再び天頂通過したASNARO-22018/01/29

20180129ASNARO2
今月18日に打ち上げられた地球観測衛星「ASNARO-2」は順調に飛行を続けているようです。今朝方は当地・茨城県の上空を通るパスがあったので、近くの見晴らし良いところまで歩いて撮影に行きました。

このパスは19日に撮影したときより若干東寄りでしたが、ほぼ天頂近くを通るコースです。空は夜半過ぎまで雲が湧いていましたが、明け方はなかなかの快星。ただ明け方がだいぶ早まり、衛星パスも航海薄明が始まる時間帯なので、暗い衛星が写るか心配でした。

20180129ASNARO2
東に登ってきた夏の大三角を見ながら撮影敢行。肉眼では全く見えなかったものの、カメラは淡い軌跡を捉えていました(左上画像)。どこに何が写ってるかは右画像をどうぞ。画像左方向が北、中央がだいたい天頂です。なおこの画像は特殊な処理で薄明光や光害をそぎ落としており、実際はかなり明るい空でした。衛星はコース、時刻とも予報通り。ASNARO-2の撮影画像を早く見たいものですね。噴火した草津白根山は撮影しなかったのかな?

今日の太陽2018/01/29

20180129太陽
朝からよく晴れています。昨日の朝は我が家でマイナス8度以下を記録してビックリしましたが、今朝はそれほど寒くありません。日が登るといつものように風が吹き出しましたが、思ったほど寒く感じません。

20180129太陽リム
左は11:40頃の太陽。光球面は静穏ですが、今日もプロミネンスが盛大に出てました。右上と左上は昨日から続くものです。左上はもう足元が光球面に入っていますね。左下リムにも大きいものが見えてきましたよ。

月末の皆既月食と「月色」の話2018/01/29

1月31日夜に条件の良い皆既月食が起こります。翌日は太平洋側で雪が降るかも知れないと予想されるほど下降気味な天気が心配ですが、雲間からひと目でも見えることを期待して待ちましょう。(追記:当日の観察期時をこちらに追加しました。)

皆既月食は月面全部が地球の影に入ってしまう現象。日本で見えるのは2015年4月4日以来ですが、この日は全国的にお天気が悪かったのでした。良く見えた皆既月食としては2014年10月8日(左画像)以来ですね。

世界的に見ると皆既月食も部分月食(半影月食含む)も立て続けに数回まとめて起こる傾向があり、しかも時期が交互に訪れるという緩い周期性があります。(※本記事末の月食日時表を参照してください。)

20180131皆既月食図
今回から来年1月までに3回の皆既月食が立て続けに起こり、そのうち日本では今回と次回(7月28日明け方)の2回見ることが可能です。また2016年3月10日記事で「月食と日食はペアになる」と述べました。今回の月食も2018年2月15日の日食(南極や南米南部で観察可能)とペアになっていますよ。なお今回の進行は右図のようになります(ステラナビゲーターにて作図)。

ところで、NASAの記事に「‘Super Blue Blood Moon’ Coming Jan. 31」という大げさな見出しを見つけました。ちょっと形容しすぎじゃん…。Superは大きさのことを言っており、今年最大だった1月最初の満月と大きさがほとんど変わらない今回の満月もSuper Moonにひっくるめたと思われます。

Blueは「色」の形容です。ただしBlue Moonとは実際の色ではなく「あり得ない、珍しい」という意味の例えですね。Blue Roseと同じです。これは「1ヶ月に2回満月が来るなんてあり得ない」ことから転じたとされますが、言葉の起源をたどると幾つもの説や勘違いなどが出てきて面白いです。ご興味ある方は調べてみましょう。当サイトのアーカイブ「満月とブルームーンの一覧」には「月間重複の満月」と「各二分二至で4回起こる満月」の二通りの解釈で表を作ってあります。実際は満月から満月まで平均29.5日(=1朔望月)なので、31日ある大の月の最初に満月が来る場合は必ず最後のほうにもう一回満月が来ると予想できるでしょう。

