久しぶりの月見と月縁地形の話 ― 2022/05/11
昨夕から宵にかけて淡い雲が流れていたものの、一時的な晴れ間がありました。頭上に差し掛かる月があまりに美しく、久しぶりでもあったので、思わず望遠鏡を組み立ててしまいました。
8日夕方に月面X&LOVE&国際宇宙ステーション通過という絶好のタイミングでしたが悪天、翌9日は月と太陽が同一日に同じ場所に輝く奇跡的な日(→2021年3月19日記事参照)でしたが更に悪天と、なかなか月イベントを拝むことができずにいたけれど、じっくり月面を眺めることができました。
左は20:20頃の撮影で、太陽黄経差は約106.77°、撮影高度は約61.61°、月齢9.62。シーイングは並程度でしたが、やや風が吹いていたため時折望遠鏡が揺れました。でも、既に梅雨入りしたかのような関東では貴重な一枚です。ちょうど毎月モニターしてきたピタトゥス・クレーター付近の日照もばっちり(下A画像)。直線壁やコペルニクス・クレーター(下C画像)なども朝を迎えていました。
月面の北寄りを広範囲に捉えた下B画像では、中央やや右下寄りのアペニン山脈に沿って細々とのびるハドレー谷が見え、その北にアポロ15号が着陸しています。またハドレー谷の南には「日本人の名前が付いた月面地形(→記事後半参照)」のひとつ、「Taizo」があります。極小の谷(窪地)のためこの画像から詳細は分かりませんが、位置の確認になりますね。
久しぶりの月面散歩、シーイングも落ち着いてきて気分が盛り上がりました。ところが気づくと雲が厚くなっていて月暈がかかっていました。当初今夜は雨予報だったのが曇り予報に上方修正。ですがやはりスッキリと晴れてくれないようです。
ところで、知人の中川昇さんのブログを通して、東田守生さんがまとめた「日本人の名前の付いたクレーター」が紹介されていました。大元は 「月探査情報ステーション」に掲載されたリストが発端とのこと。前々から自分でも情報整理しておきたかったことだけに、各サイトはとても参考になります。
このうち月の裏面で見えないものを除けば、(見易さはともかく)いずれも自分で観察可能な位置です。ただし「ヒラヤマ・クレーター」だけは月縁近くのため常時見えるわけではなく、オリエンタレ盆地内の「東の海」並に難易度が高い存在です。ではいつ見えるのでしょう?記事を拝見して気になりました。
私自身、直近では2021年12月12宵の撮影時に確認しました。(記事画像には「ナオノブ・クレーター」も写ってます。)それ以前も何回かあるけれど、鮮明だった記憶はありません。クレーターの見やすさは天文カレンダーに書いてあるわけではないため、自力で探る必要があります。表側で見やすい位置…例えば上C画像のコペルニクスのような場所なら何度か観察体験するうちに「上弦から〇〇日目ごろ」などと覚えられますし、天文年鑑などから余経度を計算し、明暗境界に達したかどうか容易に知ることもできるでしょう。でも月縁地形では体験の機会そのものが分からないですからね。それほど秤動の影響は複雑で深刻です。
私は自作プログラムを作り、見える見えないの判断をしています。理屈は単純で、左上図のなかの角P(観察者・対象地形・月心が作る角度)をベクトル計算します。この角度が90°より大きくなればなるほど観察者側の月中央に近づくわけです。もちろん観察日時に月が昇っていることや、対象地形に太陽光が当たっているかどうかも大事な条件。右下は昨夜の月と近い月相を比べた月の東側。書いてある角度Pはヒラヤマの値で、上下は正しく自転軸南北に合わせてあります。模様の違いに注目しましょう。2021年10月のほうはヒラヤマがギリギリ見えていますが、昨夜は見えませんでした。この角度Pは月の秤動(一般的な地心秤動ではなく測心秤動)や長周期軌道変化など全て織り込み済みで、観察者が地球のどこにいても、地球外を飛行していても、対象地形が何であっても、見える見えないの判断に使えて便利です。この角度計算は当サイトの月面X日照判断などにも応用しています。
参考値として2021年晩秋から初冬に見やすかった東の海と、2023年初めから2月末までに少し見やすくなるヒラヤマの角度Pをグラフ化してお見せしましょう。赤線は「角Pが93°以上」「観察地形に太陽光が当たっている」「月高度が10°以上」「太陽が沈んでいる」という4条件が揃ったところ。(※似た図は2021年12月24日記事にも掲載しています。)角度Pが小さいと潰れて面積体として認識できず、概ね92°以上、できれば93°くらいになれば探しやすくなります。ヒラヤマは2022年内ですと10月上旬から90°を越し始めますが、12月上旬までは92°を超えません。
