冷たい宵のお月見2023/12/23

20231222クラヴィウス、ロンゴモンタヌス、ティコ
昨宵は月面N&I地形と月面ス地形が見える日。夕方一時的に雲が湧いたものの、薄暮とともに解消。でも風が強かったため、時々望遠鏡が大きく揺さぶられました。日没前後の数時間で気温が3度も下がってしまい、途中でピントを合わせ直したほどでしたが、2時間のお月見のあいだ、シーイングは後半ほどみるみる良くなり驚きました。撮影したうち4枚+α掲載します。

左画像は18:30ごろの月面南部。見慣れた光景ですが、ロンゴモンタヌスのすぐ西にカタカナの「ス」のように光る地形が見えます。秤動はやや不利で少し歪んでいますが、月面ス地形は結構大きいので見やすいですね。クラヴィウスやモレトスなど、まだ南北に潰れているけれど、少しずつ復旧しています。ティコの光条はまだ感じられません。シュテフラー付近の模様がティコの光条の一部です。

下A画像はコペルニクス北側に見える月面N&I。周辺が明るいため文字らしく見えませんが、位置さえ知っていればすぐ分かるでしょう。ホルテンシウスのドーム群がぎりぎり明暗境界に顔を出しています。熱の入り江をはさんだ東側にある「グルイテュイゼンの月面都市」もかろうじて陰影が残っていて辿れます。冬の空なのにボーデ谷が写ってびっくりでした。

下B画像はA画像の北側、雨の海付近です。かなり見辛いけれど、ランバートの北側あたりに溶岩流が確認できますね。大気全体はかなり揺れていたけれど、アルキメデス内・直径2km以下の小クレーターも見えていたので、それなりにシーイングの良い時間が多めに含まれていたのでしょう。アペニン山脈は20日宵にアンペール山の二つ星を確認した地域。どの山が“星”になっていたのか、ぜひ特定してみてください。ハドレー谷など、山脈周囲を走る谷も良く見えます。

下C画像は南半球、雲の海付近。前夜にRay現象を見せてくれたピタトゥスとヘシオドスのペアが良く見えていますね。Rayが差し込んだ谷も確認できるでしょうか。前夜は全く写らなかったバート谷がしっかり写りました。同一機材なのにシーイング次第でこうも違うのかとあらためて感じます。ブリアルドゥス周囲の山麓も遠くまで広がっています。キースやカプアヌス近くにある幾つかのドームも確認できるでしょう。250km以上ものびるヘシオドス谷もお見事。

20231222ブリアルドゥスの橋
ブリアルドゥスから北西に向かって浅くて幅のある谷状地形(=ブリアルドゥスW)が伸びています。途中に谷を横切るような地形があって、通称「ブリアルドゥスの橋」と呼ばれます。もちろん「オニール橋」同様、実物の橋が架かっているのではなく、橋のように見えるという見かけ上の話。「月世界への招待」サイトの東田さんがブリアルドスの項に書かれているように「月面ウォッチング」(地人書館)の「月50景」で紹介されているのは右画像の赤矢印のところと解釈できます。幅広で川面に近い、いわゆる潜水橋(沈下橋)タイプですね。ところが海外サイトでは青矢印のほうを紹介していることが少なくありません。こちらは幅が狭く高さのある、桁橋やアーチ橋タイプに見えます。BridgeではなくCauseway(土手道)と表現している場合もあります。

これが誤りなのか意図的なのか分かりませんが、青矢印のほうも間違いなく橋に見えますね。「ブリアルドゥスWの橋」と言い出した原点は不明ですが、誰ともなく言い出したことならどちらでも構わないですし、両方認めてしまっても構わないと思います。私個人としては赤矢印のほうを強く推します。高さが無いぶんなかなか見えず、貴重に感じるからです。いずれにせよ赤矢印のほうは謎めいた地形で、どういった成り立ちなのか今も議論が続いているようです。

  • 20231222コペルニクス、エラトステネス、アペニン山脈

    A.月面N&I地形
  • 20231222雨の海、アルキメデス、アペニン山脈

    B.雨の海付近
  • 20231222ブリアルドゥス、ピタトゥス、直線壁

    C.雲の海付近


20231222フンボルト付近
【追記】 秤動の変化で、月面南東付近が次第に地球側へ向いてきました。ここ二日ほどはフンボルトも見えるようになりました。ただ、明るい側ですから細部がよく分かりません。この辺りはちょうど今月の満月前後に最大秤動となるため、2023年11月28日記事で検証したフンボルト連鎖クレーターが見やすくなるだろうと思います。

左画像は昨宵に写したもの。明暗を浮き立たせて連鎖クレーター(赤矢印の間)が見えるかどうか試してみました。残念ながらこの位相の順光では全く分かりません。やはり影が出ないと無理なのでしょう。「何かあるかも?」と心の目で見れば断片的な形状が見えなくも無いですが…。クリスマス過ぎまで待つとしましょう。

なお日周秤動の足し引きがあるため、東リム側の地形はなるべく東の空、また西リムの地形は西の空で観察すれば、更に見やすくなるでしょう。


コメント

トラックバック