今日の太陽と2024年暦要項について2023/02/01

20230201太陽
昨夜半から明け方まで良く晴れていたのですが、いつもより湿度が高く、透明度もかなり落ちていることが気になっていました。案の定、朝から雲が広がって昼まで太陽観察はできませんでした。午後は快晴が戻りましたが、猛烈な強風となっています。

20230201太陽リム
左は13:30過ぎの太陽。小規模な活動領域が点在するものの、全体的に静穏です。プロミネンスやダークフィラメントは活発そうですね。右上リムのものはまだ継続中。左下リムにはかなり明るいプロミネンスが見え始めました。

20230201-96p
太陽観測衛星SOHOのLASCO-C3カメラに写っているマックホルツ第1彗星(96P)、今日夕方までに右画像のところまで進みました。一番上の彗星位置は15:54JST。かなり明るくなったようですね。尾の曲がり具合がえぐい…。明日2日UT中にこの写野から消え去る予定です。

【ギリギリ二十四節気と朔弦望】
現象日時JST
小寒2023-01-06 00:04:50
夏至2023-06-21 23:57:49
処暑2024-08-22 23:55:02
大雪2024-12-07 00:17:02
冬至2025-12-22 00:03:05
上弦2023-01-29 00:18:46
上弦2023-05-28 00:22:17
上弦2024-02-17 00:00:56
下弦2024-03-04 00:23:29
上弦2024-08-13 00:18:47
上弦2024-12-09 00:26:37

ところで、本日付け官報で国立天文台による2024年の「暦要項」が発表され、来年の日曜祝日や二十四節気などが固定されました(→国立天文台・暦要項)。

去年も2022年3月21日記事で少し触れたのですが、0:00JSTに近い現象がある場合、精度の悪い/揃わない計算で各個人や企業がそれぞれの暦を作ると日付が異なってしまうことがあるため、国としてきちんと管理し、毎年発表しているわけです。

2023年から2025年までの二十四節気と月位相の朔弦望について、0:00JSTプラスマイナス30分に発生するケースを自作プログラムにて計算、右表に書き出してみました。天文計算の“腕試し”として毎年の国立天文台発表値と合うかどうか挑戦するのも面白いですよ。今日発表された2024年2月17日の上弦などは本当にギリギリですから、高い計算精度が試されますね。(※暦要項では分の位までしか発表されません。秒以下はおそらく四捨五入でしょうか?)

処暑の日付変化
このギリギリ節気はしばしば「○○年ぶりに△△日」という現象を引き起こします。例えば来年の「処暑」は228年ぶりに8月22日となります(左図)。また右上表には入りませんでしたが「小暑」も2024年7月6日 23:20:03で日付境界にかなり近く、これまた7月6日になるのは228年ぶりのこと(→2021年1月24日記事参照)。見過ごしがちな節気や雑節も面白い話がたくさん転がっていますよ。

2023年のうるう秒調整はなくなりました2023/01/09

2017年1月-2022年12月のLOD累積
今年もこの時期がやって来ました。国際地球回転・基準系事業(IERS/INTERNATIONAL EARTH ROTATION AND REFERENCE SYSTEMS SERVICE)から本日1月9日に発表された報道によると「2023年7月1日(同年6月末UT)のうるう秒挿入はない」とのことです(→IERS News:2023年1月9日UT付けBULLETIN-C65)。これにより、少なくとも今年いっぱいUTC-TAI = -37秒が維持されることが確定しました。

発表のたびに作図してきましたが、左図は2017年のうるう秒挿入直後を原点として、1日ごとのLOD(Length of Day:1日の実測長)差分値を足してゆき(水色線)、正確な時を刻む原子時計に対して自然に基づく時計がどれだけずれているか(緑線)を表したグラフ。(※測定データは昨年12月5日までを利用。)また、LODと24時間=86400秒との差の日々の値(薄青線)、および31日移動平均(赤線)をグラフ化したのが右下図です。最後にうるう秒が挿入された2017年1月8:59:60JSTから今年の正月で丸6年経ちました。今年一年間もうるう秒はありませんので、7年間うるう秒無し確定。ついに今まで最長だった1999年初めから2005年末までの「7年間うるう秒無し」に並びました。

