木星の衛星が正三角に並びました2023/10/30

20231029木星と衛星たち
昨夕は木星の四大衛星のうち三つ(イオ・エウロパ・カリスト)が極めて正三角形に近い形に並ぶ予報を出していました(→2022年10月1日記事参照)。夕方の時点でかなりの雲があったものの、現象時刻21時半ごろには快星になりました。

雨の心配はなさそうだったため早くから機材をセットし、外気に慣らしておきました。20時台から観察を始めたのですがシーイングは非常に悪く、ときどき木星の模様が消失するほどの状態。現象時刻プラスマイナス15分ほど撮影したけれど、木星の模様抽出はなかなか困難です。

左画像は現象時刻(21:30:39/もっとも離角が揃うタイミング)に近い21:30:42を中心としてデローテーションした画像。取りあえず速報版としての簡易処理です。現象時刻の衛星離角は50.13″角・50.95″角・50.03″角。3つの離角の標準偏差(母標準偏差)が0.415という驚異的な揃い方です(左下図参照/標準偏差0なら完全な正三角形)。三角に並ぶだけならかなりの頻度で発生するけれど、標準偏差1を下回るような「準正三角形」になることは滅多にないので、実に貴重な体験でした。写真に撮れたことよりも、リアルタイムで直に観察できた感動は何百倍も大きいものです。(追記:GIF動画も作ってみました。衛星や木星表面の動きが分かります。右下画像をクリック再生してください。)

20231029jovians
滅多にないと言いながらも来月11月14日20:37:03には偏差0.668、来年2024年1月28日20:23:38には今回より小さい0.240というチャンスが立て続けに巡ってきます。今回見逃した方はぜひご覧ください。なおトビラの画像は改善の余地があるので、うまく処理できれば後日入れ替えたいと思います。(※10/31昼:トビラ画像入れ替えました。初期画像より多少改善されたと思われますが、これ以上拡大するとかなりの悪像です。)

20231029ガリレオ衛星の準正三角形イベント
このほかすぐ近くに並んでいた月面も撮影したのですが、高い位置にも関わらず木星撮影時より荒れていました。どうしたことか、焚き火越しに見ているような見え方でした。何枚か撮影した月面拡大から欠け際の4シーンを掲載。

下A画像はもっとも東寄りに見えたスミス海。半分以上影に隠れていました。広いエリアなので、海と言えど起伏に富んでいますね。北側に縁だけ点々と光っているクレーターはネパー。また手前に明るく見えるのはラングレヌス。その南のラメは猫の肉球スタンプのように見えます。下B画像は北東縁に見えたフンボルト海。ここも日没を迎えていました。手前にエンディミオンやアトラス、ヘルクレスが見えます。下C画像はフンボルト・クレーター付近。ペタヴィウスやフルネリウスも見えます。この角度から見ると、陰影が少ないにも関わらずスネリウス谷がしっかり見えるのには驚かされます。下D画像は南の海の方向を見たシーン。実は私たちが「南の海」と言っているエリアは良く見えるシーズンでもこの海全体の1/3程度。月の裏側のほうが広範囲です。しかも豊の海や静かの海などと違い、クレーターが多いためあまり海と言う感じがしません。画像リム近くの大きなクレーターはリヨ。明るくて分かりづらいけれどレイタ谷やジャンセンもしっかり写っています。左下ぎりぎりにはブサンゴやヘルムホルツも見えています。

  • 20231030スミス海、ラングレヌス

    A.スミス海
  • 20231030フンボルト海、エンディミオン、アトラス

    B.フンボルト海


  • 20231030フンボルト、ペタヴィウス

    C.フンボルト
  • 20231030南の海、ジャンセン、リヨ

    D.南の海


参考:木星の衛星配列に関する記事
ガリレオ衛星が狭い範囲に並ぶ(2023/09/26)
久しぶりに木星衛星がきれいな三角を作る(2023/09/10)
再びきれいな三角形に並んだガリレオ衛星たち(2022/11/19)
きれいな三角形を作ったガリレオ衛星たち(2022/10/01)


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