2024年の台風25号が発生、四重台風です ― 2024/11/12
気象庁によると、10日9時から台風になるかも知れないと告知されていた熱帯低気圧が本日3時に台風25号「ウサギ/USAGI」になりました。直前の台風24号発生から2日と12時間後の発生、22-24号はまだ活動中のため、なんとクアドラプル台風になりました。低緯度が台風街道と化しています。
左は25号発生時である本日3:00の気象衛星ひまわり画像(画像元:RAMMB/画像処理・地図等は筆者)。夜のため赤外バンドによる白黒画像です。赤点線円は各台風中心の直径1000km円。22・23号はほぼ接していますね。
今朝現在の進路予報によれば各台風は西進しており、24・25号については4、5日後に先島諸島側へ北上する見込みのようです。ここ数日間は南西諸島に甚大な降雨災害が発生していますから、復旧の暇を与えないまま台風が来そうです。被害が大きくならないことを願います。
25号の「ウサギ」はオリオン座の足元でうずくまっているうさぎ座のこと(右図/ステラナビゲーターによる)。日本から台風委員会へ台風名候補に提出されている星座名のひとつです。前回の星座名台風は今年11号の「ヤギ」、また前回の「ウサギ」は2018年の台風29号でした。気象庁ベストトラック統計が始まって以降、四重台風は下表の10件が見つかりました。 1966年24号は二件の四重台風のどちらにも入っていて驚きですね。
【四つ同時発生した台風】
発生開始日時JST | 発生終了日時JST | 台風番号1 | 台風番号2 | 台風番号3 | 台風番号4 |
---|---|---|---|---|---|
1955/7/22 9:00 | 1955/7/22 21:00 | 1955年9号(接近) | 1955年11号(接近) | 1955年10号(接近) | 1955年12号(接近) |
1955/8/11 3:00 | 1955/8/12 9:00 | 1955年14号(接近) | 1955年16号(接近) | 1955年17号 | 1955年18号 |
1960/8/20 15:00 | 1960/8/25 9:00 | 1960年14号(接近) | 1960年16号(上陸) | 1960年17号(接近) | 1960年18号(接近) |
1966/9/17 3:00 | 1966/9/18 3:00 | 1966年21号(接近) | 1966年22号 | 1966年23号 | 1966年24号(上陸) |
1966/9/22 21:00 | 1966/9/24 9:00 | 1966年24号(上陸) | 1966年25号(接近) | 1966年26号(上陸) | 1966年27号(接近) |
1972/7/9 3:00 | 1972/7/14 15:00 | 1972年6号(上陸) | 1972年7号(接近) | 1972年8号 | 1972年9号(上陸) |
1985/8/31 21:00 | 1985/9/1 9:00 | 1985年12号(接近) | 1985年13号(上陸) | 1985年14号(上陸) | 1985年15号 |
1994/8/28 21:00 | 1994/8/29 15:00 | 1994年17号(接近) | 1994年18号 | 1994年19号 | 1994年20号 |
1994/10/23 21:00 | 1994/10/25 15:00 | 1994年30号 | 1994年31号(接近) | 1994年32号 | 1994年33号 |
2017/7/23 9:00 | 2017/7/23 15:00 | 2017年5号(上陸) | 2017年6号 | 2017年7号 | 2017年8号 |
- 気象庁ベストトラックを使った自作プログラムでの統計です。
月と土星はどちらが明るい? ― 2024/11/12
昨夜から今朝にかけて時々雲が湧いたものの、概ね良く晴れました。やっと宵空の月が高度を増して隣家の屋根を越えるようになったので、久しぶりに望遠鏡を向けました。ちょうど「月世界への招待」サイトの東田さんが「虹の入江のゴールデンハンドル」を予報されていましたから、これも見たかったのです。
自己計算だと11日19時ごろ入江基準点の太陽高度が0°を迎えます。虹の入江全体は大きいため、このときまだ入江西側には光が当たっておらず、せいぜいヘラクリデス岬が光っている程度。ゴールデンハンドル全体が大きな弧を描くためには太陽高度が1°程度まで上がらなくてはなりません。
左画像は20時ごろの撮影で、まだ円弧が断片的です。シーイングは酷く乱れていましたから細部がシャキッとしません。繋がるまで見ていたかったのですが、月高度が下がり、風も出てきたし、なにより夜半前なので近くの国道からの車両振動もたっぷり伝わってきて、やむなく終了にしました。
宵の頃には紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)、月面観察の前には近の土星も撮影しました(下A・B画像)。彗星はあまり変わっていません。土星の環は本日11月12日に極大を迎え、春以降では今年一番傾くことになります。20分あまり撮影して少しもじっとしない像でしたが、記念になりました。明日からは来年春の「環の消失」に向けて急速に見えなくなります。今のうちに記録しておきましょう。
