とても太陽に近かった金星の内合2020/06/05

金星の内合・通過経路
昨日6月4日3時JST少し前ごろ、金星が内合(黄経内合)を迎えました。金星が内合するとき、太陽から北へ大きく離れていれば「宵の明星」と「明けの明星」とが同時に見える期間が存在する、ということを2017年3月21日の記事に書きました。今回も北側コースだったのですが、かなり太陽に近かったため、ほぼ瞬時に宵の明星から明けの明星へ切り替わった感じです。

では、どれくらい近いところを通ったのでしょうか?これを調べるべく、自作プログラムで計算し図化してみました(左図)。中央のオレンジ円が太陽(直径0.5°固定)、最小枡が1°×1°の黄経差(横軸)と黄緯差(縦軸)を直交座標で表します。

2000年以降2040年までに起こる全ての内合について、太陽に対する金星の地心位置差を計算。黄経内合日(JST)を中心に10日間の位置関係を描きました。経路を示す線上の大きい丸マーカーは各日0:00JSTの位置で、最小マーカー間隔は3時間おきです。地球に対する内合現象ですから金星は常に左から右へ移動し、日付が矢印マークで描いてある日のどこかで内合になるわけですね。今回の経路は本当に太陽至近を通過していました。こういった比較図は見たことがないので、あらためて納得できました。

20040608金星日面通過
こうして可視化すると理解しやすいのですが、内合に伴う経路は周期性を持ったグループに分かれます。8年ごとに5つあるグループを行ったり来たりしてますね(→国立天文台・暦Wiki「日面経過」の後半参照)。昨日の内合は「太陽に一番接近するグループ」に属し、この計算範囲では太陽に重なってしまった2004年(右画像)と2012年(左下画像)に次いで近かったことになります。こんなに近いため内合前後の観察は困難だったでしょうが、見事な自作望遠鏡で撮影してしまった猛者の記事がspaceweather.comに載っていました。あぁ、これやってみたかった!

20120606金星日面通過
太陽観測衛星SOHOのLASCOカメラでも、近かった様子をうかがい知る事ができました。下A−D画像はSOHOサイトからの引用で、3日UTから4日UTにかけて撮影されたC3カメラとC2カメラの画像。LASCOカメラは太陽を遮蔽板で覆っているため、中央に影ができます。今回金星が太陽にもっとも近かったときは、狭角写野であるC2カメラの遮光板にさえ隠された時間帯がありました。(E図は各カメラ写野と2020年の天体通過予報。)逆に見ると、「ほぼ影の面を向けている金星がこんなに輝いて写ってる」といった驚きもありますね。次回の「太陽にとても近い金星内合」は2028年6月1日です。

  • 20200603-0906UT_LASCO-C3


    3日9:06UT(C3)
  • 20200603-1624UT_LASCO-C2


    3日16:24UT(C2)
  • 20200604-2000UT_LASCO-C2


    4日20:00UT(C2)
  • 20200604-2342UT_LASCO-C3


    4日23:42UT(C3)
  • 2020SOHO-LASCOカメラ通過天体


    2020年天体通過予報


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