Bloodも「色」の形容で、これこそが皆既月食の色を示しています。小さいお子さんに月の絵を描かせると十中八九黄色や金色に染めるようですが、皆既月食や月出直後の低空に見える満月を見せればちょっとしたカルチャーショック、月へのイメージが一変するでしょう。月食こそお子さんに勧めたい現象です。皆既中の月は真っ黒ではなく、冒頭の画像のようなオレンジや赤銅色に染まることから、これを血の色すなわちBlood Moonと称したのでしょう。

ダンジョン・スケール
皆既月食の色は月食毎に異なることが知られ、これは大気中の塵、主に成層圏まで届いた火山灰の影響が強いとされています。以前の記事で2015年4月22日南米チリ・カルブコ山噴火の際に「夕焼けの色がおかしくなった」という報告を紹介しました(2015年5月29日記事参照)。月食を赤く光らせるのは地球大気から漏れた夕焼け成分ですから、大規模噴火で夕焼けが変われば当然月食の色も変わるのです。

国立天文台では今回の月食で月の色を観察し報告しようというキャンペーンを展開していますので、ご興味ある方は参加してください。方法は簡単で、月食の色合いを示す「ダンジョン・スケール」を使って5段階分類をするだけです(左上図/国立天文台サイトから引用)。奇しくも日本周辺で火山活動が活発。成層圏に及ぶような規模ではないものの、大気に全く影響なしとは言えません。月食を機に大気環境にも思いを馳せてみましょう。火山と月食の色との関係はSpaceweather.comサイトの1月23日記事で詳しく取り上げられています。

【ブラックムーンはいつ起こる?・1900-2100年調べ】
1月1回目の満月1月2回目の満月その次の満月
1915年1月1日 21:211月31日 13:413月2日 3:33
1934年1月1日 5:541月31日 1:323月1日 19:26
1972年1月1日 5:201月30日 19:592月29日 12:12
1991年1月1日 3:361月30日 15:113月1日 3:26
2010年1月1日 4:131月30日 15:183月1日 1:38
2018年1月2日 11:241月31日 22:273月2日 9:52
2029年1月1日 1:481月30日 15:043月1日 2:10
2037年1月2日 11:351月31日 23:043月2日 9:28
2048年1月1日 15:571月31日 9:142月29日 23:37
2094年1月2日 1:531月31日 21:393月2日 16:37

  • ピンク文字の年は2月がブラックムーンになりません。
  • 自作プログラムによる計算。日時はJSTです。精度を上げて計算したため、当ブログの他アーカイブとは時刻が異なる場合があります。
色の話ついでにもうひとつ。今月のように大の月である1月末にブルームーンとなることがありますが、次の2月にうるう日が無い場合は1朔望月より少ない日数なので「満月がない」可能性が大きいですね。満月が起こらない2月をBlack Moonと表現することもあるそうです。この場合のBlackは「見当たらない、決して起こらない」という意味。今年2018年2月は満月がありません。「起こらない満月の呼称」というのも変な話ですけどネ。Black Monthなら分かりますが…。

念のため1900年から201年間に起こる全ての「1月の重複満月」について翌2月がブラックムーンかどうか計算し、右表にまとめました。1972年と2048年は閏年なので、2月にも満月がある超レアケース。ただしこれは日本標準時(JST)による日時区切りなので、他国の標準時で区切ると「1月の重複満月」にならないケースもあるでしょう。

