巨大な氷山がサウスジョージア島に迫る2020/12/12

20201211サウスジョージア島とA68
当ブログで南極の棚氷ラーセンCの分離を扱ったのは2017年1月8日の記事からでした。この時点ではまだ分離していませんでしたが、同年7月10日頃に完全分離が確認され、約5800km²もの面積を持つ巨大な氷山A-68Aとして海上の浮遊をスタートさせたのです。分離時、A-68Aの中心は南緯67°、西経61°付近にありました。

あれから3年半。ゆっくり浮遊を続けてきたA-68Aはおおよそ南緯55°、西経38.5°付近にあります。そう、イギリス領サウスジョージア島のすぐ沖合なんです。左画像は地球観測衛星Terraによる今朝時点での最新画像(12月11日撮影/NASA World Viewから引用)。計測すると、互いの海岸線最短距離は既に100kmを割り込んでいました。東京新宿中心なら銚子や館山伊東や甲府、前橋や宇都宮あたりが100km。大阪中心なら四日市や津、田辺や徳島、舞鶴や彦根あたりが100km。もはや「危機的状況」どころじゃないですよね。これまでの移動経路はNASA The Earth Observatoryのトピックス内にあります。

分離当時は重さが1兆トンと言われました。多少欠けたり溶けたりしたものの、総量からしたら微々たるもの。特に海面下の氷はそっくり残っているでしょう。ジュースに入れた氷とはわけが違います。この地域はクリアに晴れることが少ないんですが、10月から12月まで、各月上旬にサウスジョージア島とA-68Aを両方確認できる日を選んで同縮尺・同一構図で下に並べてみました。島は海岸線を縁取りしてあります。氷山はマークしてないので探してみてください。現在これだけの速度で移動しているんです。

サウスジョージア島は人が住んでいませんが、数多くのペンギン生息地。もちろん多様な生物の宝庫です。島を囲むように水深300mより浅い島棚が50-70km程度の幅で広がっており、三次元的に考えれば氷山本体がこれより内側に入る可能性は少ないように思えます。ただ、島棚と氷山の海面下部分のせめぎ合いで相当量の氷が破砕・放出されることでしょう。うっかり島棚に座礁してしばらく留まる…なんてことになれば、島の環境を著しく変えてしまうことは大いにあります。とても心配ですね。

  • 20201008サウスジョージア島とA68

    A.2020年10月8日
  • 20201105サウスジョージア島とA68

    B.2020年11月5日
  • 20201211サウスジョージア島とA68

    C.2020年12月11日


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