2020年1月-2022年12月のLOD差分変化
昨年初夏に「6月29日は観測史上最短の一日」というニュースが流れたことを覚えていますか?地球自転はミリ秒単位の計測がなされている世界なので、そんななかで「最短の一日」と言われてもぴんと来なかった方がほとんどでしょう。右グラフを見ると毎年のように最短日が更新されていることが分かります。当ブログでも2022年8月17日記事で取り上げました。

最短記録並の日が今後も続くなら「地球自転は24時間より短い」ことが蓄積され、数年後に史上初の「うるう秒削除」が行われることも予期されました。でも実際はグラフの通りLODが大きくプラスに転じています。数年間様子を見なければ分かりませんが、直ちにうるう秒削除に備えなければならない、という状況は脱したように感じます。

ところで2022年11月下旬、各種メディアが一斉に「2035年までに閏秒を無くすことを決定」と報道しました。これはSI単位系を維持する国際会議「国際度量衡総会(CGPM)」が2022年11月18日に決議した事項を受けたもので、下位組織である「国際度量衡局(BIPM/Bureau international des poids et mesures)」を通じて発表された書類が公開されています。この組織名を耳にしたのは2019年5月に「キログラム原器」の廃止と国際単位系の再定義が行われて以来でしょうか。

地球自転に基づく自然時間と、原子時計によって管理された時間とのずれに関する諸問題は、閏秒導入前から長年議論の的でした。国立天文台・暦Wikiによくまとまった解説があります。閏秒があっても無くてもメリットとデメリットがあり、それ故議論は平行線のままです。

前述の「2035年までに無くす」ことは全世界の総意ではなく、主にIT業界などデメリットの多いサイドからの意見が強く働いたように思われました。コンピューター処理は「時刻の絶対性を利用した前後関係」が保証されなくてはなりません。ところが閏秒対応のソフトウェアと対応を忘れたソフトウェアが混在すると因果律が不確実になり、システムエラーが起こります。いつ閏秒が挿入/削除されるかは予測がつかないため事前の対策はできず、IT企業が眉をしかめるのも当然でしょう。とりわけ、「うるう秒挿入」なら何回か対応実績があったとしても、「うるう秒削除」は世界中のだれもが未経験。例えば8:59:58JST→9:00:00JSTのように1秒飛ばす措置をしたとき、銀行の処理システムがうるう秒削除に対応してなかったら、「9時直前に100万円送金した事実が無くなった」というようなことが起きる可能性があるわけです。

2015年1月-2022年12月のLOD差分変化
だんだん減っているように見える地球の一日
ただ、単純に「経済界が困るから」という理由だけで大きな決めごとを変更するのは望ましい形ではないでしょう。経済がいかに重要であっても、社会の一側面でしかありません。私は若いころIT業界にいたので情報処理の困難さは分かっているつもりですが、コンピューター内の時刻管理は一種のカウンター処理。1秒間の長さを変えるわけでは無いのだから、閏秒の有無に関わらず、カウント値を時刻に変換する仕組みを換えれば済む話。

天文宇宙分野でも、他天体や人工衛星など地球と関係なく動き回る物体に対して、UTやJSTなど地球上でしか意味をなさない時刻系は使わず、「地球系力学時(TDT/Terrestrial Dynamical Time)」や「太陽系力学時(TDB/Barycentric Dynamical Time)」など地球自転の変動を受けない時刻体系を築いてきました。コンピューターもそうすればいいだけの話。なにも閏秒は今始まった事ではないのに、なぜIT企業はもっと早くに業界全体で「絶対変動しないコンピューター時」といった発想をしなかったのだろうかと見通しの甘さを感じます。

自然時計は私たちの生活基盤です。もし原子時計のまま補正も無く生活を続けたら、時計は次第に地球自転の昼夜と関係ない時刻を刻むようになるでしょう。何千年先か分からないけれど、春の朝6時に日が昇る地方も、5時だったり7時だったり時計表示がズレてしまう訳です。さすがにそうなっては困るため、現在採用されている閏秒に代わって「○○分までずれたら直す」といった「閏分」や「閏時間」など大きな単位の補正方式を導入する試案も検討されるようです。誤解を恐れずに言うと、実害が出ない範囲で「ズレが出ても気にしない」、「私たちが我慢しよう」、「毎年細かく気にすることは止めよう」ということです。

