厚い雲越しに見えた半影月食2023/05/06

  • 20230506半影食1

    A.半影月食開始の約20分前
  • 20230506半影食2

    B.半影月食最大の約30分後

昨夕は晴れ間があったものの、夜が更けるとともにどんどん雲が多くなりました。明け方の半影月食もダメそうでしたが雨が降るほどでもないので、せめて直前の月の様子はみておきたいと準備。とにかく風が強過ぎて(夜通し6m/s超え!)屋外に望遠鏡を出せる状況では無かったため、室内に双眼鏡と高倍率デジカメをセットしておきました。

辛抱して雲の薄いところから見える月を探し、何百枚かシャッターを切りました。上画像は日付が6日に変わる直前の月と、半影月食の最中の月。かなり厚い雲でしたが、15-20枚ほどコンポジットして何とか見られる画像に仕上げました。ボロボロの画質ながら、半影でしっかり暗くなってる様子が分かりますね。強いコントラストを付けるつもりは無かったけれど、雲に覆われて模様すら曖昧な画像だったため、地形を抽出する過程でおのずと半影が暗くなってしまいました。暗くなってる様子は肉眼でも分かりました。

天気が崩れる前に見えて本当に良かった…。10月の部分月食も晴れを期待しましょう。

【月食の程度】
見かけの形が円で代用できる天体Aが別天体(または別天体の影)Bに隠される(掩蔽または食)とき、隠された程度を示す数値として「食分」というものがあります。互いの中心や縁までの長さを使って計算する、比率のようなものです。食分が1.0のとき、AとBの縁同士が内側で接している状態(ただしA<=B)、0.0なら外側で接している状態。1.0より大きいほどAがBの中心に深く入り込んでいる状態、0.0より小さいマイナス値ならAとBは完全に離れた状態です。

月食の場合は地球影に本影と半影があるので、それぞれの食分が計算できます。月食情報欄に出ている食分はほとんど「本影食分」であり、「半影食分」まで書かれているケースは少ないようです。下は今回の半影月食と2031年6月の半影月食のチャート(NASA-Eclipse Webから引用)。上のほうに書いてある「Penumbral Magnitude」と「Umbral Magnitude」がそれぞれ半影食分と本影食分。今回は「限りなく部分月食に近い半影月食」、いっぽうの2031年は「月食が感じられないほど浅い半影月食」であることが数値の上でも分かるでしょう。

食分の値が資料ごとに少し異なっている場合があります。日食でも月食でも計算方法自体はとてもシンプルなのですが、結果に差が出るのです。これは計算法の違いや計算誤差というよりも、採用される「太陽・月・地球の大きさ」という基本数値が異なっている可能性が高いです。月食の場合は地球大気の厚みが本影直径にどれだけ影響するか、という係数が違っている場合もあります(→NASAの資料参照)。どれが正しいかと言う議論はあまり意味が無く、それぞれ信念に基づく選択で計算している…はず。強いて言うならどれも間違いであり、日食や月食を詳しく観測することで前述の定数や係数を見直して信頼性を高めるべき、というのが科学的な対応でしょうか。

  • 20230506月食図

    A.2023年5月6日の半影月食
  • 20310605月食図

    B.2031年6月5日の半影月食



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