それにしてもお月様には様々な色表現があるものですね。


【世界のどこかで見える月食・2001-2030年調べ】
日付
(JST)
食最大の
時刻(JST)
月食の種類皆既食
継続時間
アジア圏で
見える?
2001年1月10日5:21:40皆既月食1時間1分OK
2001年7月5日23:56:23部分月食OK
2001年12月30日19:30:22半影月食OK
2002年5月26日21:04:26半影月食OK
2002年6月25日6:28:13半影月食OK
2002年11月20日10:47:40半影月食OK
2003年5月16日12:41:13皆既月食0時間51分
2003年11月9日10:19:38皆既月食0時間22分OK
2004年5月5日5:31:17皆既月食1時間15分OK
2004年10月28日12:05:11皆既月食1時間20分OK
2005年4月24日18:55:55半影月食OK
2005年10月17日21:04:27部分月食OK
2006年3月15日8:48:34半影月食OK
2006年9月8日3:52:25部分月食OK
2007年3月4日8:21:59皆既月食1時間13分OK
2007年8月28日19:38:27皆既月食1時間30分OK
2008年2月21日12:27:09皆既月食0時間50分
2008年8月17日6:11:12部分月食OK
2009年2月9日23:39:22半影月食OK
2009年7月7日18:39:43半影月食
2009年8月6日9:40:18半影月食OK
2010年1月1日4:23:46部分月食OK
2010年6月26日20:39:34部分月食OK
2010年12月21日17:18:04皆既月食1時間12分OK
2011年6月16日5:13:43皆既月食1時間40分OK
2011年12月10日23:32:56皆既月食0時間51分OK
2012年6月4日20:04:20部分月食OK
2012年11月28日23:34:07半影月食OK
2013年4月26日5:08:38部分月食OK
2013年5月25日13:11:06半影月食
2013年10月19日8:51:25半影月食OK
2014年4月15日16:46:48皆既月食1時間18分
2014年10月8日19:55:44皆既月食0時間59分OK
2015年4月4日21:01:24皆既月食0時間5分OK
2015年9月28日11:48:17皆既月食1時間12分OK
2016年3月23日20:48:21半影月食OK
2016年9月17日3:55:27半影月食OK
2017年2月11日9:45:03半影月食OK
2017年8月8日3:21:38部分月食OK
2018年1月31日22:31:00皆既月食1時間16分OK
2018年7月28日5:22:54皆既月食1時間43分OK
2019年1月21日14:13:27皆既月食1時間2分
2019年7月17日6:31:55部分月食OK
2020年1月11日4:11:11半影月食OK
2020年6月6日4:26:14半影月食OK
2020年7月5日13:31:12半影月食
2020年11月30日18:44:01半影月食OK
2021年5月26日20:19:53皆既月食0時間15分OK
2021年11月19日18:04:06部分月食OK
2022年5月16日13:12:42皆既月食1時間25分
2022年11月8日20:00:22皆既月食1時間25分OK
2023年5月6日2:24:05半影月食OK
2023年10月29日5:15:18部分月食OK
2024年3月25日16:13:59半影月食
2024年9月18日11:45:25部分月食
2025年3月14日15:59:56皆既月食1時間5分
2025年9月8日3:12:58皆既月食1時間22分OK
2026年3月3日20:34:52皆既月食0時間58分OK
2026年8月28日13:14:04部分月食
2027年2月21日8:14:06半影月食OK
2027年7月19日1:04:09半影月食OK
2027年8月17日16:14:59半影月食
2028年1月12日13:14:13部分月食
2028年7月7日3:20:57部分月食OK
2029年1月1日1:53:15皆既月食1時間11分OK
2029年6月26日12:23:22皆既月食1時間42分
2029年12月21日7:43:12皆既月食0時間54分OK
2030年6月16日3:34:34部分月食OK
2030年12月10日7:28:51半影月食OK

  • NASA・Eclipseサイトのデータから日本に合わせて再編しています。
  • 皆既食継続時間とは第二接触時刻と第三接食時刻の差です。
  • アジア圏で見える場合でも、必ずしも日本全国から好条件で見えるとは限りません。


参考:
アーカイブ:皆既月食の一覧
アーカイブ:部分月食の一覧
秋空の皆既月食(2014/10/08)
皆既月食のターコイズフリンジ(2014/11/02)