三日月が夕空を飾る2024/02/13

20240212_03411月
昨夕から今朝は良く晴れました。シーイングは相変わらず悪いものの、透明度はまずまず。夕空に久々の月が見えたので望遠鏡を向けてみました。

左は12日18時頃の撮影で、太陽黄経差は約34.11°、撮影高度は約22.19°、月齢は2.42。新月瞬時は10日7:59ごろで、ちょうど三日目、まさに三日月ですね。リム側にはフンボルト海やガウス、縁の海、フンボルト・クレーターが見え、欠け際には南東火口列が立ち並んでいました。ラングレヌスのケモ耳を作る中央丘の双峰が点状に輝いていましたが、西へ伸びる影はケモ耳には見えませんでした。もう少し月齢が進むと見えるのかな?フンボルトの中央がテーブル状に見えたのですが錯覚でしょうか?

撮影高度が超低空では無かったものの、かなり揺れており、あちこちスタックエラーを起こしています。それでも久々に細身の美しい月をカメラに収めることができて大満足。


話を「三日月」に戻します。月齢は新月からの日数を表すため、一般に三日月は月齢2前後の数値(月齢はゼロスタート、数え日数は1スタート)になることは容易に想像できるでしょう。ただ、新月瞬時は0:00でも23:59でも起こり得ますから、三日月の月齢だって1日幅くらいの分布になっているはず。また日没後は宵にしか見えないことを鑑みると、四捨五入なら月齢3が三日月というケースだってあり得るでしょう。(月齢の小数部分を気にするのは天文やってる方々くらいで少数派。大部分の人々は整数扱いですからね。)

実際はどれくらいの分布なのか気になったので、2000年から2100年までの101年間、全1249回の三日月について調べてみました。日本経緯度原点における日没時時点の三日月月齢で最小は2044年11月21日の1.689。また最大は2012年6月22日の2.790。24時間を越える分布なのに驚きました。単純平均は2.2478、中央値は2.2609でした。

宵空の三日月の月齢
月齢最小ケースの直近新月は2044年11月19日23:57:53JST。つまり日付が変わる直前で新月になるパターンです。対して最大ケースは2012年6月20日00:02:07JSTですから、日付が変わった直後に新月になりました。右図をご覧になればどうしてこうなるか分かっていただけるでしょう。

更に月別に調べると、夏至近くで三日月月齢が大きくなる傾向、冬至近くで小さくなる傾向です。これはこの集計が日没時刻に依存していることにも由来すると考えられ、時刻が遅くなるほど月齢に加算される影響と思われます。(左下図/月齢変動幅は0.1程度=2.5時間程度=計算指定場所での夏と冬の日没時刻差。)左下図ではひと月の中にも何らかのパターンがあるようです。興味が尽きません。

小数以下を四捨五入した場合、月齢2になるのは935回、月齢3になるのは314回、もちろん月齢1や4での三日月はありません。おおよそ4回に1回は「月齢3で三日月」ですね。右上図で「αが0.5日以上」という条件は「日没の半日前である日出までに月齢が2.0を迎える」ことと同義。

三日月の月齢分布(月別)
昼夜の比率変動はあるけれど、平均的に考えるなら6時ごろ(=1/4日)までに起こる確率ですから、4回に1回というのは筋が通っています。

まぁ旧暦はもう使われていませんから、西空にこれくらい細い月が見えたら三日前が新月日、みたいに形から考えたほうが個人的には性に合っています。もっと大雑把に、上弦前の月はみんな三日月でもいいくらいです。「三日目の月」という数字上の言葉より、「お腹の凹んだ月のすがた」「バナナのような月の形」の総称が「みかづき」なのだという決め方もありだと思います。そう言えば英語表現のcrescent(moon)には数字が入ってませんね。クレセントはクロワッサン(パン)やクレッシェンド(音楽用語)と同じ語源です。crescentをもっと遡るとラテン語の「creare(創り出す/成長する)」までたどり着き、ここから英語のcreateやincreaseに派生しています。三日月は「これから段々大きくなる」シンボルなんですね。

なお月齢と月の“細さ”は必ずしも比例しません。同じ月齢でも太かったり細かったりします。細さ具合を推し量るなら「月太陽黄経差」をみると良いでしょう。月太陽黄経差が0°:新月、90°:上弦、180°:満月、270°:下弦に対応します。今回の集計では、三日月における月太陽黄経差の最小は17.9051°(2035年12月31日)、最大は37.5993°(2050年2月22日)、単純平均は27.6456°、中央値は27.2882°でした。

ここ1年ほどの間に撮影した“アラウンド三日月”は、2023年2月22日記事同4月23日記事同6月21日記事2024年1月15日記事などがありますのでご参考まで。

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