M13に接近したパンスターズ彗星 ― 2018/02/21
時々有名な星雲や星団に接近し、私たちを楽しませてくれる彗星や小惑星などの移動天体。ここ数年に当ブログで紹介しただけでも、
などがありました。こうした写真映えするラッキーチャンスはなかなかありませんし、二度と再現しませんのでなるべく観察したいのです。実はここ数日もパンスターズ彗星(C/2015 O1)が北天一の大きさを誇る球状星団M13に接近中でした。でもこんな日々に限って天気が優れずヤキモキ。もう離れつつあるし、今週は天気が悪い予報なので今回はダメかなと半ば諦めかけていました。
ところが昨夕から夜半まで何とか天気が持ち堪えました。M13が我が家から撮れる高度になるのは2時頃以降なので、「曇らないで欲しい!」と願いつつ機材を準備。やっと撮影を始めたところで雲が出てしまいました。
それでも5分ほど粘って露出できたので右画像を仕上げました。原画では下半分薄雲に覆われていたのを、どうにか画像処理で取り除いています。このときパンスターズ彗星は恒星のすぐ側だったのでもう少し後に撮影したかったけれど、もはや全天雲の中…。いちおう記録できただけでも有り難いですね。
- 小亜鈴状星雲M76に接近したラブジョイ彗星(C/2014 Q2)
- 亜鈴状星雲M27に接近したジャック彗星(C/2015 F4)
- 回転花火銀河M101に接近したカタリナ彗星(C/2013 US10)
- 系外銀河M108に接近したタットル・ジャコビニ・クレサーク彗星(41P)
- 回転花火銀河M101に接近した小惑星2014 JO25
- すばるM45に接近したパンスターズ彗星(C/2015 ER61)
- アサシン彗星(C/2017 O1)と小惑星フローレンスの相互接近
などがありました。こうした写真映えするラッキーチャンスはなかなかありませんし、二度と再現しませんのでなるべく観察したいのです。実はここ数日もパンスターズ彗星(C/2015 O1)が北天一の大きさを誇る球状星団M13に接近中でした。でもこんな日々に限って天気が優れずヤキモキ。もう離れつつあるし、今週は天気が悪い予報なので今回はダメかなと半ば諦めかけていました。
ところが昨夕から夜半まで何とか天気が持ち堪えました。M13が我が家から撮れる高度になるのは2時頃以降なので、「曇らないで欲しい!」と願いつつ機材を準備。やっと撮影を始めたところで雲が出てしまいました。
それでも5分ほど粘って露出できたので右画像を仕上げました。原画では下半分薄雲に覆われていたのを、どうにか画像処理で取り除いています。このときパンスターズ彗星は恒星のすぐ側だったのでもう少し後に撮影したかったけれど、もはや全天雲の中…。いちおう記録できただけでも有り難いですね。
アステリズム探訪[5]:ひしゃく星とやまがた星<part1> ― 2018/02/21
北極星を中心に回り続ける北斗七星とカシオペアのW。このアステリズム(星列)はいずれも2、3等星で構成された程良い大きさで、とても目立ちます。北極星を見つける「指極星」を持つ配列として小学校の教科書に載ってしまうほど。どれくらいの方が実物をご覧になったか分かりませんが、星座や星列の名として世代を問わず誰もが耳にしているでしょう。(どちらも列車の名になってますし…。)今回はこのふたつの星列を3回シリーズで取り上げます。
北斗七星は星座の名ではなく、おおぐま座という全天で3番目に大きな星座の一部。熊の背中からしっぽを構成します。でもおおぐま座には北斗七星以外に明るい星がありません。同様に目立つW字型の五つ星を中心とするカシオペア座も、星座全体はWが専有する面積の5倍以上も広がっています。それぞれのアステリズムが星座そのものというイメージが強くなりますね。(海外から見ると日本イコール東京や富士山みたいなものかな?)同じようなことは星座のあちこちで見られます。例えばオリオン座は縦長四角とその中の三つ星が強く印象に残りますが、実際はオリオンが持つ毛皮や棍棒の先のほうまで星々が連なっていますよ。
大きさを比べてみましょう。ひしゃく(柄杓)のような七つ星、WあるいはMの形に並んだ山形星、比較のためオリオンの星々も横向きにして並べてみました(下A・B・C画像)。すべて同一縮尺です。いかがですか?お持ちの印象と同じでしたか?それとも違いましたか?私は意外にオリオンの四角は小さいなぁと思いました。
北天の写真を撮るとき、「広角レンズで北極星を中心に柄杓星と山形星を左右に配置」する撮り方は古くからある王道モチーフ。それぞれの星列と北極星とをすべて活かすレイアウトですね。冒頭に掲載した画像は正にそんな撮り方。固定撮影で数分程度の日周運動を切り取ってもイイ感じに仕上がるでしょう。でも何十分、何時間も日周させてしまうとアステリズムが星々の軌跡に埋もれてしまいます。
この王道レイアウトをフレーミングするとき悩ましいのは、「北斗七星とWそれぞれと北極星との距離が違う」ことと、「北斗七星とWそれぞれの大きさが違う」こと。全体がバランス良い配置はセンスが問われます。そもそも、ふたつの星列が同時に見られる日時は想像以上に限定的。「一日の半分は夜なのだから、最低でも1日1回は星列が左右に並ぶのでは?」と考えがちですが、それはただの理屈に過ぎません。星座早見をクルクル回しながら、撮影する日時や緯度、月明かりや光害との兼ね合い、取り入れたい前景/入れたくない前景、自分の生活パターン等まで考えると、チャンスは激減しますよ。
