21日宵はプラトーで“究極の”Ray現象2023/11/17

20230330月面
来週11月21日宵空の月面でひとつのRay現象が予想されています。ターゲットは有名なクレーターの「プラトー」。上弦は前日20日19:50ですから、当日は少し膨らんできた月が見えるでしょう。月面X地形やLOVE地形の出現は20日中に終わっていますから、プラトーRayの観察とはダブルブッキングしません。

当日と日照が似ている月面画像(2023.3.30撮影)左に示しましたので参考にしてください。ただし秤動は南に大きくズレているので、月面の北側にあるプラトー周辺はこの画像よりもっと南に寄っている(月の北極から離れている)ように見えるでしょう。現象時刻ごろのプラトーは周囲のクレーター壁のみ光って、内部は真っ暗に見えます。欠け際にあるクレーターの特定は思いのほか難しいですから、別のクレーターと見間違えないようご注意ください。

プラトーのクレーター壁はあまり凸凹がないように感じますが、それでも機械で削ったような平滑さはありません。ほぼ水平から太陽が照らすと、わずかな凹凸も強調されて長い影と長い光(Ray)を作り出します。いっぽう、それらを映すスクリーンとなるプラトーのクレーター底は、数あるクレーターのなかでも随一と言うくらい平坦です。つまり、ごく弱くて細いRayが遠くまで届くわけです。なおRay現象全般の解説は2022年4月11日記事をご覧ください。ちなみに左上画像のプラトーは一見して真っ暗に見えますが、既にRay現象が始まって随分経ち、クレーター底が半分ほど光で満ちています。Rayとはこれくらい暗くて見づらいものなのです。

広義のRay現象は、クレーター壁から漏れた光がクレーター底を照らしていればどんな状態でも良い(クレーターでなくてもよい)のですが、色々シミュレートしたところ、プラトーRayは独特の見え方をすることが分かりました。それは「本当の意味での光線になるかも知れない」ことです。Rayというくらいですから「一筋の光」に見えるのが理想(?)なのですが、実際はクレーター底で扇状に広がってしまいます。原理的に仕方の無いことなんですが、例えば「光が漏れる隙間が切り立っている」「クレーター底にセンターピークのような凹凸が全く無い」などといった条件が揃うと、ごく短時間でも「一筋の光」に近い見え方が期待できます。来週21日のプラトーRayはまさに理想的な状況なのです。

下に真上から見たシミュレート画像を4枚掲載しました。中央の“洞穴”がプラトー・クレーター。Ray現象は非常に暗いため、全体を明るく処理してあります。キャプションに書いてある時刻と角度は「プラトー中心から観測した太陽高度とその時刻JST」。A図の1.00°の段階で既にRay現象が始まっています。この極めて淡く細い状況が検出できる機材と観察スキルをお持ちなら是非挑戦してください。ただし地球から見たプラトーはこのシミュレート図より南北に潰れて見えるので、そのぶんRayの検出が難しくなりますからご注意を。

眼視で観測する場合はできるだけ倍率を上げ、月の明るい部分を視野外に出したほうが良いでしょう。またカメラ撮影や電子観望で記録するなら、時間前にプラトーを捕捉したあとゲインを過剰に上げるか露出を通常の3、4倍にのばして周囲が白飛びするギリギリを見極めてから適正条件を探ってみてください。おそらく最初はずっと暗いままですから、見た目で判断して待っていると、もう終わってしまいます。現象時刻は観測地の影響を受けません。下A図からB図の間で、できるだけスリムなRayを捉えてみてください。同時にピコ山などの長い影も楽しみましょう。晴れますように!

  • 20231121_180054プラトーRayシミュレート

    A.18:00:54(1.00°)
  • 20231121_182003プラトーRayシミュレート

    B.18:20:03(1.10°)
  • 20231121_183912プラトーRayシミュレート

    C.18:39:12(1.20°)
  • 20231121_185822プラトーRayシミュレート

    D.18:58:22(1.30°)


参考:
相変わらず雨雲の隙間から月と木星観察(2023/08/10)……下弦側の(一般的な)プラトーRay


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