月面Aっていつ見えるの?2015/01/06

2011年から2020年の月面A現象日時をまとめた「アーカイブ:月面Aの一覧」を作成しました。本記事と合わせてご利用ください。

月面は満月期を除き、日が当たっている縁(明暗境界)の地形が強調されます。このとき、それが何か知っているものの形に見えることがあります。月面Xというのはそのひとつですが、他に「月面A」というのも聞きます。この記事ではXとAを対比させながら、A地形の特徴、Xとの違い、見えそうな日などを探ってみましょう。

月面X説明
月面Xはだいたい上弦の頃の明暗境界に現れます。左画像の緑枠のところです。付近のクレーターが拠り所ですが、クレーターは見る日によって微妙な位置のズレがあります。といっても大きくは変わりませんから、Xを探しがてら覚えておくと良いですね。

月面X説明
緑枠を拡大したのが右の画像です。アリアケンシスとヴェルナーのペアが見つかったら、もうXはすぐそこ。ちょうどXが見える日時にここを見れば、数時間かけてだんだん暗闇から浮かび上がるのが見られます。といっても頻繁には起こらないし、夜見えるとも限りません。

月面A説明
いっぽう月面Aは月の縁近くにあります。満月少し前の頃の明暗境界に現れます。月の北を上にすると、ちょうど真ん中の左縁近くになります。左画像の緑枠内にある大きなクレーター・グリマルディが目印となってくれるでしょう。

月面A説明
ここを拡大したのが右の画像。グリマルディから北(上)へ縦並びでヘヴェリウスとカヴァレリウスを一気に見つけましょう。3つのクレーターからちょっと左へ目を移すと…上下が逆(ガンダムみたいに“ ∀ ”)ですが、言われてみれば細長いAのような地形が見つかります。まぁ説明聞くと簡単そうですが、Xより小さくて幅もないから、かなり強敵です。

それぞれの地形はどうなっているのでしょうか。月探査機「かぐや」から得られた標高データをもとに、地形図を描いてみました。分かりやすいように段彩図(標高ごとに色分けした地図)にしました。下図の標高凡例は緑の0mを中心に-3000m(青)から+3000m(白)まで色分けしてあります。なおこの地形図は真正面から見た直交座標です、念のため。

月面X地形図
まず月面Xです。左図を見ると地形は大きな4つのクレーターに囲まれているのが分かりますね。互いのクレーターの縁がXを作っています。クレーターの縁が組み合わさってできる地形は月面に結構ありますが、なぜかここが月面Xとして有名です。

X地形は所々に谷(極小クレーター?)があってデコボコしてます。上弦で見る場合、ほぼ右から太陽があたりますから、影は左へ伸びます。だから図中の黒ラインの土地はいっぺんに光るのではなく、高度の高い右斜面から順に光り始めます。最初は漢字の「火」に見えてしまうでしょう。

月面A地形図
対して月面Aは全体的にXより高い場所にあるようです。小さなクレーターがいくつかあります。こちらも図中の黒ラインを照らす太陽が、うまいことAの形を作るのですね。こじつけと言えばそれまでですが、そんなこと言ったら夜空の星座なんてみんないい加減に見えてしまいます。

A地形の中には影で形を乱す山や谷はないようです。ただ、月縁近くのため経度(横)方向に激しく圧縮されて、細長過ぎるのが人気のない(?)最大の要因でしょう。Aの横棒を作る山脈も頼りないし、Aの中抜け空間を作る窪地も浅くて、陰影ができにくそうですね。

さて、月面Aはいつ見えるのでしょう?どんな条件が見える見えないの判断基準でしょうか?残念ながら私はそのような条件を知りません。でもきっと月面Xと同じように「その場所への太陽のあたる角度」が一番の目安でしょう。自分の撮影画像やネット上で公開されている天体写真家のみなさんの画像をたよりに、条件を絞りました。

概ねA地形で太陽が-2.0度から-0.5度あたりでA型が確認できるようなので、下表に今年の予報を書き出してみました(上画像を撮った2014年12月5日も加えました)。あくまでA地形での太陽高度なので、良く見えるかどうかは判断しません。月面の向きが「A地形が少しでも中心に近くなるとき」が見やすいかも知れないので、参考値として太陽高度-2.0度到達時刻の「月面中央経度」を載せました。中央経度がマイナスのときA地形は中央寄りになり、より幅が太く見えるはずです。今後更にたくさん観察して、みんなで良い条件を見つけていけると良いですね。

★月面Aが見えるかも知れない日時(A地形での太陽高度表・2015年概算版)
太陽高度-2.0度だと暗い中にA地形のみが浮かぶ感じ、-0.5度なら周囲の地形は明るいけどまだA地形がたどれる感じです。-2.0度少し前から見え始まっているようですが、Aというより「Λ」。付近の最も高い標高に光が差す角を計算すると-3度付近でした。
・黄色:17時から4時(28時)まで。 ・灰色:それ以外(月は沈んでいる、または低い)

日付太陽高度
-2.0度
太陽高度
-1.5度
太陽高度
-1.0度
太陽高度
-0.5度
月面中央経度
(度)
2014年12月5日17:5118:5019:5020:494.721
2015年1月4日8:269:2610:2511:254.633
2015年2月2日23:0224:0125:0126:013.616
2015年3月4日13:0514:0515:0416:041.772
2015年4月3日2:173:174:165:15-0.581
2015年5月2日14:3315:3216:3117:31-2.946
2015年6月1日2:033:024:015:01-4.794
2015年6月30日13:0414:0315:0216:01-5.723
2015年7月30日0:021:012:002:59-5.580
2015年8月28日11:1912:1813:1714:16-4.482
2015年9月26日23:1924:1825:1726:16-2.700
2015年10月26日12:1413:1314:1215:12-0.501
2015年11月25日2:043:034:035:021.839
2015年12月24日16:3317:3218:3219:313.853
※日付をまたぐ場合は30時間制(翌朝6時=30時)で書いています。
※計算は自作プログラムなどによる概算値です。分の位には誤差がありますので、あくまで参考程度にしてください。
※月面中央経度は国立天文台サイトにより計算しました。
※参考までに、段彩図の元データはX地形がが緯度-28度から-23度・経度358度から0度をはさんで3度まで、A地形は緯度-2.5度から2.5度・経度284.5度から289.5度まで、それぞれ5×5度の範囲です。

参考:
月面Aに関係する記事(ブログ内)

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