ふたご座流星群と流星観測星図 ― 2021/12/15
昨日は午前中から雨が降り出し、宵まで続きました。そのまま夜通し曇るかと思っていたら、夜半前から快星。足元が濡れていたため本格的なことはできませんので、前夜同様にカメラ放置固定撮影でふたご座流星群を撮影しました。
前夜の光学系を少し変更し、天体用改造カメラ+対角魚眼のセッティングです。元はカラーなのですが、光害と霞によるカブリで色調があまりに酷いため、白黒変換・光害低減の画像処理を施しました。明け方にかけて撮影したせいか人工衛星があまりに多すぎて閉口しましたが、なんとか群流星らしき像を2シーン×2つ捉えることができました。(各シーンは事情により途中で場所変更しています。)
肉眼でも探してみましたが、前夜と比較して少な目の印象でした。極端なピークではない群ですが、幾つかの予報では14日16時ピークと書いてあるので、少なくとも日本では夜の時間ではなかったのでしょう。まぁ、あくまでも予報は予報。実際にどうだったかはこれから分かってくるでしょう。
ところで、最近は多くの観測が写真によるものになったため、流星観測用星図の実物をあまり見かけなくなった気がします。2000年より前から流星観測をしていた方なら当たり前のように知っていた(使っていた)星図です。群流星か、それとも似ているけど違う散在流星なのかを判断するのに好都合な図法で描かれています。
ステラナビゲーターやStellariumなど一般的なプラネタリウムソフトはデフォルトが正距方位図法とかステレオ図法などになっていますが、これらは天球上の任意の2点を通る最短線(大円)が直線になりません。流星観測は「流星が大円に沿って飛ぶように見える」ことを基本にします。これは一般的な流星が100-70km程度の上空で短時間の内に消えてしまい、地球自転や空気抵抗によって観測者との位置関係が複雑にならないことが前提です。この場合、大円経路が必ず直線で描かれる「心射方位図法」による星図が便利なのです。
下はステラナビゲーターによる冬のダイヤモンド周辺の赤道座標星図。Aは流星観測に使われる「心射方位図法」、Bはデフォルト設定の「正距方位図法」。赤経赤緯の赤い線が無かったら、ほとんどの方はぱっとみて違いに気付けないでしょう。試しに「カストルとリゲルを結ぶ線(最短コース=大圏コース)」を薄紫で描いてみました。両星とも星図中心から外れていますが、心射方位図法では必ず直線になります。いっぽう正距方位図法ではわずかにカーブしていることが分かりますか?もし「オリオンの三ツ星の真ん中の星(アルニラム)からリゲルに向かって流星が飛んだ」場合、正距方位図法の星図でアルニラムとリゲルを定規で結んでまっすぐ伸ばすとカストルよりかなり北寄りになってしまうでしょう(C図の淡黄色点線)。従って「この流星はカストルの方向から飛んできたとは言えない」事になってしまうのです。正距方位図法で2点を結ぶ最短コースは片方が中心にない限り直線になりません。適切な星図を使わなければ事実誤認してしまう例ですね。
覚えていらっしゃる方も多いと思いますが、某国から発射されたミサイルが北海道上空をかすめたときに似た事例が発生したことがありました。一部のマスコミがメルカトル図法などでおなじみの直交座標系地図で某国中心の等距離円を正円で描き、ミサイル経路を直線で示し、「どっちに向かった」「どこまで飛んだ」というニュースを報じたのです。距離や方位を論じるなら正距方位図法を使わねばなりません。このときは地球地図だから多くの方が報道の間違いに気付けましたが、位置関係が解りづらい星図だったらどうですか?だんだん忘れ去られてゆく星図図法のメリットとデメリットを深く理解しないまま何となく使っていると、このミサイル航行地図同様にとんでもない間違いをすることになるでしょう。紙媒体が少なくなっている今、何かの節目や見直す時期を迎えている気がします。流星を探しながらそんな思いに耽っていました。
