月面Xって意外に貴重な天文現象!? ― 2014/11/12
ご注意:このページに掲載してあるデータは過去に計算した概算値です。観察の際は必ずアーカイブ:月面Xの一覧の新規データをご利用ください。また、ブログ内の月面Xに関係する記事は
こちらにまとめてあります。
※これはつくば星の会会報「星空つくば」2014年11月号掲載記事を再編集したものです。11/29の現象までまだ時間がありますが、十分な告知を願って掲載しました。
天文ファンのみなさんなら月面X(エックス)って聞いたことある方も多いでしょう。ちょうど上弦の頃、月の真ん中を通る明暗の境の地形が立体的に浮かびますね。この中に「X」の形に浮かぶ場所があるのです。今月11月29日の19時頃に見えるチャンスがあるそうですよ。
さて、月面Xは毎月上弦の頃に見えるのかと思いきや、そうではありません。(私もそう勘違いしていた一人ですが…)そもそも月面XがちゃんとXの字に浮かぶのは1時間くらいだそうで、その時間を過ぎるともう全面に光が当たってしまうし、時間前なら真っ暗です。また反対の下弦では見えません。一朔望月の期間中のその1時間、空に月が昇ってなければ月面Xは見えないのです。今回あらためて調べてみたら、かなりレアな現象であることが分かりました。
私は以前から正確な太陽離角(この場合は黄経差)に基づく月相写真を撮りためています。たとえば離角90度は「上弦」、離角180度なら「満月」という具合に、離角が分かればかなり正確に月の形を撮影できます。(月齢ではこうはいきません。)…で、その撮影準備のために「離角○○度になる日時と条件」という表を3度刻みで数年先まで計算してあるのです。これによると、1年の中である決まった形になるチャンス(もちろん月が空に見えている状態)は4回から6回で、そのうち極端な低空を除くと、チャンスは半分に減ります。
月が特定の形になるチャンスは少ないって言われてもピンと来ないなぁ…という方は、天文年鑑や天文カレンダーを見てください。ひと月に1回くらい「満月7:23」などと書いてありますね。1年間で12、3回ある満月が、そこに書いてある時刻に「本当に」見えますか?たとえば2014年なら、高度30度以上で満月の瞬間が訪れるのは3月、10月、12月のたった3回だけ。意外なほど少ないでしょう?
★月面Xが見えるかも知れない日時予報(※概算値)
(※データは記事当時の概算をそのまま記載しました。情報が古いのでご注意ください。より正確な値はここをクリック。)日付 | 時刻 | 条件 | 月の高度 |
---|---|---|---|
2015年2月26日(木) | 14:34 | ▲ | 39゜59’ |
2015年4月26日(日) | 15:00 | ▲ | 43゜42’ |
2015年6月24日(水) | 12:55 | ▲ | 17゜40’ |
2015年10月20日(火) | 13:35 | ▲ | 17゜46’ |
2015年12月18日(金) | 18:28 | ● | 48゜45’ |
2016年2月15日(月) | 22:54 | ● | 20゜34’ |
2016年3月16日(水) | 11:41 | ▲ | 5゜43’ |
2016年4月15日(金) | 0:01 | ▲ | 11゜48’ |
2016年6月12日(日) | 22:35 | ▲ | 17゜40’ |
2016年8月10日(水) | 21:18 | ▲ | 16゜01’ |
2016年11月7日(月) | 12:16 | ▲ | 9゜10’ |
とにかく様々な条件を考慮して計算してみたら、とても厳しい結果になりました。2015年1月から2016年末まで2年分の予報を右表に掲げます。表中の時刻はX現象の中心時刻という意味で、現象自体は前後30分から1時間の幅を見込む必要があります。(もちろんあくまで計算値です。)●がお勧め。現象時に昼間だったり20度以下の低空のものは▲です。(昼間の白い月でも月面Xは確認できますが、夜ほどはっきりしません。)
いやはや、ここまで滅多に見えないんだとは予想外でした。天候まで考えたら、この先何年も見えないかも知れませんね。11/29は向こう2年間で一番好条件の貴重なチャンス。ご興味あれば望遠鏡を向けてみてください。(「星空つくば」2014年11月号掲載)
補記:
2014/11/29の経験や色々な調査に基づいて、2011年から2020年に起こる全ての月面Xを詳しく再計算してリスト化しました。計算を改善したため上の表の時刻と少し異なりますが、「アーカイブ:月面Xの一覧」もご覧ください。