地球最接近前夜のZTF彗星2023/02/01

20230201_ZTF彗星(C/2022 E3)
昨夕は雲が多く、月観察は諦めて仮眠をとりました。夜半頃起きてみると快晴。ZTF彗星(C/2022 E3)を観察すべく機材をセットしました。

2月最初に地球へ接近し、明るく見えるZTF彗星。具体的には2月2日2:56JSTごろに最接近(地心計算)、その約13.5時間前の1日13:30前後に(計算上の)光度ピークを迎えます。と言っても小数以下2桁や3桁より小さいレベルの比較ですから、該当日一日はほとんど変わらないと言って良いでしょう。

明け方近くまで月が残るようになったことと、月没前後に赤道儀のバランスウエイトが西側から東側へ通過する位置関係になるため状態によってバランスを崩しやすく、月明かりをできるだけ避けるタイミングに神経を使いました。(※回転モーメントのかかり方がガラッと変わるので、撮影は望遠鏡とウエイトの東西位置関係が変化しない時間帯にすべき。)また例のごとく尾の向きが急激に変わっており、構図決めもなかなか難題です。

左画像を見ると頭部は明るすぎて飽和し、イオンテイルは南南東向き、ダストテイルはイオンの向きから時計回りに110°くらい広がった扇型をしています。アンチテイル成分が意外なほど長くなっていて驚きました。

地球最接近の今夜から明日朝にかけてはイオンテイルの方向角が20°近く時計回りに回転するため、この画角では縦構図か横構図か悩ましいところ。画角を稼ぐのにあまり焦点距離を短くしすぎても彗星の迫力が半減してしまうし…。今夜から月明かりはほぼ避けられなくなりますから、月没の明け方まで待つことなく夜半前の南中頃に観察タイムを切り替えても良いかも知れません。ともあれ、一夜も見逃せませんね。

今日の太陽と2024年暦要項について2023/02/01

20230201太陽
昨夜半から明け方まで良く晴れていたのですが、いつもより湿度が高く、透明度もかなり落ちていることが気になっていました。案の定、朝から雲が広がって昼まで太陽観察はできませんでした。午後は快晴が戻りましたが、猛烈な強風となっています。

20230201太陽リム
左は13:30過ぎの太陽。小規模な活動領域が点在するものの、全体的に静穏です。プロミネンスやダークフィラメントは活発そうですね。右上リムのものはまだ継続中。左下リムにはかなり明るいプロミネンスが見え始めました。

20230201-96p
太陽観測衛星SOHOのLASCO-C3カメラに写っているマックホルツ第1彗星(96P)、今日夕方までに右画像のところまで進みました。一番上の彗星位置は15:54JST。かなり明るくなったようですね。尾の曲がり具合がえぐい…。明日2日UT中にこの写野から消え去る予定です。

【ギリギリ二十四節気と朔弦望】
現象日時JST
小寒2023-01-06 00:04:50
夏至2023-06-21 23:57:49
処暑2024-08-22 23:55:02
大雪2024-12-07 00:17:02
冬至2025-12-22 00:03:05
上弦2023-01-29 00:18:46
上弦2023-05-28 00:22:17
上弦2024-02-17 00:00:56
下弦2024-03-04 00:23:29
上弦2024-08-13 00:18:47
上弦2024-12-09 00:26:37

ところで、本日付け官報で国立天文台による2024年の「暦要項」が発表され、来年の日曜祝日や二十四節気などが固定されました(→国立天文台・暦要項)。

去年も2022年3月21日記事で少し触れたのですが、0:00JSTに近い現象がある場合、精度の悪い/揃わない計算で各個人や企業がそれぞれの暦を作ると日付が異なってしまうことがあるため、国としてきちんと管理し、毎年発表しているわけです。

2023年から2025年までの二十四節気と月位相の朔弦望について、0:00JSTプラスマイナス30分に発生するケースを自作プログラムにて計算、右表に書き出してみました。天文計算の“腕試し”として毎年の国立天文台発表値と合うかどうか挑戦するのも面白いですよ。今日発表された2024年2月17日の上弦などは本当にギリギリですから、高い計算精度が試されますね。(※暦要項では分の位までしか発表されません。秒以下はおそらく四捨五入でしょうか?)