いずれにしても現在の小学生が全員成人するまでに新方式が導入されます。私たち大人は一側面だけにとらわれず全体の動向を見守り、時に意見し、問題が起こらないよう自身も勉強しておかなくてはなりませんね。

参考:
日出没・暦関連の記事(ブログ内)

2023年で日の出が最も遅いシーズンです2023/01/04

2023年・日出最遅日マップ
冬至を挟んで2022年の日没最早日と対を成す2023年の日出最遅日の時期がやってきました。

左図は恒例の「日出最遅日マップ・2023年版」。ご覧のように今日4日時点で北海道南部や青森県の一部が「年間でもっとも日の出が遅い日」になっています。今後二週間ほどかけて南下し、日本全体の日の出は次第に早くなってゆくでしょう。去年の関東では最遅日の前日にまとまった雪になりました。今年はどうでしょうか?

2022年の日出最遅日マップと比べほとんど変化が無いように見えますが、今年のほうが日付境界線が少しだけ北上しています。逆に言うと、去年の境界線近くの街は、今年の最遅日が一日遅れているのです。北上は閏年まで続き、その翌年は4年前に近い位置まで一気に南下します。このあたりの解説は2018年1月8日記事にまとめてありますのでご覧ください。

日出最遅日前後の日の出変化(京都市)
去年と今年とで日付がずれる具体例をひとつだけ見てみましょう。左は京都府庁がある京都市での日の出直後の様子。2022年と2023年それぞれ1月5日から10日までをステラナビゲーターで描いたものです。そぎ落としたかまぼこのように見えるのは、地面からわずかに顔をのぞかせた太陽上辺。これは日出時近くのアナレンマを表しており、“アナレンマの一番下に近い太陽は何日なのか”という命題と同義です(2017年1月6日記事2017年6月29日記事参照)。

時刻を固定して日付ごとに比べてみると、太陽上辺がいちばん低くなるのは2022年が1月7日、2023年は8日。極くわずかな違いですが、このかまぼこの波を毎年描くと4年周期のウェーブが見られます。(全国どこでもそうなります。)京都市の場合はこの4年間に7日と8日とを行ったり来たりする訳です。またかまぼこ山の高さが年によって違うことから、同一日の日出時刻(厳密解)も4年周期で変化することが予想できるでしょう。

ものすごく小さなお話なので普段気にすることも無く一生を過ごしてしまう方がほとんどだと思います。厳密解の日差は秒のオーダーですから、新聞や天文カレンダーに載ることもありませんね。実際、大気差による浮き上がりの変化のほうが大きいでしょう。ですが、これらの理屈を知っていると少しだけ自然を見る目が変わってきます。

参考:
日出没・暦関連の記事(ブログ内)
ユーティリティ「太陽と月の時刻表/夜空の時刻表」

今年は朔旦冬至に近い年2022/11/30

朔旦冬至の周期性
早いもので、もう12月を迎えます。色々な出来事に「今年最後の」といった修飾がついて回るひと月になります。

さて、今年最後の新月は12月23日。これは22日の「冬至」の次の日にあたります。このことを聞いたとき「朔旦冬至」という言葉が脳裏にすぐ浮かぶ方はかなりの天文通(または暦通?)でしょう。朔旦冬至とは冬至と12月新月の日付が一緒になること。直近で朔旦冬至になった2014年12月22日にブログ記事を書きましたが、もう8年も経つんですね。

記事内に「冬至と12月新月のシンクロ具合」と題した一覧表を掲載してありますが、19年周期でやってくる朔旦冬至に加え、周期から外れた年でも朔旦冬至が起こったり、日付差が数日以内の年が出現することを示しました。今年は朔旦冬至ではないものの、日付差は1日、厳密な計算では36.4777時間の差となり、ニアミスしていることが分かります。

