岩本さんが発見した新しい彗星2020/01/16

20200116_岩本彗星(C/2020A2)
ようやく「岩本彗星(C/2020 A2)」の誕生です。

実は徳島県の岩本雅之さんがへびつかい座に13等の彗星らしき天体を発見したのは、一週間も前の1月9日明け方でした。報告はすぐに行われ、未確認天体としてのIF033という符号で世界中の彗星観測家のもとへ情報が流れました。通常ならベテラン観測家のみなさんが手分けして追跡し、「確かに新しい天体が存在する」「位置は○○」「明るさは□□」などとデータが集まり軌道が確定され、1日内外で新彗星として認められる流れです。

ところが、IF033はいつまで経ってもIF033のままでした。位置が東の超低空だったこと、日本では天気がずっと悪かったこと、月が大きかったこと、移動の情報が岩本さんの最初の報告だけだったので追跡用の位置推算が実際から大きくかけ離れ、世界中で見失ってしまった…などの不運が重なってしまったようです。

いっぽう、昨年話題になった恒星間飛行彗星「2I/Borisov」の発見者でもあるアマチュア天文家ゲナディ・ボリソフさん(ウクライナ・クリミア半島)が1月13日、やはり東の低空に新彗星を発見しました。両天体を付き合わせてみると、最初に岩本さんが見つけた天体の軌道と一致したそうです。かくして14日には再計算された位置で世界各地から追跡観測が報告され、彗星確定に至ったというお話しでした。この新彗星は「C/2020 A2」という番号と「岩本彗星」の名が付きました。岩本さんが見つけた彗星はC/2013 E2、C/2018 V1、C/2018 Y1についで四つ目です。

20200116_岩本彗星(C/2020 A2)
当地・茨城も天候不順が続き、ようやく少し晴れた12日明け方に撮影を試みたのですが、雲が多くて暗い星まで写りませんでした。もっとも、その時は『ずれた位置予報』での撮影でしたから、快星でも彗星は写らなかったでしょう。そして今朝方あらためてチャンスが訪れ、10コマ25分ぶんの画像を得ることができました。仕上げてみると緑色のコマが美しく、実に彗星らしい姿(左上画像)。色々処理してみると北西(右上)方向に短い尾が伸びているようにも見えます(右画像参照/冒頭画像を白黒ハイコントラスト化/2時方向に約1′角の尾らしき流れ)。

もう少し露出する予定でしたが、西から押し寄せる雲に追いつかれてしまいました。今日からまた下り坂らしく、ギリギリ撮影できて本当に良かった…。暫定予報ですが、今後彗星はこと座のベガにニアミスしながらわずかに明るくなり、3月頭には北極星から10°あまりの所を通過するようです。

彗星が昇ってくる間、上空に輝く月を撮影しました。下A画像は3時前の様子で、太陽黄経差は約246.29°、撮影高度は約53.7°、月齢は20.53。撮影時は比較的安定した空だったのですが、薄明の頃は雲がかかり、下B画像のように月暈(月による内暈)や光環が見えました。参考までに、撮影時の月とδLeoとの離角は約23°。内暈が「22°ハロ」と呼ばれる所以ですね。

  • 20200116_24629月

    A.月面
  • 20200116月暈

    B.月暈


今日の太陽とハロ現象2020/01/16

20200116太陽
明け方前から雲が出ましたが、朝からはよく晴れています。ただし天気予報は下り坂ですので雲が出るのも時間の問題。ということで、いつもより1時間早く太陽観察です。

20200116太陽リム
左は10:30過ぎの太陽。活動領域はありませんが、相変わらず赤道右寄りに活発な領域が見えています。今日は少し明るいですね。プロミネンスはあちこちに小さなものが散見されますが、淡くてはっきりしませんでした。

午後早いうちから雲が出てきました。一昨日と同じようなパターンですが、今日の雲のほうが「気象光学現象向き」の感じです。正午過ぎには内暈や下部タンジェントアーク、彩雲が確認できました。また、15時頃から網を張っていると、目論見通り様々なアークが出てくれました。下A−E画像は概ね出現順です。

まず太陽左側に明るい幻日(下A・B画像)。彗星の尾みたいに幻日環を伴っています。色もかなり鮮やか。お次は環天頂アーク(下C画像)。最初は淡くて見辛かったものの、どんどん濃くなりました。ただ雲の関係なのか、不思議なことに片側だけ(中央から右側あるいは中央から左側)見える時間が多く、全体像が見えませんでした。

太陽が低くなると右側の幻日が少し明るくなりました(下D画像)。この頃には上部タンジェントアークもかなり明るかったです。それから気付きにくいですが、淡い太陽柱が上下に伸びている感じがしました。上部タンジェントアークから上側を広角で捉えたのが下E画像(強調してあります)。昨日は上部ラテラルアークが肉眼で見えませんでしたが、今日ははっきり見えました。二日連続で宝物を手にした気分。

  • 20200116太陽と幻日

    A.太陽と左の幻日
  • 20200116幻日

    B.左の幻日(拡大)


  • 20200116環天頂アーク

    C.環天頂アーク
  • 20200116太陽周囲

    D.太陽と右の幻日
  • 20200116太陽上方の様子

    E.太陽上方の様子