また、東田さんのサイトに「満月直後にヒラヤマを捉えることができれば面白そう」とありましたので、これも条件に含めて計算してみました。記事末の表の通り、少ないけれど何件かありそうです。このタイミングでヒラヤマが見えれば僅かに影がある状態で観察可能かも知れません。ニッチな需要かも知れませんが「月縁を楽しみたい」「月の裏側をできるだけ見てみたい」と思う方もいらっしゃるでしょう。月縁にある全地形について角度Pを示せれば良いのですが膨大な量になるため、ある程度の目安を提示するアーカイブ作成を考えています。数少ないチャンスをものにしたいですね。
8日夕方に月面X&LOVE&国際宇宙ステーション通過という絶好のタイミングでしたが悪天、翌9日は月と太陽が同一日に同じ場所に輝く奇跡的な日(→2021年3月19日記事参照)でしたが更に悪天と、なかなか月イベントを拝むことができずにいたけれど、じっくり月面を眺めることができました。
左は20:20頃の撮影で、太陽黄経差は約106.77°、撮影高度は約61.61°、月齢9.62。シーイングは並程度でしたが、やや風が吹いていたため時折望遠鏡が揺れました。でも、既に梅雨入りしたかのような関東では貴重な一枚です。ちょうど毎月モニターしてきたピタトゥス・クレーター付近の日照もばっちり(下A画像)。直線壁やコペルニクス・クレーター(下C画像)なども朝を迎えていました。
月面の北寄りを広範囲に捉えた下B画像では、中央やや右下寄りのアペニン山脈に沿って細々とのびるハドレー谷が見え、その北にアポロ15号が着陸しています。またハドレー谷の南には「日本人の名前が付いた月面地形(→記事後半参照)」のひとつ、「Taizo」があります。極小の谷(窪地)のためこの画像から詳細は分かりませんが、位置の確認になりますね。
久しぶりの月面散歩、シーイングも落ち着いてきて気分が盛り上がりました。ところが気づくと雲が厚くなっていて月暈がかかっていました。当初今夜は雨予報だったのが曇り予報に上方修正。ですがやはりスッキリと晴れてくれないようです。
ところで、知人の中川昇さんのブログを通して、東田守生さんがまとめた「日本人の名前の付いたクレーター」が紹介されていました。大元は 「月探査情報ステーション」に掲載されたリストが発端とのこと。前々から自分でも情報整理しておきたかったことだけに、各サイトはとても参考になります。
このうち月の裏面で見えないものを除けば、(見易さはともかく)いずれも自分で観察可能な位置です。ただし「ヒラヤマ・クレーター」だけは月縁近くのため常時見えるわけではなく、オリエンタレ盆地内の「東の海」並に難易度が高い存在です。ではいつ見えるのでしょう?記事を拝見して気になりました。
私自身、直近では2021年12月12宵の撮影時に確認しました。(記事画像には「ナオノブ・クレーター」も写ってます。)それ以前も何回かあるけれど、鮮明だった記憶はありません。クレーターの見やすさは天文カレンダーに書いてあるわけではないため、自力で探る必要があります。表側で見やすい位置…例えば上C画像のコペルニクスのような場所なら何度か観察体験するうちに「上弦から〇〇日目ごろ」などと覚えられますし、天文年鑑などから余経度を計算し、明暗境界に達したかどうか容易に知ることもできるでしょう。でも月縁地形では体験の機会そのものが分からないですからね。それほど秤動の影響は複雑で深刻です。
私は自作プログラムを作り、見える見えないの判断をしています。理屈は単純で、左上図のなかの角P(観察者・対象地形・月心が作る角度)をベクトル計算します。この角度が90°より大きくなればなるほど観察者側の月中央に近づくわけです。もちろん観察日時に月が昇っていることや、対象地形に太陽光が当たっているかどうかも大事な条件。右下は昨夜の月と近い月相を比べた月の東側。書いてある角度Pはヒラヤマの値で、上下は正しく自転軸南北に合わせてあります。模様の違いに注目しましょう。2021年10月のほうはヒラヤマがギリギリ見えていますが、昨夜は見えませんでした。この角度Pは月の秤動(一般的な地心秤動ではなく測心秤動)や長周期軌道変化など全て織り込み済みで、観察者が地球のどこにいても、地球外を飛行していても、対象地形が何であっても、見える見えないの判断に使えて便利です。この角度計算は当サイトの月面X日照判断などにも応用しています。
