水星・すばる・太陽が並ぶ2022/05/22

20220521-0418UT_SOHO
少し前から太陽観測衛星SOHOのLASCO-C3カメラに捉えられていたプレアデス星団(すばる)ですが、昨日5月21日の画像でほぼ縦並びになりました(左画像/SOHOサイトから引用)。地心位置で計算してみたら、太陽とプレアデス星団(代表点)の黄経差が一致したのは15:07JSTごろ。左画像はこの時刻に限りなく近い状態ですね。

遠方の恒星は短期間で位置を変えることはありませんから、すばると太陽が並ぶのは毎年同じ頃になります。太陽の視位置が微妙に変化したり、日数カウントの要であるわたしたちのカレンダーに閏日挿入など変化の要素があるけれど、1900-2100年の計算で「すばると太陽が並ぶ日」は全て5月20日から22日に収まりました。(※数百年オーダーで考えると年々遅れていきます。)

ところで5月1日記事に書いたように、先月末から今月頭にかけてプレアデス星団と水星が夕空を飾っていましたね。水星はその後太陽方向へ移動し、本日22日4:18に内合を迎えました。(※これは黄経内合です。天文年鑑など8:30頃の時刻表記になっている資料は赤経内合です。)つまり水星はすばるとともに太陽近くへ移動してきたのですね。ところが4月14日記事の通り、水星の光度は内合のころ限りなく暗くなり、特に今回のように太陽との離角が小さいケースでは“ほぼ影”になってしまうため、左上画像では確認することができません。

202205_SOHO写野と水星
そこで少し遡ってみると、5月20日ごろまでのSOHO画像なら見えていることが分かりました。右は5月19日10:30UTから20日1:42UTにかけて撮影された6枚の画像を比較明合成したもの。ほとんどの恒星が黄経方向に沿って東(左)から西(右)へ移動する中、水星だけは斜めに移動していることが分かるでしょう。外合なら水星でも見えますが、内合はこんなに暗くなってしまうのです。

計算してみると「見かけ上で太陽とすばるが接近する期間に、水星が内合または外合を迎える」チャンスはとても少ないです。内合の場合はすばる・水星ともに東から西へ進むので一緒の時間が長いけれど、外合の水星は西から東に動くため、一瞬すれ違っただけで終わってしまいます。下のリストは1900年から2100年までの間に水星・すばる・太陽の黄経差がプラスマイナス1°に収まる期間(※地心計算、時刻はJST)。うーむ、この光景は貴重だったんですねぇ。

  • 1927-05-20 05:46:36から、1927-05-21 08:10:25まで
  • 1930-05-20 00:27:48から、1930-05-21 05:43:24まで
  • 1940-05-21 10:09:05から、1940-05-21 15:37:24まで
  • 1973-05-20 00:48:47から、1973-05-21 12:54:25まで
  • 1976-05-20 05:38:19から、1976-05-21 12:49:59まで
  • 2019-05-21 02:32:22から、2019-05-22 17:36:49まで
  • 2022-05-21 12:41:03から、2022-05-22 16:03:42まで
  • 2065-05-21 07:15:05から、2065-05-22 16:43:21まで
  • 2068-05-21 19:39:44から、2068-05-22 11:05:38まで
  • 2098-05-21 01:52:25から、2098-05-21 10:02:26まで


ところで、SOHOから見た星空は地球から見たものと少し違います。先だって打ち上げられ稼働試験中のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は太陽地球直線上にあるL2(ラグランジュポイント2)に配置されましたが、SOHOは地球を挟んで反対側のL1という位置。わたしたちが太陽を見るとき、その視野のどこかにSOHOもいるんです。

JPL-HORIZONSの算出データをもとに、太陽視位置を原点としたSOHO視位置を描いてみました。赤経差・赤緯差を描いたら下A図のようになり何だこれはと思ったのですが、思い直して黄経差・黄緯差で描いたら下B図のようにスッキリしました。L1位置を中心に黄道面を緩やかに横切るような楕円軌道を、1年の間に約2周しているようです。ラグランジュポイントが力学的に安定しているとは言え、JWST同様やはり細かな微調整が必要のようで、2021年全期間を1時間おきにプロットした下図を見ただけでも安定してないなぁと感じました。太陽から意外に離れるので、それこそ水星のように最大離角時に望遠鏡で見えないだろうかと思ってみたり…。

  • SOHOの地心視位置(赤道座標)

    A.SOHOの地心視位置(赤道座標)
  • SOHOの地心視位置(黄道座標)

    B.SOHOの地心視位置(黄道座標)


今日の太陽2022/05/22

20220522太陽
昨日は一日雨。夜から今日正午過ぎにかけても曇り時々小雨が続きました。午後は幾分空が明るくなったものの度々近隣を雨雲が通るため、太陽観測は無理だろうと思い込んでいました。ところが夕餉の準備を始めつつ空を見たら青空が!いつの間に晴れたんだろう…。だいぶ低空ではありましたが太陽観察しました。

20220522太陽リム
左は16:20前の太陽。しっかり黒点が見えてます。左上のプラージュが目立つ活動領域13019の更に左、リム近くにもプラージュがあり、ここに小黒点が出てきました。また赤道をはさんで南半球側にも小黒点ができています。

けっして大きくないものの、たくさんのプロミネンス。見ごたえあるものばかりで何だか楽しい。