月面Xを見よう・前編2014/11/26

11月29日の月面Xデーが迫ってきました。お天気が心配ですが、条件が良いので多くのみなさんに見ていただきたいと思います。特に天文に詳しくない方のご参考になればと思い、ポイントを記事にまとめました。小型の望遠鏡が使える方は後編もぜひご覧ください

★Xは「エックス」と読みます
「バツ」とか「ペケ」とか、ギリシャ語の「カイ」とかAppleのOSみたいに「テン」と呼んでも構わないでしょうが、きっと素直に英語読みが妥当です。月面の複数のクレーターが作る地形が、太陽の当たり具合でたまたま「X」の形に見えるのです。場所は一箇所です。「ここに秘密基地があるよ」「モノリスが埋まってる」「ロンギヌスの槍が…」とか思った人は中二病。でも謎めいた名前にそそられます(笑)

★望遠鏡が必要です
月面Xはとても小さく、天体望遠鏡(小型でOK)が必要です。天体を見慣れてない方は双眼鏡も避けましょう。(Xは地球から見た木星の直径程度。)望遠鏡を持ってない人は持ってる友達を頼るか、近くで観察会をやってないか探しましょう。

★2014年11月29日の出来事ですよ
毎年この日に見えると言うことではありません。2014年は計算上11月29日になったのです。流星群のように「前後数日はOK」ではありません。頻繁に見える訳ではなく、一年に数回程度、天候まで考えたら年に1回見えれば上出来です。何年も条件が悪いこともあります。(こちらの記事も参考に。

★予報では19時(夜7時)前後がいい
上弦(夕方の半月)近くの特定日時に1時間程度見えます。皆既日食のように数分間しか見えないというものではありません。今回は18:30-19:30の間あたりがベストと考えられています。最初真っ暗だったXの地形にだんだん日が当たると見えてきて、さらに日が差すと全部明るくなって見えなくなるという流れです。もしその時間に地球がひどいお天気だったら見えないので、残念だけどまた次回に。

★予報は少しずれることも
実は月面Xが良く見える条件というのがまだ研究途上です。人によっても違い(好み)があるでしょう。1時間というのも目安で、2時間いける!っていう人もいるし、5分過ぎたから絶対見えないものでもありません。あくまで予報なので、夕方18時くらいから気にしてみましょう。ずっと見てなくていいですが、余裕があれば30分おきにチェックするといいですね。

★時間外でもあきらめないで
「曇って全然月が見えないよ!でも19:30になったら晴れてきた!」なんて、良く聞く“星見あるある”です。時間外だからと言って諦めることはありません。20時でも、21時でも、それなりに見える可能性があります。でも21時(夜9時)過ぎると月がだいぶ低くなり、ビルや樹木に隠される可能性も高くなるでしょう。

★見ても何も起こりません
「何かいいことが起こる」「幸せになれる」のだったらお勧めの甲斐もあるんですが…ごめんなさいっ、保証できません(笑)強いて言うと、見ること自体が貴重な体験です。お月見を楽しみましょう。空って損得で見るようなものではないですからネ。

★一緒に冬の星々も
20時前には東の低空にオリオン座やおうし座、目で見える星団「すばる」(左画像)も見える季節です。月と一緒にぜひどうぞ。しっかりした防寒をお忘れなく。

参考:
月面Xに関係する記事一覧(ブログ内)

月面Xを見よう・後編2014/11/26

月面Xという不思議でおもしろい地形。11月29日にはこの貴重な現象を自分の目で見たいものです。小型の望遠鏡は持ってるけど探すのは初めてという方が月面Xを見つけられるよう願って、この記事を書きました。お役立てください。(註:ここでサンプルに使っている画像は2013年撮影の月です。実際に月面Xを見る当日は海やクレーターの位置が若干異なります。)

