五日後の皆既月食とペアになる来月の金環日食2021/05/21

20210526月食図
5月26日晩の皆既月食まであと5日。今年最大の満月、月の出とともに欠けている月出帯食(※)、そして準センタームーンという、たくさんの形容が付く今回の月食。天候不順が続いて心配ですが、少しでも見えると嬉しいですね。(※月出帯食:月の出時に月食が始まった状態であること。今回は、中部・関東・東北で半影食開始後に月出、西日本や北海道の一部では本影食開始後に月出となります。)

左図はNASA-Eclipseサイトからの引用で、今回の月食図。これを見ると月食が見える範囲(地図上のダークグレイ以外の地域)は太平洋が中心で、日本はやや外れていることが分かるでしょう。日本付近で伸びたS字に描かれているラインは月縁が半影や本影に接する時刻と月の出が同じになる「同時曲線」で、例えばU1のラインは月出時に月縁が本影に最初に触れる(第1接触)同時曲線。「ライン上のすべての地点で月の出とともにに本影食が始まるよ」ということです。

20210526月食同時曲線
同時曲線は様々なタイミングについて描くことが可能で、日出没同時曲線が有名です(→アーカイブ「地図で見る日出没の季節変化」参照)。例えば5月26日における日本付近の「日の入り(オレンジ線)」「月の出(黄色線)」「天文薄暮終了(紫線)」の同時曲線を10分毎に描くと右図のようになります。各地のタイミングや、現象が進行する方向など様々なことが読み取れるでしょう。日没が進む方向と、薄暮が終わって夜を迎える方向は違うんだ!ということが分かるだけでも驚きです。

皆既月食の最大は20:18JSTごろ。月高度が15°あるかないかですから、障害物の多い街中や山が多い盆地などでは観察ロケーション選択に十分ご注意ください。最初からあますことなく月食が見たいなら、事前に「地平からさそり座のアンタレスが昇るのが見える場所」を探すことをお勧めします。

20210610日食図
ところで、日本で見えないからあまり紹介されていませんが、月食から約半月後の6月10日に金環日食が起こります。左の日食図は前出のNASA-Eclipseサイトから引用。見える地域は北極圏とカナダ・ロシアの一部。ヨーロッパなどでは部分食になります。

これは正に「月食とペアになる日食」(→2016年3月10日記事参照)。ひとつの月食(日食)に注目すると、その半月前か半月後に日食(月食)が起こりやすいという状態です。

今回について見てみましょう。右下はステラナビゲーターによる作図で、5月26日と6月10日それぞれの太陽と月の位置を描いたもの。「黄道座標系」で描いてあります。地球は自身の軌道面(=黄道面)に沿って太陽の周りを公転しており、逆に地球から見ると太陽が軌道面を周っているように感じます。この面を天球に投影したものが黄道。だから、黄道座標系での太陽は黄緯0の線をひたすら左へ進み、およそ1年で一周します。

隣り合わせの月食と日食
いっぽう月軌道面(=白道面)は黄道面に対して約5°傾いており、月は1ヶ月弱で一周します。右図では水色線(=白道)のように黄道に近づいたり遠ざかったして黄緯が変化するのです。

白道と黄道が交差する2つの交点を月が横切るのは一周に二回。この交点近くに太陽と月がいれば、月食や日食の位置関係になりますから、概ね半月スパンでペアになる日食・月食が多いという理屈ですね。地球や月の公転が少し早まっただけでもこの関係は成り立ちにくくなるので、本当に奇跡のような現象と言えましょう。

参考:
アーカイブ:静止気象衛星による日食月影の可視範囲