月末の皆既月食と「月色」の話 ― 2018/01/29
1月31日夜に条件の良い皆既月食が起こります。翌日は太平洋側で雪が降るかも知れないと予想されるほど下降気味な天気が心配ですが、雲間からひと目でも見えることを期待して待ちましょう。(追記:当日の観察期時をこちらに追加しました。)
皆既月食は月面全部が地球の影に入ってしまう現象。日本で見えるのは2015年4月4日以来ですが、この日は全国的にお天気が悪かったのでした。良く見えた皆既月食としては2014年10月8日(左画像)以来ですね。
世界的に見ると皆既月食も部分月食(半影月食含む)も立て続けに数回まとめて起こる傾向があり、しかも時期が交互に訪れるという緩い周期性があります。(※本記事末の月食日時表を参照してください。) 今回から来年1月までに3回の皆既月食が立て続けに起こり、そのうち日本では今回と次回(7月28日明け方)の2回見ることが可能です。また2016年3月10日記事で「月食と日食はペアになる」と述べました。今回の月食も2018年2月15日の日食(南極や南米南部で観察可能)とペアになっていますよ。なお今回の進行は右図のようになります(ステラナビゲーターにて作図)。
ところで、NASAの記事に「‘Super Blue Blood Moon’ Coming Jan. 31」という大げさな見出しを見つけました。ちょっと形容しすぎじゃん…。Superは大きさのことを言っており、今年最大だった1月最初の満月と大きさがほとんど変わらない今回の満月もSuper Moonにひっくるめたと思われます。
Blueは「色」の形容です。ただしBlue Moonとは実際の色ではなく「あり得ない、珍しい」という意味の例えですね。Blue Roseと同じです。これは「1ヶ月に2回満月が来るなんてあり得ない」ことから転じたとされますが、言葉の起源をたどると幾つもの説や勘違いなどが出てきて面白いです。ご興味ある方は調べてみましょう。当サイトのアーカイブ「満月とブルームーンの一覧」には「月間重複の満月」と「各二分二至で4回起こる満月」の二通りの解釈で表を作ってあります。実際は満月から満月まで平均29.5日(=1朔望月)なので、31日ある大の月の最初に満月が来る場合は必ず最後のほうにもう一回満月が来ると予想できるでしょう。
Bloodも「色」の形容で、これこそが皆既月食の色を示しています。小さいお子さんに月の絵を描かせると十中八九黄色や金色に染めるようですが、皆既月食や月出直後の低空に見える満月を見せればちょっとしたカルチャーショック、月へのイメージが一変するでしょう。月食こそお子さんに勧めたい現象です。皆既中の月は真っ黒ではなく、冒頭の画像のようなオレンジや赤銅色に染まることから、これを血の色すなわちBlood Moonと称したのでしょう。
皆既月食の色は月食毎に異なることが知られ、これは大気中の塵、主に成層圏まで届いた火山灰の影響が強いとされています。以前の記事で2015年4月22日南米チリ・カルブコ山噴火の際に「夕焼けの色がおかしくなった」という報告を紹介しました(2015年5月29日記事参照)。月食を赤く光らせるのは地球大気から漏れた夕焼け成分ですから、大規模噴火で夕焼けが変われば当然月食の色も変わるのです。
国立天文台では今回の月食で月の色を観察し報告しようというキャンペーンを展開していますので、ご興味ある方は参加してください。方法は簡単で、月食の色合いを示す「ダンジョン・スケール」を使って5段階分類をするだけです(左上図/国立天文台サイトから引用)。奇しくも日本周辺で火山活動が活発。成層圏に及ぶような規模ではないものの、大気に全く影響なしとは言えません。月食を機に大気環境にも思いを馳せてみましょう。火山と月食の色との関係はSpaceweather.comサイトの1月23日記事で詳しく取り上げられています。
色の話ついでにもうひとつ。今月のように大の月である1月末にブルームーンとなることがありますが、次の2月にうるう日が無い場合は1朔望月より少ない日数なので「満月がない」可能性が大きいですね。満月が起こらない2月をBlack Moonと表現することもあるそうです。この場合のBlackは「見当たらない、決して起こらない」という意味。今年2018年2月は満月がありません。「起こらない満月の呼称」というのも変な話ですけどネ。Black Monthなら分かりますが…。