もうひとつ。ちょうど一昨日から昨日にかけて月が土星と接近しました。そして一巡り後の来月12月8日には月が土星に隠される掩蔽現象(俗に言う「土星食」)が起こります。7月25日にも起きましたが夜が明けていました。今回は宵空で、しかも十分な高度があります。夜に好条件で見える土星掩蔽は2002年3月以来かな?期待が膨らみます。
ここで本記事タイトルにもなってるクエスチョン。「月と土星はどちらがどの程度明るいでしょうか?」
土星に限らず、月は色々な惑星を掩蔽します。ネット検索すると「月はマイナス12.7等」などと出てくるから「惑星より圧倒的に明るい」と誤解されがち。これはあくまで満月時、しかも大きさを考えない場合の数値。実際に望遠鏡で月による惑星や明るい恒星の掩蔽を見たことがある方は、それほど大きな等級差を感じないのでは?2021年11月8日に月による金星掩蔽が起こりました。このとき月はマイナス8.3等、金星はマイナス4.6等だったのに、望遠鏡で見ると圧倒的に金星のほうが明るかったです(下C画像)。どうして逆転してしまったのか?前出のクエスチョンはここが出題意図なのでした。
恒星の等級と違い、地球から見る月や惑星、彗星などは大きさを持って見えますね。「紫金山・アトラス彗星は0等級で見えた」と言っても、こと座のベガのように見えた訳ではありません。面積に応じて拡散されるのです。ですから点光源と面光源の明るさを面積度外視で比較することは御法度なのです。
ではどうするか。月や惑星なら日時に応じて面積が決められますから「表面輝度」を算出することができます。つまり月の惑星掩蔽では表面輝度同士で比較すれば、そこそこの精度で対等な比較ができると言えましょう。(※表面輝度も完全ではありません。例えば月や火星などは反射率が低い地形を広範囲に含むため、満ち欠けや遠近による単純な輝面積変化だけでは表現できない輝度変化もあります。)下D図は月惑星の等級と表面輝度を2024年から2029年まで計算したグラフ(JPL-HORIZONSによる)。表面輝度では、月よりも金星や水星は明るく、火星や木星は同等、土星はやや暗いという結果でした。この図を頭にたたき込み、来月の土星掩蔽に挑んでください。
自己計算だと11日19時ごろ入江基準点の太陽高度が0°を迎えます。虹の入江全体は大きいため、このときまだ入江西側には光が当たっておらず、せいぜいヘラクリデス岬が光っている程度。ゴールデンハンドル全体が大きな弧を描くためには太陽高度が1°程度まで上がらなくてはなりません。
左画像は20時ごろの撮影で、まだ円弧が断片的です。シーイングは酷く乱れていましたから細部がシャキッとしません。繋がるまで見ていたかったのですが、月高度が下がり、風も出てきたし、なにより夜半前なので近くの国道からの車両振動もたっぷり伝わってきて、やむなく終了にしました。
宵の頃には紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)、月面観察の前には近の土星も撮影しました(下A・B画像)。彗星はあまり変わっていません。土星の環は本日11月12日に極大を迎え、春以降では今年一番傾くことになります。20分あまり撮影して少しもじっとしない像でしたが、記念になりました。明日からは来年春の「環の消失」に向けて急速に見えなくなります。今のうちに記録しておきましょう。
もうひとつ。ちょうど一昨日から昨日にかけて月が土星と接近しました。そして一巡り後の来月12月8日には月が土星に隠される掩蔽現象(俗に言う「土星食」)が起こります。7月25日にも起きましたが夜が明けていました。今回は宵空で、しかも十分な高度があります。夜に好条件で見える土星掩蔽は2002年3月以来かな?期待が膨らみます。
ここで本記事タイトルにもなってるクエスチョン。「月と土星はどちらがどの程度明るいでしょうか?」
土星に限らず、月は色々な惑星を掩蔽します。ネット検索すると「月はマイナス12.7等」などと出てくるから「惑星より圧倒的に明るい」と誤解されがち。これはあくまで満月時、しかも大きさを考えない場合の数値。実際に望遠鏡で月による惑星や明るい恒星の掩蔽を見たことがある方は、それほど大きな等級差を感じないのでは?2021年11月8日に月による金星掩蔽が起こりました。このとき月はマイナス8.3等、金星はマイナス4.6等だったのに、望遠鏡で見ると圧倒的に金星のほうが明るかったです(下C画像)。どうして逆転してしまったのか?前出のクエスチョンはここが出題意図なのでした。
恒星の等級と違い、地球から見る月や惑星、彗星などは大きさを持って見えますね。「紫金山・アトラス彗星は0等級で見えた」と言っても、こと座のベガのように見えた訳ではありません。面積に応じて拡散されるのです。ですから点光源と面光源の明るさを面積度外視で比較することは御法度なのです。
ではどうするか。月や惑星なら日時に応じて面積が決められますから「表面輝度」を算出することができます。つまり月の惑星掩蔽では表面輝度同士で比較すれば、そこそこの精度で対等な比較ができると言えましょう。(※表面輝度も完全ではありません。例えば月や火星などは反射率が低い地形を広範囲に含むため、満ち欠けや遠近による単純な輝面積変化だけでは表現できない輝度変化もあります。)下D図は月惑星の等級と表面輝度を2024年から2029年まで計算したグラフ(JPL-HORIZONSによる)。表面輝度では、月よりも金星や水星は明るく、火星や木星は同等、土星はやや暗いという結果でした。この図を頭にたたき込み、来月の土星掩蔽に挑んでください。