強風のなか2つの新天体を撮影 ― 2019/01/19
天体写真を撮影している人は大きくふたつのグループに分かれ、「鑑賞写真派」と「観測写真派」などと呼ばれます。もう少し正確に言うと、「写真撮影する場所や時間帯を自由に設定できる派」と「撮影場所や時間、機材を極力変えず、時には悪条件下でも撮影(=データ収集)する派」と言うことになるでしょう。私は両方カバーしてますが、実際はほぼ後者です。
17日夜は強風のためほとんど観察できなかったけれど、昨夜から今朝はほんの少しマシになったため、ふたつの天体を撮影しました。ただ、結局前夜と同程度の風(最大風速5m/s以上)だったので、撮影したコマ数の三分の二がブレまくって使いものになりませんでした。またどうにか点像になってくれたコマも、星の直径がいつもの二倍ほど膨らんでしまいました。
撮影したのは上のふたつの新天体。両方とも山形県の板垣公一さんによる発見です。NGC3254のほうは10日に発見され、現在は急増光中。上画像では14等前半になっています。1月11日の記事や、1月15日の記事と比較してみましょう。
いっぽうUGC7020という銀河に発見されたAT2019uoのほうは一昨日18日明け方に発見されたばかり。発見光度18.2等とのことから私の機材で強風の中撮影できるか心配でした。なんとか存在は写っているようです。機材の最微光星は口径で決まると一般に言われますが、この知識だけでは50点以下。実際はピントのシャープさ、大気の揺らぎの大きさ、カメラセンサーのピッチやS/N比、ガイド撮影の正確さなど多くの要素が絡みます。鑑賞写真派の方々なら「もっと風のない、空の良い日にシャープな画像を撮ろう」と考えますが、観測派の方々は一日でも多く一回でも多く状況を記録しようと考えます。どちらが良い悪いの話ではなくて、目的が異なるとアプローチも全く異なるという話。
私は何に属しているわけでも無く、報告義務も無く、ただ好きで彗星や新天体を撮り続けています。でも、これらの天体はひと晩見ないと、位置、光度、状態が変わってしまうため、「風や雲のない日だけ光害のない山に行ってひと晩のんびり撮影」する写真撮影とは全く違う状況。場合によっては普通撮影などしないような悪条件でも実施することがあります。緊張感がまるで違いますね。