かなり近くなった金星と木星2023/03/01

20230226-28金星と木星の移動
昨夕も金星と木星が美しく輝いていました。昼からの強風が収まらず、振動しまくりのベランダでの撮影は難儀しましたが、何とか記録できました。

左は26日から昨夕まで三日間、180mm+APS-Cの画角で狙ったものを恒星基準で合成したもの。画像上が概ね天頂方向で、かなりトリミングしてあります。また像面の歪みの関係で恒星位置がぴったり合わないため、できるだけ近くに配置してズレが目立たなくなるようにしました。

金星は下から上へ、木星は上から下へ移動しているのがよく分かりますね。それぞれの移動量や向きは、惑星ごとに異なる公転運動および視点である地球の運動を物語っている訳です。また木星周囲に微かに写っているガリレオ衛星も日々違う配置。これもまた面白い。

現代人の知識としてごく当たり前のことでも、自分の力だけで確かめたり追体験する機会は少ないでしょう。例えば今回の金星と木星の位置を測り、どういった運動を想定すればこの見かけの動きを説明できるかやってみた、と言う方はケプラーなどの時代以降ほとんどいらっしゃらないと思います。学者以外の一般市民にとって、特に学生時代を終えてしまったら「知っていても確かめない」というスタンスのほうが、私も含めて圧倒的多数派ですよね。こうした月惑星の接近現象から、あらためてたくさんのことを学び直すことができますよ。

20230228金星と木星
この機材とは別に2月16日宵から50mm+APS-Cで撮り続けているシーンもあります。接近離脱がひと通り落ち着いてから合成してみようと思います。

右は2月28日宵のみの様子。直前まで雲があって困り者でした。また航空機の往来が多く、撮影した1/3のコマのどこかに何かが写っています。似た時間に撮影していたので、日がどんどん長くなっていることを体験できました。

このあと火星に並んでいた月も観察したかったけれど、22時ごろまで待っても強風に阻まれたので断念しました。金星・木星の最接近まで残り二日です。お天気がどうなることやら…

【接近の周期性】
金星はおよそ8年周期で五つのパターンを繰り返すことが知られています(→2020年6月5日記事2021年4月26日記事2021年10月30日記事参照)。内外合時期や、宵の明星/明けの明星の移動などが概ね同じになるのです。これに加え、木星は約12年周期で公転しますから、両周期の最小公倍数である24年の周期で「似た時期に似た場所(星座背景)で金星と木星が接近する」のです。

最接近日時最接近離角
1903-01-31 13:01:43 JST0.686°
1927-02-06 04:17:37 JST0.569°
1951-02-12 03:53:09 JST0.392°
1975-02-18 05:27:29 JST0.155°
1999-02-24 04:40:46 JST0.133°
2023-03-02 14:03:44 JST0.489°
2047-03-08 18:44:32 JST0.883°
2071-03-15 09:59:18 JST1.336°
2095-03-22 04:04:34 JST1.827°

左表は1900年から200年ほどの間に起こる、今回と似たパターンの接近会合を拾い出したもの(日本経緯度原点での測心計算)。24年ごとに今回同様のシーズンに接近していますね。もちろんぴったりと言う訳ではなく、少しずつズレてしまいますが…。

1975年、1999年、そして今年の接近日をStellariumで描いて下に掲載しました(日本から宵に見た場合)。背景の星座や黄道、天の赤道の位置関係までそっくりなことが分かるでしょう。

中川昇さんがブログで48年前の接近を思い出したり、星の広場 HAL-Newsにて橋本秋恵さんが1999年のケースを語っていてシンクロしてて面白かったので、私もここに簡単にまとめてみた次第。私自身は1975年が星にのめり始まった頃、1999年は大忙しの社会人だった頃で、どちらも見ていたはずですが、ぼんやりとしか思い出せません。一生のうち二、三回しか見ることができない“似たような光景”…ある種のデジャブを鮮明に思い出せると言うことは実に素晴らしいと感じます。

  • 19750218金星と木星の接近

    A.1975年2月18日
  • 19990224金星と木星の接近

    B.1999年2月24日
  • 20230302金星と木星の接近

    C.2023年3月2日



元に戻りそうもない黒潮大蛇行2023/03/01

20230228-2100JSTひまわり画像(B7)
「黒潮大蛇行」の継続期間が歴代最長になった2022年4月からそろそろ1年が経ちます(→2022年3月26日記事参照)。大蛇行消失の兆しは一向に見えません。