念のため1900年から201年間に起こる全ての「1月の重複満月」について翌2月がブラックムーンかどうか計算し、右表にまとめました。1972年と2048年は閏年なので、2月にも満月がある超レアケース。ただしこれは日本標準時(JST)による日時区切りなので、他国の標準時で区切ると「1月の重複満月」にならないケースもあるでしょう。
それにしてもお月様には様々な色表現があるものですね。
参考:
アーカイブ:皆既月食の一覧
アーカイブ:部分月食の一覧
秋空の皆既月食(2014/10/08)
皆既月食のターコイズフリンジ(2014/11/02)
皆既月食は月面全部が地球の影に入ってしまう現象。日本で見えるのは2015年4月4日以来ですが、この日は全国的にお天気が悪かったのでした。良く見えた皆既月食としては2014年10月8日(左画像)以来ですね。
世界的に見ると皆既月食も部分月食(半影月食含む)も立て続けに数回まとめて起こる傾向があり、しかも時期が交互に訪れるという緩い周期性があります。(※本記事末の月食日時表を参照してください。) 今回から来年1月までに3回の皆既月食が立て続けに起こり、そのうち日本では今回と次回(7月28日明け方)の2回見ることが可能です。また2016年3月10日記事で「月食と日食はペアになる」と述べました。今回の月食も2018年2月15日の日食(南極や南米南部で観察可能)とペアになっていますよ。なお今回の進行は右図のようになります(ステラナビゲーターにて作図)。
ところで、NASAの記事に「‘Super Blue Blood Moon’ Coming Jan. 31」という大げさな見出しを見つけました。ちょっと形容しすぎじゃん…。Superは大きさのことを言っており、今年最大だった1月最初の満月と大きさがほとんど変わらない今回の満月もSuper Moonにひっくるめたと思われます。
Blueは「色」の形容です。ただしBlue Moonとは実際の色ではなく「あり得ない、珍しい」という意味の例えですね。Blue Roseと同じです。これは「1ヶ月に2回満月が来るなんてあり得ない」ことから転じたとされますが、言葉の起源をたどると幾つもの説や勘違いなどが出てきて面白いです。ご興味ある方は調べてみましょう。当サイトのアーカイブ「満月とブルームーンの一覧」には「月間重複の満月」と「各二分二至で4回起こる満月」の二通りの解釈で表を作ってあります。実際は満月から満月まで平均29.5日(=1朔望月)なので、31日ある大の月の最初に満月が来る場合は必ず最後のほうにもう一回満月が来ると予想できるでしょう。
Bloodも「色」の形容で、これこそが皆既月食の色を示しています。小さいお子さんに月の絵を描かせると十中八九黄色や金色に染めるようですが、皆既月食や月出直後の低空に見える満月を見せればちょっとしたカルチャーショック、月へのイメージが一変するでしょう。月食こそお子さんに勧めたい現象です。皆既中の月は真っ黒ではなく、冒頭の画像のようなオレンジや赤銅色に染まることから、これを血の色すなわちBlood Moonと称したのでしょう。
皆既月食の色は月食毎に異なることが知られ、これは大気中の塵、主に成層圏まで届いた火山灰の影響が強いとされています。以前の記事で2015年4月22日南米チリ・カルブコ山噴火の際に「夕焼けの色がおかしくなった」という報告を紹介しました(2015年5月29日記事参照)。月食を赤く光らせるのは地球大気から漏れた夕焼け成分ですから、大規模噴火で夕焼けが変われば当然月食の色も変わるのです。
国立天文台では今回の月食で月の色を観察し報告しようというキャンペーンを展開していますので、ご興味ある方は参加してください。方法は簡単で、月食の色合いを示す「ダンジョン・スケール」を使って5段階分類をするだけです(左上図/国立天文台サイトから引用)。奇しくも日本周辺で火山活動が活発。成層圏に及ぶような規模ではないものの、大気に全く影響なしとは言えません。月食を機に大気環境にも思いを馳せてみましょう。火山と月食の色との関係はSpaceweather.comサイトの1月23日記事で詳しく取り上げられています。
【ブラックムーンはいつ起こる?・1900-2100年調べ】
1月1回目の満月 | 1月2回目の満月 | その次の満月 |
---|---|---|
1915年1月1日 21:21 | 1月31日 13:41 | 3月2日 3:33 |
