石垣島天文台でのスターリンク・ダンス2024/07/12

20240704スターリンク・ダンスin石垣島天文台
石垣島天文台で撮影されたスターリンク・ダンスの画像がニュースになっていました。さっそく本家サイトに行ってみると、見事な画像が並んでいるではありませんか。以前自分で撮影したときに分析した通り、夏場は「スターリンク・ダンスの下方通過」、つまり宵側のスターリンクフレアと明け方側のフレアとが途切れることなく北天の低空に見えるかも知れない、と予想した通りになっていました。

左画像は公開されている画像からの引用で、7月4日23:00-27:00に撮影されたもの(クレジット:国立天文台)。4時間にわたる日周運動を背景に、低空を埋め尽くすような引っかき傷みたいに写っている光跡がスターリンクのフレア群です。日周の円の中心近くにある明るい星が北極星。その真下にもフレアがあることから、真夜中になってもフレアそのものが没しなかったと分かりますね。

20240704スターリンク・ダンスin石垣島天文台
この画像を使い少し分析してみましょう。右画像は左上画像と同じですが、低空にある幾つかの恒星を特定し、マーカーを入れたもの。撮影開始である23:00の恒星位置を○印とバイエル符号などで示してあります。

撮影開始時におけるHIP29997高度は約4.6°、γCamは6.7°、hUMaは11.5°、γCasは9.0°。これらから、この日フレア群の下方通過は10°未満の現象で、最も低い頃は4°未満だったようです。またこの日、石垣島天文台から見た太陽の子午線下方通過は4日24:48で、高度は-42.85°でした。

前出記事にも書いた通り、私がベランダから測ったときは「太陽高度が約-30°未満あたりでフレアが始まり、-45°に達する前に終わった」との経験があります。また星ナビ2024年3月号の特集記事によれば「太陽高度が-35°から-45°がフレアの起きやすい太陽高度」とのこと。そして、太陽高度が低い(=フレア位置が低い)ほど明るいフレアが増えるという知見も一緒でした。もちろん低ければ大気による減光が顕著なので期待するほど明るくはなりませんけれど…。

地平下の太陽方位(石垣島天文台・2024年)
夏至に近いころ北半球では太陽が深く沈まないため、それに応じて昼時間が長くなることは周知の通りです。北極圏では白夜になってしまう程ですが、南下するほど緩和されます。では石垣島天文台ならどうでしょうか?

左図は石垣島天文台において太陽高度が-30°になったとき、および-40°になったときの方位角を図化したもの。日本経緯度原点(東京)でのケースは前出記事に載せた通り、夏場は-40°に達する前に朝へ向けて高度が上がり始めてしまいます。つまりフレアそのものは見えても明るさのピークには達しないと言うことです。

でも石垣島天文台では緯度が低いぶん、夏至でも太陽は-42°まで下がります。従って夏至前後の一ヶ月はちょうど真夜中にフレアが増光する最適太陽高度を維持することになるのです。今回撮影された一連の画像は、そうした理由が効果を発揮した結果と言えましょう。

見晴らしが良ければ、日本各地至るところでスターリンク・ダンスを観ることができます。石垣島天文台の画像とは時期が少しずれると思いますが、真夜中の太陽高度が-45°を下回らない(なるべく-45°に近い)時期を狙って挑戦すれば、北西から北東まで刻々と移動するフレア群を捉えられると思われます。

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