台風連鎖は930時間に及ぶ2018/08/25


2018年台風連鎖タイムチャート
日本を襲ったダブル台風のうち、台風20号は24日15時に、また台風19号は25日3時にそれぞれ温帯低気圧に変わり、台風活動を終えました。この間西日本では記録的短時間大雨が続出、また台風の東側から南風の流入で北陸を中心にフェーン現象が起こり、これまた記録的な高温となりました。

8月20日の記事で取り上げた台風連鎖、すなわち『気象庁・台風監視区域のなかに一度も途切れることなく台風が連鎖的に発生・存在する』状態は今朝いったん途切れましたので、今回は930時間の記録となりました(左図)。速報値ではありますが、台風記録が残る1951年以降では1997年の990時間に次ぐ歴代2位の長時間となります。

2016-2018・7月下旬-8月中旬SST
現在は一時的に台風が無い状態ですが、ダブル台風活動中から台湾付近に熱帯低気圧がふたつもあったので、「太平洋は静穏だ」とは言いがたいです。ちょうど今日ハワイに最接近しているハリケーンLANEも健在です。

海水温が27度以上だと台風が生まれやすい、と良く言われます。右は気象庁サイトからの引用で、2016年から今年まで3年間の、7月21日・8月1日・8月11日・8月21日各日における海面水温(SST)マップ。縦横比較しながら観ると、この時期の海面水温分布が年によって結構違うことが分かるでしょう。今年は想像するほど30度域が北上していないことも見て取れます。

ニュースでは台風の数ばかり話題になりますが、発達や衰退の規模まで良く見ないと真実は見えてきません。一例ですが、台風蓄積エネルギーの指標とされるACE(Accumulated Cyclone Energy)を1997年台風連鎖および2018年台風連鎖を構成した各台風で計算してみました(下図棒グラフ)。併せて寿命も折れ線グラフにしてあります。

見比べると、連鎖時間は近いのに構成台風の性質はかなり違っていると分かるでしょう。今年のケースは数が多い割に蓄積エネルギーが小さい傾向でした。総数が多かったからたまたま連鎖したのであって、各台風が全て強烈だったわけではないようです。ただし極端に短命だったというわけでもありません。エネルギーが高くない理由は「短命だから」ではなく「風速が弱いから」ということです。ざっくり言うなら「今年の連鎖は、あまり発達しないままノロノロと過ごす台風が多かったため」という解釈ができるでしょう。

秋以降はエルニーニョが復活する予報なので、また少し状況が変わるでしょうか。気象現象はあれこれたくさんの要素が絡み合って複雑ですね。

  • 1997年台風連鎖

    1997年台風連鎖時の
    各台風ACE値と継続時間
  • 2018年台風連鎖

    2018年台風連鎖時の
    各台風ACE値と継続時間


参考:
アーカイブ:台風による月間ACE値の一覧
アーカイブ:記録的短時間大雨情報のリスト

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