またしても月の観察中に天気が崩れる2020/03/07

20200306_13507月
昨夕から宵にかけて晴れていたものの天気は下り坂。明け方に観察したい天体があったので機材を用意していましたが、夜半過ぎには小雨まで降りだして撮影は叶いませんでした。

完全に曇ってしまう前にせめて月面だけでもと望遠鏡を向けました。左は21時少し前の撮影で、太陽黄経差は約135.07°、撮影高度は約76.0°、月齢11.85。大きな画像を掲載しておきますので、月面探険してみてください。南中直前の時間帯だったことと、赤緯が22°を越すような値のため、とても高い位置でした。今年この月相としては最高高度です。当地・茨城県南部は北緯36°前後なので、月赤緯が24°を越す時期が現れる今年後半は最高到達高度が78°に達します。2020年の地心視赤緯を右下図に示しました。みなさんの地域でも計算してみましょう(月南中高度概算=月赤緯−観察地北緯+90)。

2020年・月赤緯と朔望月
月面はちょうどアリスタルコス・クレーターが夜明けを迎える位置でした。コペルニクスやケプラーの光条が見え始まっています。ティコの光条は3月4日撮影画像に比べるとはっきりしましたね。秤動は西側が中央に寄る向きのため、東側が見辛くなっています。月面撮影の最中から薄雲が度々横切り出し、その後は皆曇のち小雨。少なくとも数日間は天気が崩れる予報です。

2000-2040年・月赤緯変化
【余談】
上に記した月の赤緯変化は一定幅ではありません。長期的に見ると緩やかに波打っています。2000年から40年間の赤緯をグラフにしてみました(左図)。上の図はこの中の2020年だけを取り出したもの。そういう目で見ると、年末に向かって振幅が少しずつ増えている意味も理解できるでしょう。

月軌道は黄道面に対しておよそプラスマイナス5.1°の傾き幅があるため、赤道座標系の赤緯最北値を考えると、黄道傾斜角(現在は約23.4°)プラスマイナス5.1°、つまりおおよそ18.3°から28.5°までの変動があるというわけ。この変動周期は約18.6年で繰り返されることが知られています。2020年はちょうど回復期で、これから次第にピークが大きくなってゆくところ。

2024年から翌年にかけて赤緯幅がプラスマイナス28°を越えます。北緯28°以南(奄美大島以南)では南中時の月が天頂を越えて北の空に入ってしまう時期がやって来るでしょう。もはや南中ではなく“北中”ですね。逆に北海道など北緯42°を越える地方では南中高度が20°を下回ります。例えば2024年6月23日0:00すぎに南中を迎える札幌から見た満月は、高度が18°足らずしかありません。月赤緯の振幅が大きい時期は月の出入り方位角の変動幅も大きくなります。国立天文台・暦wiki・月の公転運動「最北と最南」「月軌道の赤道に対する傾き」も参考にしてください。