金星が東方最大離角を迎えます2021/10/30

20211029金星
今日10月30日に金星が東方最大離角を迎えます。「え、いま金星は宵空に見えるの?」とびっくりする方も少なくないでしょう。天文ファン以外の方々は、どの惑星が何時頃この方向に見えるか分かる特殊能力を持ってないでしょうから、気付けなくても当たり前。目に入らないもの、意識が捕まえられないものは「無いも同然」なのです。

特に今期の金星は目に止まり難いことでしょう。撮影を試みている方は身を持って体感してると思われますが、とにかく半年あまりずっと低いままだったんです。金星や水星は「最大離角の頃に見やすい」とほとんどの解説本に書いてあるけれど、必ずそうだとは言い切れません。解説を書く人、語る人はそんな薄っぺらなマニュアル文言ではなく、条件をひとつひとつ確かめたほうが良いと私は思います。本日のケースは昼間に南中するときでさえ、当地・茨城県南部でも27°程度。日が沈んだあとではもう20°を割り込んでいます。当地以外でも似た状況で、北の地方ほど悪条件でしょう。都会でなくてもある程度建物や街路樹などが密集している街中では、気付くより先に景色の向こうへ隠れてしまうのですね。(20m先の二階建て、30m先の三階建てが建ってるだけで、16°から18°以下の空は見えません。)

記事下に2021年4月26日記事に掲載した図を再掲載しました。宵の明星、明けの明星どちらも、終始低く留まってしまうときと、高く舞い上がるときがあり、似た状況は約8年周期×5パターンで繰り返すことが知られています。(→2020年6月5日記事や、国立天文台・暦Wiki「日面経過」の後半を参照。)天体同士の離角が高度方向に効いてるか否かという点は、今年ちょっと話題にした水平月と同じ理屈ですね。(→2021年10月5日記事の中程の解説図参照。

金星の最大離角日における高度
もう少し掘り下げると、「最大離角なのに低い」状態も緩やかな変化があります。実は今期の最大離角は、これでも「低いなかでは一番高い状態」と言えるのです。

右は当ブログ基準の茨城県つくば市において、1700年から2200年の501年間に起こる252回すべての最大離角で、日没時(東方最大離角)または日出時(西方最大離角)の金星高度をグラフ化したもの。東方最大離角と西方最大離角それぞれ5系統の流れが見えますが、これが前述の5パターンです。この範囲で最小値を探すと、夕方は1874年9月30日の17.85°、朝は1707年4月9日の22.02°が最も低いケースでした。日没時で18°弱では、少し暗くなった頃にはもう見えなくなってしまうでしょうね。

右図に書きましたが、金星の緩やかな軌道変化によって、ほとんど同じパターンが約243年周期で巡っています。前述した夕方最低記録1874年から243年経った2117年や、その8年後、16年後、または8年前、16年前なども17°台の高度。だから今年はまだマシ(?)なほうなんですね。

冒頭画像は少しフライングして29日夕方に撮影した金星。時刻は「日暮れ」(=太陽高度が地平線下7°21′40″に達した時刻)ちょうどです。まだ1等星がやっと見えだすくらい明るい空ですが、広角で撮影すると金星が画面下に寄ってしまいますね。今後12月にかけて若干上がりますが、期待できるほどではないかも。年末年始でバタバタしているうちに、金星は2022年1月9日9:48ごろの黄経内合を迎えます。

  • 宵の明星位置変化(2019年8月〜2020年6月)

    A.宵の明星位置
    (2019年8月〜2020年6月)
  • 宵の明星位置変化(2021年4月〜2022年1月)

    B.宵の明星位置
    (2021年4月〜2022年1月)
  • 宵の明星位置変化(2011年8月〜2012年6月)

    C.Aの8年前
    (2011年8月〜2012年6月)
  • 宵の明星位置変化(2013年4月〜2014年1月)

    D.Bの8年前
    (2013年4月〜2014年1月)


今日の太陽2021/10/30

20211030太陽
昨夜から今朝は快晴。月がどんどん細くなってきました。数日後は今期最後の水平月になるでしょう。朝からもよく晴れていますが、昨日ほどの透明度はありません。

20211030太陽リム
左は9:30前の太陽。活動領域12886の黒点が右下リムぎりぎりです。12887や12891のプラージュがよく見えています。驚いたことに北半球の中央子午線付近に新しい黒点群が現れていました。午前現在はまだ採番されてないようですが、目立つのですぐ番号が付くでしょう。

少し分かりづらいですが、南半球の極域に、緯度方向に長く伸びたダークフィラメントが見えています。また、左上リムからとても高く伸び上がるプロミネンスが出てますね。実高度は地球7、8個ぶんあるでしょうか。

29日0時半過ぎに発生したX1クラスフレアに伴う宇宙線は、早ければ今日にも地球に届くはずです。通信障害やGPS誤差発生の心配があります。人体に影響したり大規模停電にはならないと思いますが、通信頼みの仕事をされている方など、くれぐれもご注意ください。太陽観測衛星SOHO画像はまだSnow Stormだらけ。下B画像の彗星みたいなものも影響の一種でしょうか?尾が太陽と反対になってませんから、少なくともSun-Grazing Cometでないことは分かります。ちなみに右端の輝星は火星です。

  • 20211030-0048UT-LASCO_C2

    A.SOHO C2カメラ
  • 20211029-1954UT-LASCO_C3

    B.SOHO C3カメラ