前夜の光学系を少し変更し、天体用改造カメラ+対角魚眼のセッティングです。元はカラーなのですが、光害と霞によるカブリで色調があまりに酷いため、白黒変換・光害低減の画像処理を施しました。明け方にかけて撮影したせいか人工衛星があまりに多すぎて閉口しましたが、なんとか群流星らしき像を2シーン×2つ捉えることができました。(各シーンは事情により途中で場所変更しています。)
肉眼でも探してみましたが、前夜と比較して少な目の印象でした。極端なピークではない群ですが、幾つかの予報では14日16時ピークと書いてあるので、少なくとも日本では夜の時間ではなかったのでしょう。まぁ、あくまでも予報は予報。実際にどうだったかはこれから分かってくるでしょう。
ところで、最近は多くの観測が写真によるものになったため、流星観測用星図の実物をあまり見かけなくなった気がします。2000年より前から流星観測をしていた方なら当たり前のように知っていた(使っていた)星図です。群流星か、それとも似ているけど違う散在流星なのかを判断するのに好都合な図法で描かれています。
ステラナビゲーターやStellariumなど一般的なプラネタリウムソフトはデフォルトが正距方位図法とかステレオ図法などになっていますが、これらは天球上の任意の2点を通る最短線(大円)が直線になりません。流星観測は「流星が大円に沿って飛ぶように見える」ことを基本にします。これは一般的な流星が100-70km程度の上空で短時間の内に消えてしまい、地球自転や空気抵抗によって観測者との位置関係が複雑にならないことが前提です。この場合、大円経路が必ず直線で描かれる「心射方位図法」による星図が便利なのです。
下はステラナビゲーターによる冬のダイヤモンド周辺の赤道座標星図。Aは流星観測に使われる「心射方位図法」、Bはデフォルト設定の「正距方位図法」。赤経赤緯の赤い線が無かったら、ほとんどの方はぱっとみて違いに気付けないでしょう。試しに「カストルとリゲルを結ぶ線(最短コース=大圏コース)」を薄紫で描いてみました。両星とも星図中心から外れていますが、心射方位図法では必ず直線になります。いっぽう正距方位図法ではわずかにカーブしていることが分かりますか?もし「オリオンの三ツ星の真ん中の星(アルニラム)からリゲルに向かって流星が飛んだ」場合、正距方位図法の星図でアルニラムとリゲルを定規で結んでまっすぐ伸ばすとカストルよりかなり北寄りになってしまうでしょう(C図の淡黄色点線)。従って「この流星はカストルの方向から飛んできたとは言えない」事になってしまうのです。正距方位図法で2点を結ぶ最短コースは片方が中心にない限り直線になりません。適切な星図を使わなければ事実誤認してしまう例ですね。
覚えていらっしゃる方も多いと思いますが、某国から発射されたミサイルが北海道上空をかすめたときに似た事例が発生したことがありました。一部のマスコミがメルカトル図法などでおなじみの直交座標系地図で某国中心の等距離円を正円で描き、ミサイル経路を直線で示し、「どっちに向かった」「どこまで飛んだ」というニュースを報じたのです。距離や方位を論じるなら正距方位図法を使わねばなりません。このときは地球地図だから多くの方が報道の間違いに気付けましたが、位置関係が解りづらい星図だったらどうですか?だんだん忘れ去られてゆく星図図法のメリットとデメリットを深く理解しないまま何となく使っていると、このミサイル航行地図同様にとんでもない間違いをすることになるでしょう。紙媒体が少なくなっている今、何かの節目や見直す時期を迎えている気がします。流星を探しながらそんな思いに耽っていました。
今日の太陽 ― 2021/12/15
富士山とレナード彗星 ― 2021/12/15