偶然にも昨日は日本のほとんどの地域に厚い雲がかかってなかったため、夜になって海表温度の様子が気象衛星ひまわりからよく見えました(左画像・バンド7:画像元・RAMMB/画像処理・地図等は筆者)。四国や紀伊半島の南海域に、周囲より若干暗くなった海域が大きく広がっていますね。海域は八丈島あたりを巻き込み、房総半島にもかかっています。暗いというのはこの画像では「温度が低い」ことを示しています。暖かい海水を運ぶ黒潮が紀伊半島沖で大きく南下し、本州南岸に冷たい海の領域を作っているのです。また気象庁が公開している2022年12月までの「東海沖の黒潮流路最南下緯度」および「串本と浦神の潮位差」をグラフにしたので記事下に掲載しました。グラフを見る限り、当分のあいだ大蛇行は続きそうですね。

この蛇行は気象を変化させたり、漁場の場所や漁獲量に少なからず影響します。いつまでも元に戻らなければ、これが「普段の状態」となり、私たちもそれを受け入れて生活を変えてゆかなくてはならないでしょう。人間は生物としてこの程度は耐えられるレジリエンスを持ってはいますが、それでも思わぬ災害を生んだり経済を停滞させる原因になることはできるだけ避けたいもの。黒潮大蛇行は人間の手でどうにかなるものではありませんので、「万が一」を大きめに想定しておく必要があるのかも知れません。

  • 東海沖の黒潮流路最南下緯度

    A.東海沖の黒潮流路最南下緯度
  • 串本と浦神の潮位差

    B.串本と浦神の潮位差


今日の太陽2023/03/01

20230301太陽
昨夜は夜半まで風が残り、ようやく止んだと思ったら今度は雲が次第に厚みを増してしまいました。今日午前中も雲が残りましたが、午後は青空が戻りました。ただ今夜から明日にかけて少し雨が降るようです。

20230301太陽リム
左は13:20ごろの太陽。昨日見えてきた左上リム近くの黒点周囲は活動領域13239と採番されました。13234の大きな黒点はだいぶ右に近くなりましたね。この13234では2月28日17:50UT(3月1日2:50JST)にM8.6クラスフレアが発生し、地球磁場への影響が懸念されています。

右下グラフはNOAAによるX線フラックス。26日・27日に連続発生した13229の強いフレア同様、その後しばらくエネルギーの高い状態が続いています。前回の強いフレアはアメリカなどの低緯度(北緯40度あたり)でもオーロラが観測されたと言うことです。日本では北海道あたりの緯度ですから、タイミングとお天気次第では見えるのかも知れません。(【2日追記】2月28日に名古屋大学宇宙地球環境研究所の陸別観測所で低緯度オーロラの観測に成功したようです。陸別町銀河の森天文台でも撮影に成功したとのこと。)

20230301X線フラックス
右下リムの大きなプロミネンスがまだ見えていて驚きました。左上にも背の高い笹竹のようなプロミネンスが見えています。3月に入ってもまだまだ活発な状態が続いて嬉しい限り。

今日の太陽2023/03/02

20230302太陽
昨夕から今朝は曇り+強風。関東で春一番だったそうです。今日も雲が多く、太陽が南中する頃までは時々太陽観察可能な程度の青空も残っていたけれど、午後は皆曇+時々小雨。(県内の水戸市近辺では霰が降ったとのこと。)

おかげで昨夕から今日最接近時までの金星と木星の接近は見えずじまい。今夕までに回復が間に合いそうもない空模様…。まぁこれは天文現象あるあるですから、引き続きチャンスを逃さぬよう準備しておくだけですね。※ちなみに3月1日記事に掲載した過去の接近日における茨城県水戸市の天気は、1975年2月18日が晴れ、1999年2月24日が雨だったようです(gooサイト・過去の天気による)。

20230302太陽リム
左は11時過ぎの太陽。左側に活動領域がどんどん追加されており、小さな黒点を有する13240と13241が加わりました。更に今日は左端やや上リムのプラージュのところに目立つ黒点が見えてきました。昼時点ではまだ採番されていません。

南半球にはダークフィラメントが目立ちます。今後プロミネンスが期待できるかも。北極側高緯度にまたも立派なプロミネンスが出現しています。