ガリレオ衛星が狭い範囲に並ぶ ― 2023/09/26
昨夕は雨雲が湧き、近隣の街ではレーダーに僅かに写る降雨もありました。夜半前には回復してきましたが、月はもう隣家の屋根にかかって見えません。仕方がないので未明の木星でも観ようと望遠鏡を外気に慣らしておきました。
シーイングは最初かなり乱れており薄雲も頻繁に通過したものの、夜半から1時間ほど経つとだいぶ落ち着いてきて観察や撮影がしやすくなりました。撮像範囲を最大にしてみるとガリレオ衛星が四つ全て収まり、珍しいこともあるもんだと記念撮影(左画像)。左から右へエウロパ、ガニメデ、カリスト、イオ。ちょうど大赤斑も見えて、いかにもな木星の家族写真になってくれました。もちろん木星単体でも撮影しました(右下画像)。夏の頃より大きいのに細部が見えなくなりましたねぇ…。
四つの衛星すべてがまとまって見えた経験が少ないため、部屋で画像処理を進めつつプログラムを作り、「全ガリレオ衛星が狭い範囲にまとまる日時」を計算してみました(記事下表)。いちおう木星が見やすい時期に限定するため、西矩から衝を経て東矩に至る期間に限定し、今期と来期のみの計算です。
でも考えてみると、衝のころは地球と木星との距離が近いため木星視直径が大きく見えるのと同じ理屈で、衛星軌道も大きくなってしまう…つまり木星に対する各衛星の東方/西方最大離角が大きくなってしまいます。従って離角を閾値で区切る探し方では衝付近が不利になってしまうのです。そこで、「四つのうち一番離れている二衛星の離角が木星視直径(赤道直径)の4倍以下」という探し方をしてみました。もともと惑星観察は望遠鏡を使いますから、「狭い範囲にまとまってる」という感じ方も観察者や観察倍率によって個人差がありますからね。
下表を見ると、今期の最後に出ている2024年1月3日宵はかなり狭いですね。ただ18時前から20時過ぎまではエウロパが木星に重なり、21時ごろからイオとガニメデが食になるなど、状況はかなり複雑です。四つ全てが見えるのは17:52ごろで、このときエウロパが木星前面通過開始直前とガニメデが木星による掩蔽から出現するのが同時に起こります。木星円周に衛星が二つくっついて見える感じですね。最も離れているイオとカリスト間は約92秒角。少なくとも今日未明よりはずっと近いのです。
20年間ほど先まで計算してみると、意外にも100秒角を下回るようなケースは非常に稀でした。これは狭そうだと思ってシミュレーションソフトで見てみると食や掩蔽が重なって四つ全てが揃っていないことも。まともに見えそうなのは左図に示した2029年5月16日19:40ごろの接近(Stellariumによる描画)。これは四大衛星が木星赤道直径の2.126倍内に収まり、極めてコンパクトですね。更に面白いケースだと、2040年2月26日22時ごろに密集し過ぎて「カリストだけ」になってしまう状況が発生します。イオが木星前面を通過、エウロパとガニメデは木星背面に隠れてしまうんです。木星がないものとして衛星のみの最大離角を計算すると41.63秒角で、これはなんと木星赤道直径43.76秒角を下回っています。
下表の計算にあたっては食や掩蔽のケースは除外してませんので、観察する場合は事前にシミュレートしてから取り組んでください。食・掩蔽も一緒に観察したり、大赤斑や衛星の影の通過も併せて総合的に楽しみましょう。 木星一家のせわしない動きを直に感じ取れること請け合いです。
シーイングは最初かなり乱れており薄雲も頻繁に通過したものの、夜半から1時間ほど経つとだいぶ落ち着いてきて観察や撮影がしやすくなりました。撮像範囲を最大にしてみるとガリレオ衛星が四つ全て収まり、珍しいこともあるもんだと記念撮影(左画像)。左から右へエウロパ、ガニメデ、カリスト、イオ。ちょうど大赤斑も見えて、いかにもな木星の家族写真になってくれました。もちろん木星単体でも撮影しました(右下画像)。夏の頃より大きいのに細部が見えなくなりましたねぇ…。
四つの衛星すべてがまとまって見えた経験が少ないため、部屋で画像処理を進めつつプログラムを作り、「全ガリレオ衛星が狭い範囲にまとまる日時」を計算してみました(記事下表)。いちおう木星が見やすい時期に限定するため、西矩から衝を経て東矩に至る期間に限定し、今期と来期のみの計算です。
でも考えてみると、衝のころは地球と木星との距離が近いため木星視直径が大きく見えるのと同じ理屈で、衛星軌道も大きくなってしまう…つまり木星に対する各衛星の東方/西方最大離角が大きくなってしまいます。従って離角を閾値で区切る探し方では衝付近が不利になってしまうのです。そこで、「四つのうち一番離れている二衛星の離角が木星視直径(赤道直径)の4倍以下」という探し方をしてみました。もともと惑星観察は望遠鏡を使いますから、「狭い範囲にまとまってる」という感じ方も観察者や観察倍率によって個人差がありますからね。
下表を見ると、今期の最後に出ている2024年1月3日宵はかなり狭いですね。ただ18時前から20時過ぎまではエウロパが木星に重なり、21時ごろからイオとガニメデが食になるなど、状況はかなり複雑です。四つ全てが見えるのは17:52ごろで、このときエウロパが木星前面通過開始直前とガニメデが木星による掩蔽から出現するのが同時に起こります。木星円周に衛星が二つくっついて見える感じですね。最も離れているイオとカリスト間は約92秒角。少なくとも今日未明よりはずっと近いのです。