周期性が視覚的に分かるよう、「新月瞬時-冬至瞬時」という時間差を自作プログラムで計算し、グラフ化したのが冒頭の図です。1900年から2100年の201年間を計算しました。図のクリーム色のところが冬至瞬時プラスマイナス24時間の範囲。この中にあって、かつ日本時間での日付まで一致する場合は赤丸(=朔旦冬至の年)、それ以外は中抜き青丸で示してあります。遠くからぼんやり眺めると、丸印は一定間隔をおいて法則性を持つことが見て取れるでしょう。

2014年以降はずっと時間差が大きい年が続き、今年になってようやく48時間を越えないケースとなりました。次回は2033年の5.0083時間ですが、この年も冬至が12月21日22:46、新月が22日03:47であり、時間差は小さくても日付をまたいでしまいます。次の朔旦冬至は2052年までやってきません。しかしながら2052年は時間差がわずか2分12秒という驚異的な一致となります。まぁ、特に何か起きる訳ではないけれど、お正月になった瞬間に新月を迎えるくらいの貴重さはあるかも知れません。1600年から2600年の1001年間で朔旦冬至は33回起こるようですが(記事下の表参照)、そのなかでも一番近いケースでした。

現代は旧暦を使いませんからあまりぴんと来ないお話しでしょうが、冬至に向かって月が欠け、日が延び始めると共に新しい月が満ち始めると考えたら、なんだかとてもおめでたい気分。今年12月、そんな思いに浸ってみてはいかがでしょうか。

【1600年から2600年までに起こる朔旦冬至】
冬至(JST)12月新月(JST)時間差
1604年12月21日 19:05:581604年12月21日 4:06:31-14.9908
1623年12月22日 9:52:481623年12月22日 3:31:42-6.3515
1642年12月22日 0:38:281642年12月22日 3:37:472.9887
1661年12月21日 15:14:001661年12月21日 23:08:497.9138
1680年12月21日 6:04:301680年12月21日 10:45:024.6754
1699年12月21日 20:46:571699年12月21日 17:53:53-2.8846
1718年12月22日 11:26:051718年12月22日 5:08:54-6.2862
1737年12月22日 2:12:531737年12月22日 0:19:24-1.8913
1786年12月21日 23:34:031786年12月21日 1:49:08-21.7485
1832年12月22日 3:50:571832年12月22日 11:34:397.7283
1870年12月22日 9:12:201870年12月22日 21:18:0512.0959
1900年12月22日 15:40:491900年12月22日 9:00:31-6.6719
1938年12月22日 21:13:021938年12月22日 3:06:22-18.1114
1984年12月22日 1:22:481984年12月22日 20:46:3619.3965
1995年12月22日 17:16:471995年12月22日 11:22:25-5.9063
2014年12月22日 8:03:012014年12月22日 10:35:512.5471
2052年12月21日 13:17:272052年12月21日 13:15:15-0.0366
2090年12月21日 18:45:142090年12月21日 10:30:50-8.2399
2109年12月22日 9:29:452109年12月22日 7:43:05-1.7779
2128年12月22日 0:15:412128年12月22日 8:11:357.9315
2166年12月22日 5:36:542166年12月22日 22:08:2516.5253
2204年12月22日 10:54:192204年12月22日 14:52:243.9683
2223年12月23日 1:40:232223年12月23日 6:23:474.7235
2272年12月21日 22:52:092272年12月21日 13:22:59-9.4862
2386年12月22日 14:50:022386年12月22日 17:06:132.2696
2405年12月22日 5:34:542405年12月22日 7:46:482.1983
2424年12月21日 20:18:422424年12月21日 15:42:38-4.6010
2443年12月22日 10:54:362443年12月22日 0:30:45-10.3975
2481年12月21日 16:17:172481年12月21日 15:30:10-0.7853
2500年12月22日 7:01:412500年12月22日 15:53:478.8684
2557年12月22日 2:57:442557年12月22日 9:00:486.0510
2576年12月21日 17:34:492576年12月21日 19:05:361.5131
2595年12月22日 8:16:302595年12月22日 13:04:264.7988
冬至(JST)12月新月(JST)時間差

  • 自作プログラムによる計算です。(使用暦表:JPL-DE440)
  • 2014年の記事内の表と計算方法が異なるため、若干違うところがありますのでご容赦ください。


参考:
アーカイブ「新月とブラックムーンの一覧」