中国の月面探査と七夕のクレーター2019/02/17

中国命名の月面地物
中国が昨年2018年12月8日に打ち上げた月面探査船「嫦娥4号」は、今年1月3日に月の裏側へ軟着陸しました。生物実験などが行われ、話題になりましたね。技術の進歩はめざましいものがあります。

同機が探査しているエリアで五つの地物に付けられた名前がIAU(国際天文学連合)に認められたということで、実際にどの辺りなのか地図を描いて調べてみました。といっても地球からは見えませんので、あくまで地図上の探険です。

左図が軟着陸地点となった「カルマン・クレーター」を含む月面図。黄色字の地物名はIAU表記です。中国命名の五つの地名はピンク字で書いてあるところ。「天河」が着陸地かつ探査ベース基地となっています。

天の川を意味する天河を囲むように直径1kmから2km程度の三つのクレーターがあって、日本で言うところの「夏の大三角」を表すベガ、アルタイル、デネブの中国名が割りあてられました。(※各1等星の表記は中国版wikiで織女一河鼓二天津四および夏季大三角をご覧ください。)また近くの小さな山岳地にも中国名山のひとつ「泰山」の名が付けられました。

月面
月に定められた経度は、地球にもっとも近い地点が0°、つまり地球から見える「真ん中」を通る子午線です(→参考記事)。カルマン・クレーターは経度が180°にほぼ接しているので、本当に正反対側でした。ただし南緯45°付近ですから、かなり南寄りです。右図は地球から見て月の東側/三日月過ぎのころ光っている側を太陽方向から見た様子(Virtual Moon Atlasによる)。カルマン・クレーターはずいぶん南(下側)にあることが分かるでしょう。この図で左側近くの地形は地球から見ることができます。明日18日から明後日の満月に向かう月ではスミス海も見えるようです。(※今年スミス海付近を観察するには今よりも秋の上弦頃のほうが最適です。)

ちなみにカルマン・クレーターの名は、物理や航空、気象をかじった人にはお馴染み、カルマン定数とかカルマン渦列の「セオドア・フォン・カルマン」さんのこと。カルマンさんはジェット推進研究所 (JPL)の初代ディレクターを務め、いわば宇宙探査の礎を築いた人物です。中国宇宙開発の父と呼ばれる「銭学森」さんの師匠でもあり、今回の軟着陸はまさに由緒を尋ねる旅だったと言えましょう。

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