20年間ほど先まで計算してみると、意外にも100秒角を下回るようなケースは非常に稀でした。これは狭そうだと思ってシミュレーションソフトで見てみると食や掩蔽が重なって四つ全てが揃っていないことも。まともに見えそうなのは左図に示した2029年5月16日19:40ごろの接近(Stellariumによる描画)。これは四大衛星が木星赤道直径の2.126倍内に収まり、極めてコンパクトですね。更に面白いケースだと、2040年2月26日22時ごろに密集し過ぎて「カリストだけ」になってしまう状況が発生します。イオが木星前面を通過、エウロパとガニメデは木星背面に隠れてしまうんです。木星がないものとして衛星のみの最大離角を計算すると41.63秒角で、これはなんと木星赤道直径43.76秒角を下回っています。
下表の計算にあたっては食や掩蔽のケースは除外してませんので、観察する場合は事前にシミュレートしてから取り組んでください。食・掩蔽も一緒に観察したり、大赤斑や衛星の影の通過も併せて総合的に楽しみましょう。 木星一家のせわしない動きを直に感じ取れること請け合いです。
【全ガリレオ衛星が狭い範囲にまとまる日時】
| 西矩:2023年8月7日9:02:50 から 東矩:2024年1月27日16:18:28 まで(衝:2023年11月3日14:02:26) | ||||
|---|---|---|---|---|
| 区間開始日時(JST) | 区間終了日時(JST) | 区間中の最小離角日時 | 衛星間最大離角(秒角) | 木星視直径(秒角) |
| 2023年8月6日 23:40 | 8月7日 3:00 | 8月6日 23:40 | 151.9 | 40.5 |
| 9月25日 20:30 | 9月25日 22:30 | 9月25日 20:30 | 164.4 | 47.1 |
| 10月21日 4:00 | 10月21日 5:40 | 10月21日 5:10 | 186.0 | 49.2 |
| 11月24日 16:30 | 11月24日 16:50 | 11月24日 16:30 | 188.3 | 48.6 |
| 12月9日 18:40 | 12月10日 2:30 | 12月9日 22:00 | 86.3 | 47.0 |
| 2024年1月3日 16:40 | 1月4日 0:30 | 1月3日 19:40 | 51.4 | 43.6 |
| 西矩:2024年9月12日19:52:47 から 東矩:2025年3月3日3:18:36 まで(衝:2024年12月8日 5:58:00) | ||||
| 区間開始日時(JST) | 区間終了日時(JST) | 区間中の最小離角日時 | 衛星間最大離角(秒角) | 木星視直径(秒角) |
| 2024年9月11日 23:20 | 9月11日 23:30 | 9月11日 23:20 | 153.7 | 39.8 |
| 10月23日 0:00 | 10月23日 0:40 | 10月23日 0:10 | 176.3 | 45.0 |
| 10月24日 5:10 | 10月24日 5:50 | 10月24日 5:50 | 170.8 | 45.2 |
| 11月17日 19:00 | 11月17日 20:10 | 11月17日 19:00 | 169.9 | 47.6 |
| 12月12日 23:40 | 12月13日 3:30 | 12月13日 1:10 | 164.9 | 48.1 |
| 12月30日 0:00 | 12月30日 4:00 | 12月30日 4:00 | 80.4 | 47.2 |
| 2025年1月6日 2:10 | 1月6日 3:30 | 1月6日 3:30 | 148.0 | 46.6 |
| 1月6日 16:40 | 1月6日 17:20 | 1月6日 16:40 | 181.9 | 46.5 |
| 1月14日 16:50 | 1月14日 18:50 | 1月14日 17:20 | 138.4 | 45.7 |
| 2月17日 19:50 | 2月18日 0:40 | 2月18日 0:40 | 90.6 | 41.1 |
| 2月24日 19:20 | 2月25日 0:10 | 2月25日 0:10 | 110.3 | 40.2 |
- 自作プログラムによる概算です。観測地設定は日本経緯度原点。
- 衝と矩の日時は黄道座標系での計算です。
- 西矩→衝→東矩の期間のうち、太陽高度が0°未満、木星高度が10°以上、四大衛星で最も離れている衛星間離角が木星視直径の4倍以下という条件を満たす日時をひと晩(日没から翌朝の日出まで)ごと、10分おきに探しました。
- 10分間隔の計算にわずかしか引っかからない区間は省きます。
- 木星に衛星が重なるケース(前面通過または掩蔽)、および木星の影に隠されるケース(食)では実際の観察で四つ全てが揃って見えないことがあります。この計算ではそれらを除外していませんのでご了承ください。
- 四つの衛星が全て木星の片側に揃ってしまうケース(例えば上記2024年12月30日明け方など)も除外していません。これはこれで珍しいかも。



