天宮1号がそろそろ落ちます2017/11/15

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天宮1号
昨日なにげにNewsweek記事を読むまですっかり忘れていました。中国初の宇宙ステーション(宇宙実験室)とも言われる「天宮1号/TIANGONG-1」が間もなく落下するということを。

直近のメディアでは1ヶ月くらい前から報道があったようですが、制御不能になって落下すること自体は1年以上前から告知されていました。当初は2017年中に落下との予想だったはずで、記事を書こうと思っていながら忘れていた自分が恥ずかしい…(最新の欧州宇宙機関の発表はこちら。

左画像は天宮1号(引用元:China Ntional Space Administrations)。本体直径3.35m、長さ10.4mの円筒形で、重量8.5トン。近年警戒されている数メートルレベルの地球接近小惑星と比較して、決してバカにならない大きさです。

20171115天宮1号高度
右図は本日11月15日時点でHeavens Aboveが公開している天宮1号の高度推移。少しずつ下がっているのが分かりますね。2017年8月後半からは落下が早まっているようです。この傾斜を単純に延長するだけなら高度ゼロになるのは2年後くらいですが、地表に近いほど濃い大気があるので、そう単純ではありません。

もうひとつ右図で読み間違えてはいけないのは、図が「平均高度」である点。天宮1号は楕円軌道。ほぼ円に近いとは言え、地球に近い時と遠い時とで20km以上の高度差があります。図の目盛ふたつ分は大きいですよ。必ずしも高い位置や計算平均の高度で落下する訳ではありませんのでお間違えなく。最新の予測では2018年1月から3月ごろに落下とのこと。今度こそ本当にもうすぐです。

国際宇宙ステーションを含めどんな周回衛星も高度変化がありますから、運用期間中は何度も微少な制御をくり返して一定範囲に留める工夫をします。でも既に制御機能を失った天宮1号はそれができません。次第に大気が濃くなる高度へ触れ始め、大きくなる空気抵抗に負けて急速に落ち始めるでしょう。この際に細かな部品はバラバラになり大気中で燃え尽きてしまいますが、大きくて高密度のパーツ…今回の場合はロケットエンジンが該当…などは地上に落下する可能性があります。問題なのは「いつ、どこに落ちるか数時間前まで特定できない」こと。大問題じゃないですか…。

20171115天宮1号位置
あらためて、今日15日24時間分の天宮1号飛行位置を計算してみました(左図/自作プログラムによる位置推算)。軌道要素は最新のものを使っています。1日におよそ16周地球を回っており、軌道傾斜角(軌道面と赤道面とのなす角)は約42.8°。これは北緯42.8°から南緯42.8°の間を編み目状に巡っていることを意味します。この図はたった1日分なので、何ヶ月分も計算したら編み目どころではなく、ギュッと織った布のようになります。落下するとしたらこの『布』の範囲内。もちろん日本の大部分も覆われてますね。どこに落ちるか分かりません。

世界中にある宇宙関連機関がこの落下を監視するとのことですが、防衛してくれるわけじゃないので、こまめにニュースをチェックして頭上に注意してくださいね。それにしても可能性がゼロではない以上、「ここを見れば状況が全て分かる」といった十分な公的情報が欲しいと思うんですけれど…。

参考:
2018年春に落下予想の「天宮1号」に関する記事(ブログ内)
明け方の月と天宮2号の軌跡(2016/10/24)

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