1934年1月1日 5:54 | 1月31日 1:32 | 3月1日 19:26 |
1972年1月1日 5:20 | 1月30日 19:59 | 2月29日 12:12 |
1991年1月1日 3:36 | 1月30日 15:11 | 3月1日 3:26 |
2010年1月1日 4:13 | 1月30日 15:18 | 3月1日 1:38 |
2018年1月2日 11:24 | 1月31日 22:27 | 3月2日 9:52 |
2029年1月1日 1:48 | 1月30日 15:04 | 3月1日 2:10 |
2037年1月2日 11:35 | 1月31日 23:04 | 3月2日 9:28 |
2048年1月1日 15:57 | 1月31日 9:14 | 2月29日 23:37 |
2094年1月2日 1:53 | 1月31日 21:39 | 3月2日 16:37 |
- ピンク文字の年は2月がブラックムーンになりません。
- 自作プログラムによる計算。日時はJSTです。精度を上げて計算したため、当ブログの他アーカイブとは時刻が異なる場合があります。
念のため1900年から201年間に起こる全ての「1月の重複満月」について翌2月がブラックムーンかどうか計算し、右表にまとめました。1972年と2048年は閏年なので、2月にも満月がある超レアケース。ただしこれは日本標準時(JST)による日時区切りなので、他国の標準時で区切ると「1月の重複満月」にならないケースもあるでしょう。
それにしてもお月様には様々な色表現があるものですね。
【世界のどこかで見える月食・2001-2030年調べ】
日付 (JST) | 食最大の 時刻(JST) | 月食の種類 | 皆既食 継続時間 | アジア圏で 見える? |
---|---|---|---|---|
2001年1月10日 | 5:21:40 | 皆既月食 | 1時間1分 | OK |
2001年7月5日 | 23:56:23 | 部分月食 | − | OK |
2001年12月30日 | 19:30:22 | 半影月食 | − | OK |
2002年5月26日 | 21:04:26 | 半影月食 | − | OK |
2002年6月25日 | 6:28:13 | 半影月食 | − | OK |
2002年11月20日 | 10:47:40 | 半影月食 | − | OK |
2003年5月16日 | 12:41:13 | 皆既月食 | 0時間51分 | − |
2003年11月9日 | 10:19:38 | 皆既月食 | 0時間22分 | OK |
2004年5月5日 | 5:31:17 | 皆既月食 | 1時間15分 | OK |
2004年10月28日 | 12:05:11 | 皆既月食 | 1時間20分 | OK |
2005年4月24日 | 18:55:55 | 半影月食 | − | OK |
2005年10月17日 | 21:04:27 | 部分月食 | − | OK |
2006年3月15日 | 8:48:34 | 半影月食 | − | OK |
2006年9月8日 | 3:52:25 | 部分月食 | − | OK |
2007年3月4日 | 8:21:59 | 皆既月食 | 1時間13分 | OK |
2007年8月28日 | 19:38:27 | 皆既月食 | 1時間30分 | OK |
2008年2月21日 | 12:27:09 | 皆既月食 | 0時間50分 | − |
2008年8月17日 | 6:11:12 | 部分月食 | − | OK |
2009年2月9日 | 23:39:22 | 半影月食 | − | OK |
2009年7月7日 | 18:39:43 | 半影月食 | − | − |
2009年8月6日 | 9:40:18 | 半影月食 | − | OK |
2010年1月1日 | 4:23:46 | 部分月食 | − | OK |
2010年6月26日 | 20:39:34 | 部分月食 | − | OK |
2010年12月21日 | 17:18:04 | 皆既月食 | 1時間12分 | OK |
2011年6月16日 | 5:13:43 | 皆既月食 | 1時間40分 | OK |
2011年12月10日 | 23:32:56 | 皆既月食 | 0時間51分 | OK |
2012年6月4日 | 20:04:20 | 部分月食 | − | OK |
