今日の太陽2016/12/26

20161226太陽
昨夜から薄曇りでしたが、今日も昼になっても雲がなかなか取れません。薄日は差しているのですが、太陽面を撮影するには光量が足りず…そんなこんなで、左はようやく12:50頃に薄雲越しに撮影できた太陽です。全体が雲でかぶってますね。

20161226太陽リム
光球面は相変わらず静穏のまま。ただ、二日ほど前から左上に見えていた立派なプロミネンスが半分ほど光球内に入ってきましたね。消えないようにもう少し内側へ来てくれると素晴らしいのですが…。

天気は今夜から明日にかけて雨のようです。次に太陽を拝むときはどうなっているでしょうか?

フィリピン通過中の台風26号と、台風強度のこと2016/12/26


20161225-0900台風26号
22日に発生した台風26号は本日フィリピンを通過しているようです。左は勢力が最も強くなったと思われる昨日25日9:00JSTの気象衛星画像(画像元:NICTサイエンスクラウド)。このときはまだ上陸前ですが、今日9:00の気象庁発表によるとルソン島南部を半分ほど通過し終え、午後には西海上へ抜ける見込みのようです。

今年はフィリピンに接近・上陸した台風が複数あったようで、本当にお気の毒です。日本にもたくさん上陸しましたね。台風発生数は平均的ながらも、同じ場所に強い台風が集中したりすると復興する暇さえありません。エルニーニョからラニーニャに転じた今年は台風の動向も変わるのかな、何か調べる方法はないかな、などとぼんやり思っていたら、昨日タイミング良く気象予報士の片山由紀子さんの記事を拝読しました。そうそう、まさにこういった客観的なデータ分析を見たかったのです。

台風の分析は数だけでなく、強さや位置、広がりなどのパラメーターまで考慮する必要があります。例えば1年間で100個の台風が生まれても、ちょっと風が強い程度の規模ならばたいしたことではないでしょう。でもたった1個だって破壊の限りを尽くす台風もあります。単に発生数の多い少ないを言っても始まらないのです。台風の強さを表すいくつかのインデックスが考えられていますが、手っ取りばやく前述の片山さんの記事で触れているACE(Accumulated Cyclone Energy)を使ってみることにしました。ACEとは台風やハリケーンなどの蓄積エネルギーを表す数値です。

エルニーニョと台風
気象庁が発表している台風ベストトラックデータからACEを計算するプログラムを自作し、1ヶ月ごとに合算。それを5ヶ月移動平均してから、今年9月9日の記事に掲載したエルニーニョグラフと合体させてみました(右図)。いかがですか、相関関係は見出せるでしょうか?台風のACE値は1年周期の変動があるためぴったりフィットはしませんが、ピークのタイミングなどは比較的合ってるように見えます。

ACE値は位置、日時、中心付近の強さの情報を内包していますので、台風ごとに合算しても良いし、台風番号に関係なくこの例の様に月ごとに合計して分析に使うこともできます。少し調べただけですが位置分布として描いた例が見つからなかったので、2015年と今年2016年(台風22号まで)のACEマップを描いてみました(下図)。日本が台風を監視している全領域を経度緯度1度四方のマス目に区切り、そこに台風中心がいたときのACE値を1年分足し合わせたものです。これなら経路のみの地図では分からない「今年もっとも強く台風エネルギーによるダメージを受けたのはどこか」といったことまで推し量れます。

予想していたことですが「台風銀座」「台風交差点」のようなところは存在するのですね。台風10号などで東北・北海道に大きな被害が出ましたが、それでもこの地図上では薄水色ブロック程度のエネルギーでした。もし濃赤色のような場所が脆弱な陸域にできたとしたら…壊滅的な被害が出るのかも知れませんね。残念ながらACE値は飛び飛びの時間における中心の最大風速しか考慮してませんから、広範囲に及ぶ風雨の影響までは分かりません。いずれまたあれこれ考えてみましょう。なお今回計算した結果のうち1977年1月から2016年10月までの月間ACE値をアーカイブ「台風による月間ACE値の一覧」にまとめました。どうぞご利用ください。

  • 2015ACEマップ

    2015年ACE分布マップ
  • 2016ACEマップ

    2016年ACE分布マップ

<グラフおよび地図に関して>
  • ベストトラックでACE値が計算できるのは1977年以降です。
  • 今日現在公開されているベストトラックは今年の台風22号(10月)までですから、ACE値も10月までです。同様にエルニーニョ監視域の温度差も最新は11月までです。グラフは5ヶ月移動平均なので、末端の2ヶ月分は表示されません。
  • ACEマップでブロックが描かれていない所は「台風が来なかった」という意味ではありません。ACEは離散的(6時間おき)かつ1点に集約した代表値なので、ブロックを飛び越える移動の速い台風や広範囲に及ぶ台風などは表現できないからです。
  • ACE値の合計はベストトラックの日時に準じています。年や月の区切りはJSTではなくUTCです。
  • 日本地図(行政ライン・海岸線)は国土地理院「地球地図日本」を利用しました。
  • 世界地図(海岸線・水系)はNatural Earthを利用しました。