夕空にレナード彗星(C/2021 A1)が帰ってきました。と言ってもかなり低空ですが…。
当地・茨城県南部は本日12月15日丸一日よく晴れていたので、ものは試しに宵のレナード彗星が見えるかどうか試してみました。我が家からは西空の視界が確保できませんが、好都合なことに先日ダイヤモンド富士を見に行った近所から『富士山とレナード彗星のツーショット』が狙えそう。カメラ片手に歩いてゆきました。
現地についたのは日没後でしたが、まだ十分空が明るい時間。寒さに震えながらしばらく待つことになりました。富士山とレナード彗星の位置関係、レンズ画角など全て頭に叩き込んでいたので、フレーミングを固定して待つだけです。とは言え、現地は身動きが取れない歩道橋の踊り場。薄明空はほんの5分でも適正露出が変わってしまうし、肉眼では彗星も北極星も全く見えませんから露出やガイドセッティングなど経験だけが頼りというシビアさです。
左上画像は富士山とのツーショット。彗星も写っていますが分かりますか?縦画角が小型双眼鏡の視野+α程度ですから、いかに低いか分かるでしょう。右画像はコンポジット枚数を増やしてなめらかにした上で、微光星を炙り出す処理を施してあります。周囲の主な星にマーカーを入れました。彗星から11時方向を中心に1°ほどの尾がうっすら伸びているように見えます(右画像インポーズ/白黒反転高コントラスト処理)。
撮影時の彗星高度は5°から4.5°前後。日中の気温がもう少し暖かかったら低空の霞が厚く残り、写らなかったかも知れません。実際、富士山はかなり霞んでぼんやりしてました。レナード彗星の核はたて座γ星(γSct:4.7等)より明るく写ってますので3等台に届いていそう、コマまで含めた全光度はもう少し明るいはず。でも計算上の光度ピークは過ぎていますから、バーストでも起こらなければ今後は急速に暗くなるでしょう。夕空で探したい方は早めにトライしてくださいね。17日・18日は金星に接近しますから探しやすいと思います。
当地・茨城県南部は本日12月15日丸一日よく晴れていたので、ものは試しに宵のレナード彗星が見えるかどうか試してみました。我が家からは西空の視界が確保できませんが、好都合なことに先日ダイヤモンド富士を見に行った近所から『富士山とレナード彗星のツーショット』が狙えそう。カメラ片手に歩いてゆきました。
現地についたのは日没後でしたが、まだ十分空が明るい時間。寒さに震えながらしばらく待つことになりました。富士山とレナード彗星の位置関係、レンズ画角など全て頭に叩き込んでいたので、フレーミングを固定して待つだけです。とは言え、現地は身動きが取れない歩道橋の踊り場。薄明空はほんの5分でも適正露出が変わってしまうし、肉眼では彗星も北極星も全く見えませんから露出やガイドセッティングなど経験だけが頼りというシビアさです。
左上画像は富士山とのツーショット。彗星も写っていますが分かりますか?縦画角が小型双眼鏡の視野+α程度ですから、いかに低いか分かるでしょう。右画像はコンポジット枚数を増やしてなめらかにした上で、微光星を炙り出す処理を施してあります。周囲の主な星にマーカーを入れました。彗星から11時方向を中心に1°ほどの尾がうっすら伸びているように見えます(右画像インポーズ/白黒反転高コントラスト処理)。
撮影時の彗星高度は5°から4.5°前後。日中の気温がもう少し暖かかったら低空の霞が厚く残り、写らなかったかも知れません。実際、富士山はかなり霞んでぼんやりしてました。レナード彗星の核はたて座γ星(γSct:4.7等)より明るく写ってますので3等台に届いていそう、コマまで含めた全光度はもう少し明るいはず。でも計算上の光度ピークは過ぎていますから、バーストでも起こらなければ今後は急速に暗くなるでしょう。夕空で探したい方は早めにトライしてくださいね。17日・18日は金星に接近しますから探しやすいと思います。