冬に晴れやすい太平洋側では、ちょうど今頃そんなチャンスが巡ってきます。2月15日を例に、Stellariumによる北天の様子を上のD−G画像に示しました。緑枠は35mmカメラ換算で24mmレンズを使った画角(APS-Cカメラならだいたい16mmレンズ相当)、撮影の際に意識する北斗七星(おおぐま座)のα星からη星までを青エリア、カシオペア座のε星からβ星までを赤エリアで示しました。写野中心は北極星ではなく天の北極です。星座は12ヶ月かけて年周もしますから、大雑把に言うと半月で1時間、1ヶ月で2時間早く同じ位置にやってきます。上の例なら2月15日22時・3月15日20時・4月15日18時(※日没前!)の配置はほぼ等しいのです。
星景カメラマンさんによっては「赤域のほうが青域より北極星に近い」ことに気付き、中心位置をずらすかも知れませんね。また21時のような配置ではひしゃくの柄がフレームにつっかえてしまうので、19時や22時のような対角配置を狙ったり、ひとまわり広角レンズにしたり、工夫のしどころでしょう。千差万別の北天写真を拝見して撮影者がどんな意図だったか汲み取ると、奥深い心理や技術を感じることがあります。
何はともあれ、この北天アステリズムの観察は理屈より実践こそ楽しいもの。今時の広角コンパクトデジカメでさえ10秒もあれば撮影できますから、機会を作ってぜひ撮影してみてください。(※右画像は左に北斗、右にカシオペアが見える日時に、約5分の日周を写しています。ゴチャゴチャしてますが、なんとかひしゃくやWが探せるでしょうか。)
(ひしゃく星とやまがた星<part2>へ進む)
北斗七星は星座の名ではなく、おおぐま座という全天で3番目に大きな星座の一部。熊の背中からしっぽを構成します。でもおおぐま座には北斗七星以外に明るい星がありません。同様に目立つW字型の五つ星を中心とするカシオペア座も、星座全体はWが専有する面積の5倍以上も広がっています。それぞれのアステリズムが星座そのものというイメージが強くなりますね。(海外から見ると日本イコール東京や富士山みたいなものかな?)同じようなことは星座のあちこちで見られます。例えばオリオン座は縦長四角とその中の三つ星が強く印象に残りますが、実際はオリオンが持つ毛皮や棍棒の先のほうまで星々が連なっていますよ。
大きさを比べてみましょう。ひしゃく(柄杓)のような七つ星、WあるいはMの形に並んだ山形星、比較のためオリオンの星々も横向きにして並べてみました(下A・B・C画像)。すべて同一縮尺です。いかがですか?お持ちの印象と同じでしたか?それとも違いましたか?私は意外にオリオンの四角は小さいなぁと思いました。
北天の写真を撮るとき、「広角レンズで北極星を中心に柄杓星と山形星を左右に配置」する撮り方は古くからある王道モチーフ。それぞれの星列と北極星とをすべて活かすレイアウトですね。冒頭に掲載した画像は正にそんな撮り方。固定撮影で数分程度の日周運動を切り取ってもイイ感じに仕上がるでしょう。でも何十分、何時間も日周させてしまうとアステリズムが星々の軌跡に埋もれてしまいます。
この王道レイアウトをフレーミングするとき悩ましいのは、「北斗七星とWそれぞれと北極星との距離が違う」ことと、「北斗七星とWそれぞれの大きさが違う」こと。全体がバランス良い配置はセンスが問われます。そもそも、ふたつの星列が同時に見られる日時は想像以上に限定的。「一日の半分は夜なのだから、最低でも1日1回は星列が左右に並ぶのでは?」と考えがちですが、それはただの理屈に過ぎません。星座早見をクルクル回しながら、撮影する日時や緯度、月明かりや光害との兼ね合い、取り入れたい前景/入れたくない前景、自分の生活パターン等まで考えると、チャンスは激減しますよ。
冬に晴れやすい太平洋側では、ちょうど今頃そんなチャンスが巡ってきます。2月15日を例に、Stellariumによる北天の様子を上のD−G画像に示しました。緑枠は35mmカメラ換算で24mmレンズを使った画角(APS-Cカメラならだいたい16mmレンズ相当)、撮影の際に意識する北斗七星(おおぐま座)のα星からη星までを青エリア、カシオペア座のε星からβ星までを赤エリアで示しました。写野中心は北極星ではなく天の北極です。星座は12ヶ月かけて年周もしますから、大雑把に言うと半月で1時間、1ヶ月で2時間早く同じ位置にやってきます。上の例なら2月15日22時・3月15日20時・4月15日18時(※日没前!)の配置はほぼ等しいのです。
星景カメラマンさんによっては「赤域のほうが青域より北極星に近い」ことに気付き、中心位置をずらすかも知れませんね。また21時のような配置ではひしゃくの柄がフレームにつっかえてしまうので、19時や22時のような対角配置を狙ったり、ひとまわり広角レンズにしたり、工夫のしどころでしょう。千差万別の北天写真を拝見して撮影者がどんな意図だったか汲み取ると、奥深い心理や技術を感じることがあります。
何はともあれ、この北天アステリズムの観察は理屈より実践こそ楽しいもの。今時の広角コンパクトデジカメでさえ10秒もあれば撮影できますから、機会を作ってぜひ撮影してみてください。(※右画像は左に北斗、右にカシオペアが見える日時に、約5分の日周を写しています。ゴチャゴチャしてますが、なんとかひしゃくやWが探せるでしょうか。)
(ひしゃく星とやまがた星<part2>へ進む)