薄雲越しに今年最遠の満月2024/02/25

20240224_17983月
昨日昼は一時的に晴れたものの、午後遅くなるにつれて雲が多くなりました。夜には今年最遠(最小)の満月を迎えるので観たかったのですが、半ば諦めムード。でも夜になると薄雲付きながら、少しだけ晴れ間が広がってくれました。

望遠鏡を組み立てているころ、月暈(上部のみ)と幻月(左右とも)、さらに幻月環の一部が見え隠れしていました。幻月や幻月環はなかなか貴重なので撮影したかったけれど、広範囲をカバーできるカメラがすぐには用意できなかったことと、雲が次第に多くなってきたこともあり、泣く泣く諦めました。強い寒気が南下してるせいでしょう、空を覆っていたのが微小水滴の薄雲ではなく氷結晶だったと分かります。それなりに広範囲で見えたことと思います。ただ、薄雲が流れる満月時の幻月は浮浪雲と勘違いされやすく、何人の方が気付けたか疑問です。

左画像は24日21:10前の撮影で、太陽黄経差は約179.83°、撮影高度は約45.00°、月齢は14.55、満月瞬時の約20分前のすがた。去年11月から今年2月頃の満月は地心黄緯がプラス側に大きい時期で、自分より背が高い人の頭を見上げる位置関係です。従って(秤動に関係なく)相手のアゴの下…つまり南極側が裏側まで見え、結果的に南が欠けた満月になります。反対に今年5月から8月頃の満月は地心黄緯がマイナス側に大きいため、自分より背の低い人を見下ろす=つむじが見える=北極側が裏まで見えることから、北が欠けています。

※黄緯がプラスまたはマイナスに大きいと言うことは、地球が太陽を回る平面に対して月が離れているということ。逆に黄緯がゼロに近ければ地球・太陽・月がほぼ同じ平面にいるため、新月なら日食、満月なら月食が起こる可能性が高いと言うこと。なお特定位相に注目した場合、黄緯最大最小の時期は年々ずれます(→記事末のC・D図参照)。

20240224満月
2024年2月17日記事に書いた米国Intuitive Machines社の月着陸船「Nova-C(Odysseus)」が、2月23日8:23JSTごろ無事月面着陸に成功したとのこと。民間会社初の偉業となりました。私も早朝からずっと中継を見守っていました。ところが、着陸船は何らかの原因で横倒しになったらしく、あやうくSLIMの二の舞いでした。SLIMと違うのは太陽電池パネルの向きに影響が無かったようで、主要な観測に支障無いとのこと。

昨夜の満月画像に、Nova-Cが降り立ったマラパートA・クレーターと、SLIMが降り立ったキリルス・クレーターの位置を描いてみました(右画像)。一見同じ照らされ方に感じますがNova-Cは高緯度のため、太陽電池パネルが天頂を向いているなら太陽は低高度からの浅い照射角になるので、発電効率がかなり悪いでしょう。太陽光を垂直に受けつつ追尾するようなパネルにすれば良いけれど、装置が複雑になり、動作不良リスクも大きくなります。

相変わらず西を向いているSLIMの太陽電池パネルにはまだ光が当たっていません。前回と同じ条件とすれば復活するのは2月27日13:00JSTごろ。極寒で機器がダメになっていないことを祈るばかり。それにしても初期の気象衛星ひまわりなどに使われた円筒パネルや多面体パネルなどが採用されないのは何故なのでしょうね?コスト?重量?【26日追記:25日19時JST過ぎ頃、ふたたびSLIMの電力が戻り通信が再確立されたとのこと。前回より太陽高度が20°も高い状態です。ただし電力が戻っても観測機器が復旧できるかは別問題。続報を待ちましょう。】

この後少し晴れ間が残っていたので、見えていたフンボルト付近と南極付近を拡大撮影しました(下画像)。昨年11月27日に撮影したフンボルトより秤動が不利でしたが、微かな連鎖クレーターを確認することができました。南極域を撮影する頃にはもう雲が月を度々隠し、予定フレーム数を取得できず不本意に終わりました。南極の山々を辿ることができますが、秤動が中途半端ですね…。ドリガルスキーが薄い…。左端にバイイの一部、右端近くはブサンゴやノイマイヤー付近。この画像にもNova-CがいるマラパートAが写っていますから特定してみてください。

  • 20240224フンボルト付近

    A.フンボルト・クレーター付近
  • 20240224南極付近

    B.南極付近


  • 満月の地心黄緯

    C.満月瞬時の地心黄緯
  • 新月の地心黄緯

    D.新月瞬時の地心黄緯