダイヤ富士(ダイヤ筑波)カメラマンさんはこの「閏年現象」を理解しておくことをお勧めします。ダイヤ富士がずれる程度なら楽しみが一日シフトするだけで済みますが、これは何もダイヤ富士に限ったことでなく「毎日の日出・日没時刻や場所は、同じ日付でも年によって若干異なる」ことを意味します。

太陽は全ての位置の原点ですから、人工衛星の制御から地上の経済活動までどんなところに甚大な歪みが出るかわかりません。閏日や閏秒のおかげで私たちは長期的に狂わない日常を迎えることができるのです。




参考:
7月1日に閏秒が挿入されます(2015/06/26)
※以前に私が「おもしろ!ふしぎ?実験隊」サイトへ寄稿した解説(こども向け)が以下にあります。併せてご覧ください。
うるう日とうるう秒〜狂わない時を刻むおはなし・その1〜(外部サイト)
うるう日とうるう秒〜狂わない時を刻むおはなし・その2〜(外部サイト)

ユーティリティ:ダイヤモンド富士山マップ(冬至→夏至)    ダイヤモンド富士山マップ(夏至→冬至)
ユーティリティ:ダイヤモンド筑波山マップ(冬至→夏至)    ダイヤモンド筑波山マップ(夏至→冬至)