20141129月面X説明
★望遠鏡を月に向けよう
11月29日当日は、日本のどの地域でも17時過ぎには日が沈んで暗くなり始めています。晴れていれば南の中空に半月が見えるでしょう。できるだけ倍率を低くして望遠鏡を向けましょう。20倍から40倍くらいが理想です。倍率が分からない場合、<口径、対物レンズ(主鏡)の焦点距離、アイピース(接眼鏡)の焦点距離、F値>のどれかがカタログやマニュアル、機材のタグなどに書いてないか調べましょう。これは次の様な関係なので、値が分かれば電卓で計算できます。屈折望遠鏡と反射望遠鏡の違いはありません。口径と焦点距離の単位は合わせてくださいね。

・倍率=対物レンズの焦点距離÷アイピースの焦点距離
・対物レンズの焦点距離=口径×F値

★月の向きの確認が大切
月面Xは月の決まった部分なので、見てゆく場所を正確に特定することが必要です。でも実際に肉眼だけで見上げた月(上画像、関東19時頃)と望遠鏡で見える向きが違うので混乱するかも知れません。レンズや鏡・プリズムの作用、見る人の頭の傾きなどが原因です。回転しているだけですから、落ち着いて向きを正しく把握してくださいね。

一朝一夕では難しいかも知れませんが、右の倒立像で練習してみましょう。マウスカーソルを載せるとガイドが出ます。ガイドがなくても「こっちが月の北、こっちは南」と言えれば大丈夫。…そういえばこれ地図読解に似てますね。地図を道路の向きに合わせなくても読み解けるなら月面散歩は完璧です。

20141129月面X解説
★海の位置を確認
ここから実際に即して倒立像でお話しを進めましょう。月面で少し暗く広がるエリアを「海」と呼びます。海水はありません。月の向きを見定めるとき、海の位置を一緒に見ておいてください。

海を見慣れてくると、うさぎに見えたり、ロバに見えたり。そう、あの十五夜の「餅つきうさぎ」ですよ。これが分かったらちょっとハッピー。さらに慣れると、うさぎの頭で月の向きや移動方向が分かるのでとっても便利ですよ。

20141129月面X説明
★難関のクレーター探し
一気にハードルが上がります。明暗の境界のクレーター(丸い窪地)をたどりましょう。海の位置を頼りに、月中央近くのAとBを見つけてください。Aは「ヒッパルコス」、Bは「アルバテグニウス」という名のクレーターです。Bはやや見づらいかも知れません。

さらに南の縁とAの間にあるCとDを見つけましょう。Cは「アリアケンシス」、Dは「シュテーフラー」です。A、B、Dはきれいな単独の窪地ではなく輪郭が何層も重なるクレーターなので、初めての方は迷うかも知れません。今回Cは月の中央と南の縁のちょうど真ん中に見えます。「月全体のなかの位置」を意識しましょうね。

20141129月面X説明
★いよいよXだ!
A、B、C、Dのクレーターの位置が分かればXの場所も近いですよ。CのB側に隣接したヴェルナーというクレーターを見つけましょう。Xはヴェルナーのすぐ近く。「ヴェルナーX」という別名もあるそうです。左画像を参考に、目をこらしてよく見てくださいね。

倍率が低くて分かりづらいなら、アイピースを交換して倍に上げてみましょう。でも上げすぎは禁物!倍率を上げれば拡大するけど暗くなって見づらいんです。それに、モーターで月の動きを追いかけられない望遠鏡だと、高倍率では追いかけるだけでたいへん。1分間くらい望遠鏡に触らないでクレーター確認に専念できると都合がいいです。

★もし見えなかったら…
「海」「クレーター」の位置は間違いないですか?絶対間違いないのに見えないなら、時間が早すぎたか、遅すぎたか、空の状態があまりに悪いかでしょう。上画像は半分だけ日が当たって、まだ完全なXになってない状態です。こんなふうに該当位置が暗くてXに見えなければ、30分後にもう一度チャレンジしましょう。逆に明るかったら見るのが遅かったのです。めげずにまた次回ですね。

無事見えた頃には、心がとても充実した気持ちで満たされてると思います。目でひとつひとつ確認するのは、サッと写真に撮って後で確認するより何倍も達成感がありますね。遠い空の下からみなさんを応援しています。

参考:
月面Xに関係する記事一覧(ブログ内)