処暑の日付変化
このギリギリ節気はしばしば「○○年ぶりに△△日」という現象を引き起こします。例えば来年の「処暑」は228年ぶりに8月22日となります(左図)。また右上表には入りませんでしたが「小暑」も2024年7月6日 23:20:03で日付境界にかなり近く、これまた7月6日になるのは228年ぶりのこと(→2021年1月24日記事参照)。見過ごしがちな節気や雑節も面白い話がたくさん転がっていますよ。

ZTF彗星が地球に最接近2023/02/02

20230202_ZTF彗星(C/2022 E3)
ZTF彗星(C/2022 E3)の地球最接近日がやってきました。昨夜から今朝にかけて予報されていた強風は微塵も吹かなかったのですが、ひっきりなしにやってくる雲に悩まされました。夜半前から狙っていましたが度々中断を余儀なくされ、都合三回に分けて撮影したもののうち一番雲の影響が少なかった2日0:46からの撮影が左画像です。このときの彗星移動速度は1000″/hを越えていました。

明け方近くまで月が沈まなくなったので月明かりと薄雲の影響があるものの、イオンテイルとダストテイルの様子を何とか記録できました。縦構図、横構図、斜め構図と色々試したものの、今回はひと晩前と同じこの構図に落ち着きました。イオンテイルが左下45°を向いているので縦でも横でも収まりが悪いですね。

今後彗星はぎょしゃ座やおうし座へ向かいます。カペラ、火星、アルデバランと次々に接近するので、探し出す目印になるでしょう。アルデバラン付近を通過する二週間後には2等級程度暗くなっていると思われますが、それでも双眼鏡彗星として立派な姿をしているはずです。宵空暗くなる頃にもう見えますので、晴れたら探してみてください。

20230201_13389月
夜半前は月光が望遠鏡に直接当たっていたので彗星撮影に不利と考え、建物に月が隠れるまでの間は月面を観察。右は1日21:40ごろの撮影で、太陽黄経差は約133.89°、撮影高度は約73.47°、月齢10.66。シーイングは最悪ちょっと手前くらいでした。虹の入り江がすっかり明るくなり、ケプラーやガッサンディ、シラーなどが朝を迎えています。南極域にスコットとアムンゼンが並んで見えていますよ。撮影中は気付きませんでしたが、この月はちょうど超新星レムナントSh2-240の領域内に鎮座していました。

4日後の明け方に今年最小(最遠)の満月を迎えます。昨夜の撮影でもかなり小さくて、ROI(撮影域)をひと回り縮めたほどでした。ただでさえ冬の満月は空高くから冷たい光を降り注ぎますので、心理的にも遠く感じるでしょう。

今日の太陽2023/02/02

20230202太陽
朝のうちやや雲があるものの透明度の悪い晴れ間が広がっていましたが、午後は一気に崩れてきました。週末にかけてすっきりしない天気が続く予報です。

20230202太陽リム
左は10:10過ぎの太陽。薄雲越しの撮影です。シーイングはかなり酷く、荒波越しに川底を見ているようでした。はっきり分かるような活動領域はありませんが、小黒点付きを含めて8ヶ所の活動領域があるようです。

細部がさっぱり分からないものの、右上にとても大きなプロミネンスが出ていました。昨日も見えた左上高緯度のプロミネンスも確認できます。

20230202-96p
太陽観測衛星SOHOのLASCO-C3カメラに見え始まって4日目のマックホルツ第1彗星(96P)。1日20:54UT(2日5:54JST)時点の画像まで合成したものが右画像です。本日夕方にはもう写野外に出てしまったかと思われます。短期間でしたが楽しませてもらいました。