赤い輝星の二等辺三角形、ふたたび!2023/03/12

20230311三つの輝星の三角形
昨年2022年初冬、火星が地球に接近する一ヶ月ほど前に火星・アルデバラン・ベテルギウスという三つの輝星が二等辺三角形を作ったことを覚えていらっしゃいますか?明るい火星を頂点とした美しい三角形だったので、少なからず注目を集めていたことでしょう。二等辺三角形にもっとも近くなったのは10月30日ごろでした(→解説は2022年10月18日記事参照)。

このとき実はアルデバラン・ベテルギウスからの等距離線上に火星が極めて近づいたものの、完全に乗ることは無かったため“二等辺三角形未遂”に終わりました。ですが、逆行運動していったん遠ざかったあと再び順行となり、現在は等距離線に近くなっています。今度こそ線上を通過しますから完全な二等辺三角形を作る瞬間があるのですが、その実現日時は一週間後の3月19日3:50。残念ながら日本の空から見えなくなった後の出来事になります。それでも3月18日宵空には赤くて明るい三つの星が作る美しいアステリズムを拝むことができるでしょう。

RST2022-2023
左上画像は昨夜11日夜に撮影したもの。火星は上辺やや左寄りの輝星で、すぐ上(北)にβTau(γAur/おうし座の角先の星)が輝いていました。右寄りにはアルデバランを含むヒアデス星団が見えます。右図は前出リンクに載せた火星の移動図ですので、画像と照らし合わせてみてください。

前回と違うところがいくつも見つかります。当然ながら火星位置は変わっているのですが、それよりも火星の明るさの違いに注目してみましょう。左上画像とほぼ同じ機材で撮影したショットが2022年10月21日記事内にあります。もしみなさんが前回撮影していたなら、同じ機材を使って撮影し、比較してみてください。アルデバランとベテルギウスそれぞれと比べ、順位を付けてみましょう。

前後数日は概ね二等辺三角形に見えると思いますが、現在の火星は結構な速さで東向きに移動しており、一週間もしたら違う形になってしまうでしょう。3月26日にはおうし座からふたご座へ移り、3月30日には散開星団M35に1°あまりまで接近します。見かけ視野が2°くらいの小型望遠鏡で見ると豪華な景色が楽しめそうですね。

20230312_22839月
昨夜はこの三角形観察後、日付が今日になってから南中を迎えつつあった月を観察。左は2:20ごろの撮影で、太陽黄経差は約228.39°、撮影高度は約37.92°、月齢19.43。日に日に南中高度が低くなるので望遠鏡設置場所探しに苦労します。花粉光環はひと晩前より淡くなりましたが、春霞は再び濃くなってしまいました。飛行機雲が消えないので、上空までしっかり湿っているのでしょう。薄い雲もあるようでした。ただ、シーイングは若干良かったようです。

明暗境界はポシドニウスやフラカストリウス、ピッコロミニ、ホンメルあたりまでやってきました。アルタイ断崖の武骨な感じがイイですね。ティオフィルスの月面グー・下弦バージョンが見えています(2019年12月7日記事参照)。 まだ早いと思っていたのに、よく見るとラモントがうっすら浮かんでいます。同様に2月28日記事で取り上げたバレンタイン・ドームも、弱々しいけれど陰影が出始めていました。バレンタイン・ドームは今夜のほうが見ごろの計算ですが、天気が下り坂です。

20230312_アインシュタイン付近
明るいリム側では、アインシュタイン・クレーターがかなり地球側を向いており、クレーター内のアインシュタインA・サテライトクレーターが白い楕円になって確認できます(右画像/左上画像からの切り出し)。今週いっぱいは見えそう。東の海もチラッと見えてますね。ゆっくり首を振りながら15日の下弦、22日の新月へと続きます。

20230312「月面に」
【付記】 リム沿いや明暗境界をじっくり観ていたとき、ひらがなの「に」に似た地形がありました(左画像)。ポシドニウスの南側、ル・モニエやリトロー、レーマーがあるあたりです。なかなか達筆だと思いました。

近くに代表点を設定して計算したところ、太陽高度は-0.13°。年内でこれに近い状態になる日時は以下の通りです。下弦に近いため夜半過ぎから明け方になりますが、機会があればご覧ください。
2023年5月10日 04:45、2023年7月8日 04:01、
2023年9月5日 02:06、2023年11月3日 02:04