札幌と大阪で日の出が早いのはどっち?2016/12/04

日の出
日の入りが年間でもっとも早い時期ですが、日の出も日に日に遅くなっています。

「太陽は東から登り西に沈む」ことは今や常識。「日出ずる国」とは日本を美化(揶揄?)した表現ですが、元々は「中国などから見て東側にある」という直接的な意味と思われます。地球が球体という知識を得た私たちは、「自分から見て東側」はすべて日出ずる国、いわば「自分の尻尾を追いかけるネコ」のような輪廻であることも理解できます。どんな場所も、そこより東の地域のほうが早く日が登るというイメージを誰もがお持ちでしょう。

さて、タイトルの質問。
「札幌と大阪で日の出が早いのはどちらでしょうか?」

これは12月1日の記事の最後のほうに載せたクイズです。距離が離れているので一瞬戸惑いますが、多くのみなさんは冒頭に述べたように、経度の違いを考えるでしょう。札幌(北海道庁)はだいたい東経141.35°、対して大阪(大阪府庁)は東経135.52°。なんと5°以上も札幌が東です。混乱するのは南北にも差があるからですが、いまは考えないことにしましょう。当然「札幌のほうが大阪より日の出が早い」という気がしますね。

ところが…。私たちは「同じ場所でも季節によって日の出時刻が変わる」ことも知っています。毎日6時に日が登る…なんていう場所は地球上のどこにもありません。実はこの季節変化が日の出対決に大きな影響を及ぼします。

アーカイブ:地図で見る日出没の季節変化には「日出没地図=日の出/日の入りが同時刻になる場所を示した地図」を掲載してます。日出没は毎日変化するので本来は地図も毎日書き換える必要がありますが、アーカイブでは1年変化の一例のみを示しました。これを使って札幌と大阪の日の出を調べてみましょう。

下図は左から2016年12月1日、12月21日、および2017年1月10日の日出地図。全体に共通して言えるのは、日出同時曲線が経線に平行ではないこと。つまり冬期の日の出は「東から西」ではなく「南東から北西」へ遷移するのです。言うまでもなく日本に住む私たちは「太陽が東ではなく南東から登る」という冬の実体験としてこれを感じますね。太陽は東からという常識が通用するのは、厳密に言うなら一年のごく短期間(春分や秋分)だけ。揚げ足を取るようですが「日出ずる国」は冬なら南東、夏なら北東の国になってしまうのです。

  • 20161201札幌と大阪の日の出比較

    (A)2016年12月1日
  • 20161221札幌と大阪の日の出比較

    (B)2016年12月21日(冬至)
  • 20170110札幌と大阪の日の出比較

    (C)2017年1月10日

細かく見ると、地図(A)では6:45の線に対して大阪より札幌のほうが近いことから、先に日が登るのは札幌と推察できます。ところが本日12月4日に札幌と大阪の日の出はほぼ同時となり、その後は逆転してしまいます。同じように見える日出同時曲線ですが、よく見ると冬至は一番勾配が緩くなりますよ。地図(B)で7:00の線に近いほうは大阪です。冬至を過ぎると同時曲線の傾きが戻り始め、来年1月7日は再び日の出が同時に。そして地図(C)の1月10日では7:05の線に近い札幌のほうが早い日の出となります。

つまり記事タイトルの答えは「日付を決めないと分からない」。詳しく言うなら「1年間の大部分は東の札幌のほうが早く日が登るけど、冬至をはさむ1ヶ月あまりは西の大阪のほうが早い」という不思議な現象なのでした。これはもっと広範囲で応用できます。例えば日本最北の有人島「礼文島」と、屋久杉で有名な「屋久島」でも同様です。海外まで拡張するともっと意外な組み合わせがあるでしょう。更に、夏至の頃には日没でも同様の逆転劇が起こります。日出没地図とにらめっこして、クイズを作ってみてくださいね。「冬至や夏至近くで同じ同時曲線に近く、かつ、東西に大きく離れた二箇所」を選ぶのがポイントです。

備考:


暖かい空に内暈2016/12/05

20161205内暈
昨日夜から今日明け方前まで小雨が降りました。明け方には雨雲が取れて少し星が見えました。今日はすっきり晴れることを期待しましたが、残念ながら薄雲が取れません。

左は15時頃の様子。太陽に内暈がかかっています。午前中から見え隠れしていましたが、午後のほうがはっきりしました。こんな調子なので太陽観察はできませんでした。幻日になりそうなほど明るくなる時間帯もありましたが、「内暈の一部が明るく、幻日ではない」と判断しました。また淡い環天頂アークが見えましたが撮影はできませんでした。

つくば雨温図・2016年11月まで
気温は明け方から午後までずっと高めで、近くの茨城県つくば市アメダスポイントの観測(15:00まで)によると最低気温7.0度、最高気温16.9度とのこと。がんばればTシャツで過ごせる!?

右に11月1日記事でも使用したつくば市の雨温図を掲載します。これを見ると、本日の気温幅をうまく内包できる平年値(ピンクのブロック)は「11月上旬または中旬」のようですね。ということで、今日は11月前半並みの暖かさと言えるでしょう。

今日の太陽2016/12/06

20161206太陽
昨夜も曇ってしまい、星は見えませんでした。明け方近くにやっと晴れ間が多くなってきた状態です。朝からはよく晴れ、気持ちいい青空が広がっています。午前中から東日本を中心に強い風が吹き始めました。当地・茨城県南では正午現在までに風速8m/sから9m/sの風になっています。

20161206太陽リム
左は11時少し前の太陽。強風を避けるのに苦労しました。中央右寄りの黒点を伴う活動領域12615が目立ちます。今日はプロミネンスも目を引くものが多く、左リムの大きなものはもちろん、右下リムの細かく広範囲に出ているものも興味をそそられました。

今日の月(宵)2016/12/06

20161206_07806月
午後も風は収まらず、我が家近くのアメダスポイントでは18時台にも風速9m/sオーバーの風が吹いていました。ただ、空気は乾いて透明度が素晴らしく、宵空の月や金星がとても美しく輝いています。月明かりに誘われるがまま、観察と撮影をしました。

左は18:30過ぎの月。強風の合間を見ての撮影です。太陽黄経差78.06°、撮影高度38°、月齢は6.89です。乾いた空気+強風で大気が激しく揺れ動いていました。今夜は月面Xデーなのですが、X地形に光が当たり始めるのは日本で月没後のため地形の出現は見えません。明日に昇る月にはしっかりとX字が見えているでしょう。

風はとても冷たいですが、煌めきに磨きがかかる月や星々に会えると、冬が来たことをしみじみ感じます。近くのイチョウの木がようやく葉をすっかり落としました。

参考:
アーカイブ:月の形(黄経差72度以上、108度未満)