2012年11月28日 | 23:34:07 | 半影月食 | − | OK |
2013年4月26日 | 5:08:38 | 部分月食 | − | OK |
2013年5月25日 | 13:11:06 | 半影月食 | − | − |
2013年10月19日 | 8:51:25 | 半影月食 | − | OK |
2014年4月15日 | 16:46:48 | 皆既月食 | 1時間18分 | − |
2014年10月8日 | 19:55:44 | 皆既月食 | 0時間59分 | OK |
2015年4月4日 | 21:01:24 | 皆既月食 | 0時間5分 | OK |
2015年9月28日 | 11:48:17 | 皆既月食 | 1時間12分 | OK |
2016年3月23日 | 20:48:21 | 半影月食 | − | OK |
2016年9月17日 | 3:55:27 | 半影月食 | − | OK |
2017年2月11日 | 9:45:03 | 半影月食 | − | OK |
2017年8月8日 | 3:21:38 | 部分月食 | − | OK |
2018年1月31日 | 22:31:00 | 皆既月食 | 1時間16分 | OK |
2018年7月28日 | 5:22:54 | 皆既月食 | 1時間43分 | OK |
2019年1月21日 | 14:13:27 | 皆既月食 | 1時間2分 | − |
2019年7月17日 | 6:31:55 | 部分月食 | − | OK |
2020年1月11日 | 4:11:11 | 半影月食 | − | OK |
2020年6月6日 | 4:26:14 | 半影月食 | − | OK |
2020年7月5日 | 13:31:12 | 半影月食 | − | − |
2020年11月30日 | 18:44:01 | 半影月食 | − | OK |
2021年5月26日 | 20:19:53 | 皆既月食 | 0時間15分 | OK |
2021年11月19日 | 18:04:06 | 部分月食 | − | OK |
2022年5月16日 | 13:12:42 | 皆既月食 | 1時間25分 | − |
2022年11月8日 | 20:00:22 | 皆既月食 | 1時間25分 | OK |
2023年5月6日 | 2:24:05 | 半影月食 | − | OK |
2023年10月29日 | 5:15:18 | 部分月食 | − | OK |
2024年3月25日 | 16:13:59 | 半影月食 | − | − |
2024年9月18日 | 11:45:25 | 部分月食 | − | − |
2025年3月14日 | 15:59:56 | 皆既月食 | 1時間5分 | − |
2025年9月8日 | 3:12:58 | 皆既月食 | 1時間22分 | OK |
2026年3月3日 | 20:34:52 | 皆既月食 | 0時間58分 | OK |
2026年8月28日 | 13:14:04 | 部分月食 | − | − |
2027年2月21日 | 8:14:06 | 半影月食 | − | OK |
2027年7月19日 | 1:04:09 | 半影月食 | − | OK |
2027年8月17日 | 16:14:59 | 半影月食 | − | − |
2028年1月12日 | 13:14:13 | 部分月食 | − | − |
2028年7月7日 | 3:20:57 | 部分月食 | − | OK |
2029年1月1日 | 1:53:15 | 皆既月食 | 1時間11分 | OK |
2029年6月26日 | 12:23:22 | 皆既月食 | 1時間42分 | − |
2029年12月21日 | 7:43:12 | 皆既月食 | 0時間54分 | OK |
2030年6月16日 | 3:34:34 | 部分月食 | − | OK |
2030年12月10日 | 7:28:51 | 半影月食 | − | OK |
- NASA・Eclipseサイトのデータから日本に合わせて再編しています。
- 皆既食継続時間とは第二接触時刻と第三接食時刻の差です。
- アジア圏で見える場合でも、必ずしも日本全国から好条件で見えるとは限りません。
参考:
アーカイブ:皆既月食の一覧
アーカイブ:部分月食の一覧
秋空の皆既月食(2014/10/08)
皆既月食のターコイズフリンジ(2014/11/02)