満月前夜2022/01/17

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ついこの前新月だと思ったら、あっという間に満月前夜になってしまいました。今年も半月以上が過ぎてしまったのですね。早い早い…。

左は日付が今日17日になった頃の撮影で、太陽黄経差は約164.96°、撮影高度は約69.4°、月齢は13.86です。今年最初の満月瞬時は明日18日8:48ですから、この月は満月の約33時間前と言ったところでしょうか。

左端近くではグリマルディが朝を迎え、近くにある月面A地形にもたくさん光があたっています。月面Aの見頃は月の出直後くらいでしので、まだ昼間でした。シッカルトやバイイなど大型クレーターもしっかりと見えてますね。

この画像を見て、北極側(上側)にあまり影が見えないのに対して、南極側には影が結構できていることに気づけた方は鋭い観察眼の持ち主でしょう。月食以外の満月は少し欠けていることをご存じの方は少なからずいらっしゃると思いますが、明日の満月は黄道=地球の影がある位置=太陽と正反対方向より北に大きく離れているため、南極側が欠けることになります。実は今年は近年でも3、4年ごとにしか起こらない「満月らしくない満月」が2回(2月と8月)も起こる当たり年。(満月に見えない満月って、ただのハズレじゃん!っていうツッコミはスルー…)

このお話は近いうちに特集記事を掲載予定です。明日明け方に見える満月は“前哨戦”として欠けてる様子がしっかり観察可能ですから、晴れたらぜひご覧くださいね。

ハアパイ火山の噴火と津波のこと2022/01/17

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トンガ諸島にあるフンガ・ハアパイ火山が15日13時JST頃に噴火してから丸二日が経過しました。よもや津波が起こるとは思いもよらず、夜中に警報が出たのを聞いてびっくり。当地・茨城でも潮位の変化が確認されています。

火山の爆発的噴火で大きな音とともに振動が伝わることや、周囲の気圧変化があることは、原水爆や魚雷実験の映像を見たり、身近なところでは打ち上げ花火などを体験すれば分かります。かつてロシアの史上最恐と言われた「ツァーリ・ボンバ」の衝撃波が地球を3周したといった例もありました。でも人工物ではなく、地球自然界で唯一の大爆発と言っていい火山噴火が原因の気圧変化や津波を生きているうちに体験することになろうとは…。

左は気象衛星GOES-17が捉えた噴火の雲。噴火から約1時間経過した14時JSTの画像です(元データ:RAMMB、画像処理は筆者)。文字通り地球に大きな“吹き出物”ができてしまいましたね。様々な衛星画像を調べましたが、昨年12月から続く噴煙や海域変色の拡大など前兆現象が確認できました。

噴火に伴う潮位変化
日本で観測された潮位変化を見てみましょう。右は海上保安庁海洋情報部から公開されている検潮データをグラフ化したもの。太平洋に面する観測所のなかから4ヶ所を選んでプロットしました。15日19時頃までが平時の状態。

海面の大きな起潮力となる月と太陽の運行+地球の慣性力によって一日2周期程度の緩やかな増減…いわゆる潮の満ち引きが知られていますが、平時の海面はそれに加えて短周期で最大10cm程度の小さな振動を含んでいます。ところが噴火から7時間が経過した辺りから短周期の振幅が強烈に膨らんでいますね。本日12時のデータまで描いたけれど未だに落ち着く気配がありません。一度ざわついた海面は通り過ぎて無くなるんじゃなくて地球を何周もしますから、平時の状態にもどるまでしばらくかかるでしょう。

フンガ・ハアパイ火山中心の地図(正距方位図法)
火山から上グラフの各観測所までどれくらいの距離があるか計算するついでに地図化してみました。左はハアパイ火山を中心とした正距方位図法の地図。書いてある距離は地球面に沿って測った測地線長です。津波の伝播速度は一定ではなく水深が深いほど速くなるのですが、ざっくり言って1000km/hで日本までやってきたことが分かります。

※注:ただし今回は海を伝わってやってきたわけではない可能性も大いにあります。ウェザーニュースによると急な気圧変化が観測されたのは20時から21時ごろとのことで、津波が到達するのとほぼ同時刻でした。起因が同じ波なら、海と空気とでほぼ同時到達は考えにくいでしょう。うまく表現できませんが、最初の爆風が海面を押し続けながら進むはずなので、大気の衝撃波にあまり遅れること無く海面変動がやってきた、といった感じかも知れません。大気に押さえつけられた海面は次々に押し寄せるため最初の変動にどんどん加わり、従来の津波のような大きな波長の押し引きではなく細かい周期の押し引きになる…といった様相。「大気津波」とでも言いましょうか。(素人考えです。)ただ海底地形は複雑なので、たまたま偶然同じに…という可能性も否定できません。

日本より遠い北米やチリでも津波が観測されたり、アラスカで音が聞こえたというアメリカ国立気象局のニュースもありました。人が住んでないから分からないけれど、南極大陸の太平洋側にも押し寄せたんでしょうね。棚氷の崩壊が一気に進まないか心配です。1000年に一度の噴火という修飾が鼻についたけれど、本当にすごい噴火だったんですねぇ。

そう言えば2020年6月30日記事でジーランディア大陸のことを取り上げた際に、この海域の海底地形図を作ったことを思い出しました。下A図がその地図です。左上にオーストラリア、中央下寄りにニュージーランド。そして右上の黒い四角のところに今回噴火したハアパイ火山があります。この四角部分を拡大したのが下B図。画像中央が火山です。

「トンガ諸島」として海上に出ている部分は本当にごくわずか(明るい黄色のうち高いところのみ)で、海底は山だらけなのが分かるでしょう。しかもすぐ東側には深いトンガ海溝があります。あれ、これってどこかで見たことあるような…。ピンときた方は日本の海域をじっくり調べてみてください。(→参考:特集記事「海の中の宇宙」

  • ジーランディア大陸とトンガの位置関係

    A.ジーランディア大陸とトンガの位置関係
  • トンガ付近の海底地形

    B.トンガ付近の海底地形


参考:
気象庁の報道発表資料
令和4年1月 15 日 13 時頃のトンガ諸島付近のフンガ・トンガ-フ ンガ・ハアパイ火山の大規模噴火に伴う潮位変化について
令和4年1月 15 日 13 時頃のトンガ諸島付近のフンガ・トンガ-フ ンガ・ハアパイ火山の大規模噴火に伴う潮位変化について(第2報)

今回の潮位変化は地震による津波のメカニズムと異なるため到達時刻なども従来の津波予測と異なったり、遠くの国で海面変動したのに途中では変化が少ないなど「津波ではない」という見解もあります。ただ、国内外で被害や死者が出るほどの現象たったのは事実のようです。科学的にどう呼ぶかは生き残った後でも議論できることですから、メカニズム解明とともに混乱と被害を最小限に抑えることが各々の優先事項と思われます。


今日の太陽2022/01/17

20220117太陽
昨夜から今朝にかけてほぼ快星夜。今日朝からは雲が湧き、午後になると雲量が5割、夕方は8割に増えました。

20220117太陽リム
左は11:20頃の太陽。昼前後にたまたま雲が少なかった時間に撮影しました。活動領域12924と12926が右リムに消え、7ヶ所に減りました。北半球の12929と12930がとても目立っていますね。南半球の12933が中央子午線に差し掛かってます。ところどころダークフィラメントもあるようです。

昨日も見えた右下と左下のプロミネンスは小さくなりました。そろそろ大きいのが見たいですねぇ。