チャンドラヤーン3号の撮影に挑戦2023/07/27

チャンドラヤーン3号・軌道遷移
25日宵に月面観察を行った後、26日未明に撮影を試みたのがチャンドラヤーン3号。言わずと知れたインド発の月面探査機で、14日に打ち上げられたばかりでした。いつも比較的すぐJPL-HORIZONSから位置情報が公開されるのですが、度々探しに行っても表示されず…。やっと選択肢に現れたこと気付いたのは数日前だったでしょうか。

いきなり月に向かうことはせず、まず地球を周回して準備したのちに月遷移軌道に乗せます(左図/インド宇宙研究機関(ISRO)公式サイトの資料から引用)。現在の軌道は楕円形で少しずつ変形(楕円が膨らんでゆく)しますので、撮影には正確な位置情報が欠かせません。

チャンドラヤーン3号・地心距離
位置情報入手後すぐ計算すると、結構な速さだと分かりました。約1日周期(25日からは約2日周期)の地球周回では近地点でもっとも速く、遠地点で最も遅くなります。右グラフは地心距離に加え、私の観測地での「昼や薄明・月明かりを除いた完全な夜」(薄黄色の帯部分)を描いたもの。ご覧いただくと分かるように、観測しようとしている26日未明(25日15-18時UT)ごろは近地点は避けられたものの遠地点でもありません。地心距離や太陽との位相角によって光度も変わり、タイミングが悪いと地球の影に隠れる可能性もあるため、この条件が良いのか悪いのかも分かりません。それでもチャレンジしてみたいのは観測者としての性でしょうか。実は少し前にESAが打ち上げたユークリッド宇宙望遠鏡の撮影にチャレンジしたのですが、梅雨時期もあって地球から離れてしまい、暗すぎて写りませんでした。今回はその雪辱戦でもありました。

20230726-0130チャンドラヤーン3・撮影のひとこま
途中で曇ったり機材トラブルなども考え、1:30から30分おきに2:30まで三回撮影を計画。いずれも順調に進みました。何等くらいか事前情報が全くありませんので、「1コマ10秒・撮影時刻プラスマイナス5分」以外の撮影条件は少しずつ変えてあります。結果的に全て写っていました。しかも元画像で機影が分かるほど明るかったです(左画像参照/加工無し・合成前元画像のひとコマ/括弧書き数字は等級)。ただ、わずか10分間とは言え移動量が少しずつ変化しますので、移動量固定のメトカーフ合成では衛星像がぶれたようになってしまいました。恒星像の間隔よりも衛星のずれが長いのはこのせいです。こうした高速移動天体では「位置変化量自体を変化させながら合成する手法」を新たに考えなくてはいけませんね。

それはともかく、順調に飛行しているようで何よりでした。8月1日に月遷移軌道に乗せるようなので、見守って行きたいと思います。チャンドラヤーン2号は2019年7月に打ち上げられ、月周回軌道に乗るところまではうまく行ったのですが、着陸船の降下中に通信が途絶えてしまいました。その後NASAから墜落痕が公開されています。日本のHAKUTO-Rも似た運命を辿ったのが記憶に新しいでしょう。ひとつひとつの失敗を次の成功に結びつけてほしいものです。

  • 20230726-0130JST_チャンドラヤーン3号

    A.26日1:30JST
  • 20230726-0200JST_チャンドラヤーン3号

    B.26日2:00JST
  • 20230726-0230JST_チャンドラヤーン3号

    C.26日2:30JST


今日の太陽2023/07/27

20230727太陽
昨夕日没後にきれいな上弦が見えたので観察準備をしていたら、いつの間にか雲がやって来て…それ以降、今日朝まで雲の多い空でした。午前中に快晴になったものの透明度が著しく落ち、雲が無いのに真っ白な空です。気象庁アメダス速報値の本日0時から15時までの集計による夏日地点数は906、真夏日地点数は803、猛暑日地点数は246、酷暑日地点数は0。この時点の最高気温は 大阪府・枚方ポイントの39.8度です。

20230727太陽リム
左は13:20頃の太陽。案の定ゲインを上げなくてはなりませんでした。左上の目立つ黒点群周囲は13386。その向こう側に新たな黒点も現れました。右リムに消える活動領域は多くても、左リムから順調に供給されてますね。

大きなプロミネンスはないけれど、期待できそうなダークフィラメントもたくさん出ています。右下のものはそろそろ光球外に見えそう。左上のループが右リムに到達するまで持ちこたえるでしょうか?

20230727-1500JST_紀伊半島の鉄床雲
暑さのせいか各地で積乱雲が湧いているようですが、目を引いたのは紀伊半島を覆ってしまいそうな鉄床雲。左画像は本日15:00の気象衛星ひまわり画像です(画像元:RAMMB/画像処理・地図等は筆者)。赤点線円は東経135.5度・北緯34.3度を中心に描いた直径150km円。これ、きっと元々ひとつの積乱雲から発達したものなんでしょうね。こんなに大きくなるなんて驚きです。なにより丸く整っていて美しい…。