天気急変の中に見えた月と惑星たち2020/03/10

20200309_17634月
昨夕まで一時的な晴れ間があったものの、日没前から広がった雲は夜を待たずして空を覆いました。宵には「金星と天王星の接近」、夜中には「満月」が見えるとあって前々から楽しみにしていたのです。でも西から雨が迫っていたし、どちらもダメかなぁ…と諦めざるを得ませんでした。

天文薄暮が終わった19時過ぎ、諦めきれずにもう一度外の天気を確認すると、なんと薄雲越しながら星が見えるではありませんか。東には朧な月、西には朧な金星。またすぐ曇ってしまうかも知れないという迷いが心を占めましたが、体が勝手に手早く準備できる機材を組み上げていました。

かくして20時少し前、どうにか金星と天王星の接近をカメラに収めることができたのです(右下画像)。西側ほど薄雲が濃く、金星はこの影響で肉眼でも分かるほど盛大な光環をまとっていました。天王星どころか、西に傾き始めた冬の1等星も弱々しい光り方。天王星はカメラのモニター越しにギリギリ見えた程度でした。

画像中で一番明るい金星、中央を挟んで対称位置に天王星。天王星は青白い色が消えないよう注意深く画像処理しました。撮影時の両惑星離角は2.35°。最接近日時が9日1時ごろ(離角2.2°)で、一昨日8日宵のほうがこの画像より近かったはずですが、当地は小雨交じりの天気でした。見ることは叶わないと思っていただけに、奇跡的な晴れ間に感謝、感謝。気象光学現象も一緒に撮れてラッキーでした。太陽や月はもちろんですが、明るい金星や木星でも条件に恵まれれば光環や光柱を見ることができますよ(→過去の例:2017年9月4日の金星光環2019年1月2日の金星光柱)。良く見ると光環内側に8等台と9等台の恒星が計三つも写っていてびっくり。

20200309金星と天王星の接近
金星撮影が済んでもまだ晴れ間が持ちそうだったので、今度は顔を東へ向けました。満月はやっと隣家や電線群を抜けたころで、撮影できそうです。とは言え、月暈が見え隠れしており、いつ曇ってもおかしくない状況。重機材を組み上げる余裕はありません。手っ取り早く撮影可能な望遠鏡を月に向け、一眼デジカメで100枚ほど撮影したところで時間切れ。足早に流れる雲があっと言う間に空を覆ってしまいました。

撮影したものをミネラルムーン色調で仕上げたのが左上画像。シーイングもコントラストも悪い空でしたから出来上がりも精鋭さに欠けますが、全く見えないことを考えたら幸せ100倍ですね。満月瞬時は10日3時前ですから、正確には満月6時間あまり前の撮影です。撮影時の太陽黄経差は約176.34°、撮影高度は約40.9°、月齢は14.84。リム南側から西側(下側から左側)にかけてクレーターの影が残っていることからも満月前と分かるでしょう。秤動はほぼ南極が中央に寄る向きで、南半球の地形が辿りやすいです。南極のDemonax、Scott、Malapert、Cabeusあたりのクレーターは余裕で見えるほか、Amundsenの奥側クレーター壁にも光が当たってるのが確認できます。また南の海(Mare Australe/右下リム)が良く見えるのが印象的でした。

月周囲に月暈や光環が見えましたが、撮影している余裕はありませんでした。数時間後には雨が降り出し、本当に偶然の晴れ間だったことが分かります。各対象が撮影しやすい高度だったことは何よりありがたいことでした。