参考値として2021年晩秋から初冬に見やすかった東の海と、2023年初めから2月末までに少し見やすくなるヒラヤマの角度Pをグラフ化してお見せしましょう。赤線は「角Pが93°以上」「観察地形に太陽光が当たっている」「月高度が10°以上」「太陽が沈んでいる」という4条件が揃ったところ。(※似た図は2021年12月24日記事にも掲載しています。)角度Pが小さいと潰れて面積体として認識できず、概ね92°以上、できれば93°くらいになれば探しやすくなります。ヒラヤマは2022年内ですと10月上旬から90°を越し始めますが、12月上旬までは92°を超えません。
また、東田さんのサイトに「満月直後にヒラヤマを捉えることができれば面白そう」とありましたので、これも条件に含めて計算してみました。記事末の表の通り、少ないけれど何件かありそうです。このタイミングでヒラヤマが見えれば僅かに影がある状態で観察可能かも知れません。ニッチな需要かも知れませんが「月縁を楽しみたい」「月の裏側をできるだけ見てみたい」と思う方もいらっしゃるでしょう。月縁にある全地形について角度Pを示せれば良いのですが膨大な量になるため、ある程度の目安を提示するアーカイブ作成を考えています。数少ないチャンスをものにしたいですね。
【満月直後にヒラヤマ・クレーターが見えるタイミング・2022-2031年調べ】
日時(JST) | 角度P (90°=月縁) | 月太陽黄経差 (180°=満月) | 月高度 | 太陽高度 |
---|---|---|---|---|
2022年11月8日 21:00 | 91.35° | 180.47° | 52.06° | -52.68° |
2023年11月27日 19:00 | 92.07° | 180.38° | 31.34° | -30.30° |
2025年2月12日 23:00 | 91.36° | 180.05° | 66.07° | -64.59° |
2026年3月3日 21:00 | 91.50° | 180.19° | 39.96° | -41.00° |
2027年5月20日 20:00 | 90.52° | 180.01° | 10.50° | -14.21° |
2029年7月25日 23:00 | 91.33° | 180.21° | 35.43° | -33.70° |
2030年8月13日 20:00 | 91.75° | 180.14° | 19.88° | -16.72° |
2030年10月11日 20:00 | 91.73° | 180.11° | 37.34° | -34.71° |
2031年10月1日 4:00 | 90.77° | 180.02° | 19.99° | -20.10° |
2031年10月30日 18:00 | 92.01° | 180.74° | 14.53° | -15.06° |
- 自作プログラムによる計算です。観察地は日本経緯度原点設定。
- 1時間おきに角度Pその他の条件を検査しています。角度Pが90.5°以上のみに限定しました。
- 前後1時間程度はあまり条件が変わらず観察可能と思われます。
- 秤動の都合で、早い時間ほど有利、日本の西側ほど有利。
今日の太陽 ― 2022/05/11
今日は一日曇り予報。実際、朝からずっと雲の多い空でした。ところが夕方強い西日が差していることに気づいてびっくり。つい1時間前は雲だらけだったのに…。だいぶ低空ではありましたが、フィラメントやプロミネンスが多くなってますので撮影することにしました。
左は16:20頃の太陽。中央を過ぎた南半球の活動領域13006で、昨夜22:55をピークとするX1.51クラスフレアが発生しました。今日はおとなしいですね。代わりに(?)左の13007が異様に明るかったです。この状態でC4.5クラス。もっとありそうな雰囲気ですが…。なかなかMクラスやXクラスに巡り会えません。でも太陽活動はこれからですね。
昨日右下に見えたプロミネンスは無くなりましたが、別のフィラメントが顔を出し、右リムは豪華な光景が続いています。もう一週間くらい続きそう。今日みたいに少しでも晴れ間があると楽しいのですが…。
左は16:20頃の太陽。中央を過ぎた南半球の活動領域13006で、昨夜22:55をピークとするX1.51クラスフレアが発生しました。今日はおとなしいですね。代わりに(?)左の13007が異様に明るかったです。この状態でC4.5クラス。もっとありそうな雰囲気ですが…。なかなかMクラスやXクラスに巡り会えません。でも太陽活動はこれからですね。
昨日右下に見えたプロミネンスは無くなりましたが、別のフィラメントが顔を出し、右リムは豪華な光景が続いています。もう一週間くらい続きそう。今日みたいに少しでも晴れ間があると楽しいのですが…。