昼時間が伸びつつある冬至2022/12/22

冬至の日付変化
地球は本日22日7時前(日本時間)に二十四節気の「冬至」を迎えました。他の二十四節気同様に日付が変動するため、毎年2月付けで国立天文台から翌年の祝日や日曜と共に二十四節気日付が発表されています。

いつものように日付変化をグラフ化してみました(左図)。時刻は日付の小数として含めてあります。もちろんこれは国立天文台が発表してない未来のものなどを含んでおり、現代暦を延長して自前計算した結果ですから正式なものではありませんので誤解のなきように。

1956年から1991年まではずっと12月22日が続きましたが、その後は次第に21日も含まれるようになってきました。2096年から4年間は21日のみが続き、その後再び22日のみがしばらく続きます。今年はその過渡期です。また今年より前でこの図内でいちばん早かったのは1896年の21日16:29:31で、次回これより早くなるのは2036年の21日16:12:38となるようです。この記録より早いのは1788年12月21日11:15:53まで遡らないと出てきません。

太陽の黄緯が最南になることで南中高度も一番低くなるため、冬至は「昼時間が一年で最も短い日」となります。これ以外の副産物(?)として、毎年この時期近くの丸い月を仰ぐと、南中高度が年間で最も高くなる特徴があります(→2021年12月21日記事参照)。12月から2月にかけて満月期は太陽と反対に位置するわけですから、真夏の太陽並に高いところから街を照らします。きちんと計算していませんが、「夜間に月が見える時間」も年間最長になるでしょう。本州でも首が痛くなるほど高いので、沖縄以南では場合によって天頂より北側になってしまうこともありますよ。プラネタリウムソフトをお持ちの方は、例えば来月の満月(2023年1月7日)に那覇や石垣の設定で月がどこに見えるかやってみてください。国内で天頂越えって驚きですよね。

冬至の昼時間
ところで昨日付けのForbesに冬至の昼時間についてのコラムが載っていました(日本語版英語版)。夏至や冬至の昼時間が極値であることは誰もが知るところですが、その時間そのものは毎年変わっている、というのです。主たる原因は「コマのように回る地球自転は不安定であり、自転軸の傾斜角が年々変わってしまうため」です。

このネタは暦や天体運行に詳しい方にとって古くからの“あるあるネタ”ですが、意外に感じられる方も少なくないでしょう。冬至に関しては前出コラムに書いてある通り「昼時間が少しずつ伸びている」のです。コラム内で引用されているTimeanddate.comの解説内にニューヨーク市での昼時間変化グラフが載っていますが、日本ではどうなのか、日本経緯度原点を例に800年ほど計算してみました(右図)。

日出から日没までの「昼時間」は場所…特に緯度による影響を大きく受けます。日本経緯度原点の場合、今年は9時間44分34.73秒でした。(※大気差の変動を受けないよう、固定値として計算。)図のとおり、年々右肩上がりに増えて行きます。800年で40秒以上ですから、決して無視できない値です。もちろんこれが地球の温暖化や寒冷化に直ちに影響するなんて言えませんが。

小さな波は月による影響です。800年間で43回の山がありますので、周期は約18.6年。どこかで聞いたような数値ではないでしょうか。そういえば今年ニアミスしている朔旦冬至も19年前後の周期でしたね。太陽と月の両方が関わる出来事では、サロスにしろメトンにしろ18とか19といった数値がまとわりつきます。

今日の関東は朝からまとまった雨で、いっそう昼時間が少ない印象を強めています。でも午後には晴れる予報ですから、次なる周期に向かう日没を拝めることに期待しましょう。

夏至の昼時間
【追記:夜は無くなってしまうの?】

天文ファンとしては「冬至でさえ昼が長くなってしまうなら、年間で星を見る時間がどんどん減ってしまうのか?」と不安になりますよね。上記の話は冬至だけ昼が減るということではなく、冬至近くの全ての日に当てはまりますから、例え一日1秒でも、前後一ヶ月トータルでは数十秒も減ってしまうことになるでしょう。

ですが、年間でそうなる訳ではありません。左図は上記同条件で計算した夏至の昼時間。こちらは年々減っているのです。年間ではバランスがとれています。季節を分ける原因になる地軸の傾き(=黄道傾斜角)は現在減少しており、若干ながらも季節ごとの違いが減る傾向にあります。これが「夏の昼時間が減って、冬は増える」という変化をもたらしているのです。年間全ての昼が増える訳ではありません。よかったよかった。


参考:
日出没・暦関連の記事(ブログ内)