イナ・クレーターの不思議なデコボコ2021/05/17

イナ・クレーター(NASA)
数日前の宇宙ニュースサイトsoraeに、月面珍百景のひとつ、IMPに関するトピックが出ていましたので、目を引かれました。久しぶりにこの名を目にしました。IMPとはIrregular Mare Patchの略称。不思議な凹凸を持つ地形で、記事に引用されているイナ(またはアイナ)・クレーター(左画像/出典・NASA)だけではなく、月面のあちこちに発見されています。

これをぱっと見たとき、私はどうしても「クレーター錯視」に陥ってしまうんですよ。ざらついたほうがツルッとした地面から浮いて見えませんか?鉄板で焼くお好み焼きやハンバーグが焦げ付きそうなとき、無理やり剥がした裏面みたいな…。実際は逆です。ざらついたほうが低く、つるつるのほうが盛り上がっています。くもりガラスに付いた水滴みたいな、あるいはシーリングスタンプのようなイメージ。同じ画像を時計回りに90度回してみると、錯視の状況変化が分かりやすいでしょう(右下画像)。光と影の方向で人間の視覚は簡単に騙されてしまいます。

イナ・クレーター(NASA)90度回転
この面白いイナ・クレーターは2km程度の大きさだから、見たり撮ったりは難しいかな…と思いつつ月面の「幸福の湖(Lacus Felicitatis)」にあるこのクレーターの正確な位置を調べてみました。幸福の湖と言うより、「アペニン山脈」の麓と言ったほうが分かりやすいかも知れませんね。

そう言えば4月にアペニン山脈を撮ったなぁと思い出し、調べてみたら、ちゃんとイナ・クレーターが写っていました。下A画像が撮影した区域、薄緑矩形を元画等倍でコントラストを上げたのが下B画像。お気楽撮影のためあまりシャープでなく申し訳ありませんが、シーイングが良ければ、2kmの地物なら20cm程度の望遠鏡でも写るんですねぇ!さすがにIMPのブツブツまでは分離しませんが、「ここにあの奇妙な凸凹があるんだな」って想像しながら観察したりお好み焼き頬張るのは楽しそう。今月、この辺りの地形が見やすくなるのは19日・20日ごろです。

  • 20210420アペニン山脈

    A.アペニン山脈付近
  • 20210420イナ・クレーターの位置

    B.イナ・クレーターの位置


「クレーター錯視」関連の参考リンク:
標高データで月面図を描いてみました・その2(2018/10/13)
「月面グー」の見え方を探る(2019/12/07)